ホンダ フィットハイブリッド(2017年MC)実燃費レポート | 登場から5年! 今なおコンパクトカーの代表車種で居続けるモデルの実力は!?

ホンダ フィット

日本のコンパクトカーのベンチマーク、現時点でのポテンシャルは?

今回の燃費テストでは、2013年の現行モデル登場以来堅調な販売実績をし続けているホンダ フィットの実燃費を計測した。

ホンダ フィット 概要

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フィットは「センタータンクレイアウト」という革新的なパッケージングを核とした、広さをはじめとする多くの要素を高次元でバランスさせたコンパクトカーとして2001年に登場。

広さに加えて、いい意味で万人向けのスタイルや価格の安さも後押ししたことから、初代モデルは大成功を納めた。以後、フィットは派生車も含めるとアコード、シビック、CR-Vに続くホンダの基幹車種の1台となっている。

初代モデルのコンセプトが秀逸だったこともあり、2007年登場の2代目モデル、2013年登場の現行型3代目モデルは、ともにキープコンセプトで開発された。

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現行フィットに搭載されるパワートレインは、CVTもしくは5速MTと組み合わされる1.3リッターガソリンエンジン、CVTもしくは6速MTと組み合わされる1.5リッターガソリンエンジン、DCT(デュアルクラッチトランスミッション)を介する1モーターハイブリッドシステムの3つである。

それぞれのスペックは、1.3リッターガソリンエンジンは最高出力100馬力・最大トルク12.1kgm、1.5リッターガソリンエンジンは最高出力132馬力・最大トルク15.8kgm、1モーターハイブリッドシステムはエンジンとモーターを合わせたフルパワーの状態で137馬力・17.3kgmとなっている。

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なお今回テストした車両は、2017年6月に実施されたマイナーチェンジ後のモデル。マイナーチェンジでは、自動ブレーキの性能向上、前後バンパーなどのエクステリアの変更、エンジンの細部の改良、静粛性の向上などの改良が施された。特に、自動ブレーキを始めとする予防安全装置は、劇的に性能が向上している。

マイナーチェンジ前の現行フィットの自律自動ブレーキは30km/h以下でしか機能しないレーザーセンサーを使うタイプであったが、マイナーチェンジ後のものはミリ波レーダーと単眼カメラからの情報を基盤とするホンダセンシングに昇格。

歩行者にも対応する緊急ブレーキ機能、コンビニに正面から突っ込む事故などを防ぐ誤発進抑制機能、30km/h以上の速度域に対応する先行車追従型のアダプティブクルーズコントロール、車線の中央を維持しようとするLKAS(車線維持支援システム)、見落としがちな一時停止や進入禁止といった標識をメーター内に表示する標識認識機能)など多彩な機能が搭載されている。

搭載されている自律自動ブレーキの性能は、JNCAP(自動車アセスメント)のテストで停止車両のような物体に対しては50km/h、対歩行者では大人の単純な飛び出しに55km/hからの停止が確認されている。

ホンダ フィット(2017年マイナーチェンジモデル)燃費レポート 目次

起用グレード

1.3リッターと1.5リッターのガソリン、1.5リッターハイブリッドという3つのパワートレインを持つフィット。今回は、現行フィットの販売において半分近くを占める1.5リッターハイブリッドを選択した。グレードは、スポーティな「ハイブリッドS ホンダセンシング(車両本体価格220万5360円、JC08モード燃費31.8km/L)」を用いた。

燃費テスト概要

テストは2018年12月12日(水)の午前7時頃開始し、午後2時半頃帰京するというスケジュールで実施。天候は雨から曇り、晴れへと回復し、最高気温は10度と、冬場らしい気候であった。交通状況は平均的な流れで、乗車人数はドライバー1人(体重約70kg)で行った。

今回計測したフィットハイブリッドの実燃費結果は、以下の通りだ。

全体

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結果としては初期モデルに対し10%ほど悪い結果となった。このような結果となった理由の半分は、天候や交通の流れといったコンディションの違いがあるだろう。

もう半分は、試乗したタイプの違いだ。初期モデルのグレードがエコタイヤを履く標準タイプだったのに対し、今回計測したマイナーチェンジ後のモデルは、走行性能重視の16インチタイヤが履かれているグレードで、車重も若干重かったのだ。そのため、標準モデル同士であれば、改良により僅かながらカタログに載る燃費が向上していることもあり、その分実燃費も向上しているか初期モデルと同等と考えていただきたい。

ここからは市街地編、郊外路編、高速道路編、それぞれの章で燃費や走りの質などについて詳細な評価を行っている。購入を検討している方への情報になれば幸いだ。

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ホンダ フィットハイブリッド(2017年マイナーチェンジモデル) 実燃費レポート|市街地・街乗り編

フィットハイブリッド(2017年マイナーチェンジモデル)市街地・街乗りでの実燃費 22.2km/L

マイナーチェンジ後のフィットハイブリッドの市街地での燃費は22.2km/Lと、表に挙げた過去データのあるライバル車に対し期待外れに終わった。

しかし、原因は冒頭に書いたコンディションとタイヤや車重といったグレードによるものである可能性が高い。初期モデルの燃費をフィットハイブリッド本来の燃費と考えれば、依然としてフィットハイブリッドの燃費はコンパクトカートップクラスと断言できる。

搭載されるハイブリッドシステム、その特徴とは

市街地編ではフィットハイブリッドの1モーターハイブリッドの動き方などを中心にお伝えする。

7速DCTを介するホンダの1モーターハイブリッドは、バッテリー残量が残っていれば10km/hあたりまでEVで発進し、その後は「エンジン走行」「エンジンとモーターで走行」「EV走行」をクルマがマネージメントするという制御を行う。制御の動きは、メーター内のディスプレイを見ていないと切り替わりが分からないぐらいスムース。EV制御の速度域は幅広く、80km/hでEV走行することもあるようだ。停止時は回生制動でバッテリーに電力が戻される。

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ただし、度重なったホンダの1モーターハイブリッドのリコールの影響なのか、初期モデルに比べればDCTの変速、特にシフトアップの歯切れが悪くなった感がある。また、50km/hあたりでEV走行中に追い越し加速などのためアクセルを全開に踏んだ際、1テンポのタイムラグがあるのは気になるところ。特に後者は人によって感じ方に個人差がありそうな要素なので、ディーラーでの試乗の際に確認して欲しい。

一方、初期モデルに対して改善された点としては、極低速域での車の動き方がある。初期モデルではクルマをゆっくりと動かしたい駐車の際などに気になったギクシャク感というかスムースさに欠けたところが、ほとんど気にならないレベルまで改良された。ロック板の乗り越えが含まれるコインパーキングでは、この改善点を特に目立って感じることが出来るので、ここは評価したい。

ちなみに、本格的なハイブリッドカーということもあり、テストした日の気候であれば、停止中にエアコンなどの影響でエンジンが掛かったのは片手で数えられるくらいであった。

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ホンダ フィットハイブリッド(2017年マイナーチェンジモデル) 実燃費レポート|郊外路編

フィットハイブリッド(2017年マイナーチェンジモデル)郊外路での実燃費 22.8km/L

マイナーチェンジ後のフィットハイブリッドの郊外路での燃費は22.8km/Lだった。初期モデルやライバル車と比較した時の燃費差は、市街地と同じような傾向となっている。原因は市街地編で書いたのと同様であろう。

燃費に関して気になった点を強いて挙げるとするならば、マイナーチェンジ後のフィットハイブリッドは7速DCTの6速におおよそ60km/hでシフトアップされるのだが(マイナーチェンジ前がどうだったかは、5年も前のことのため記憶にない)、6速に入るタイミングがもう少し早くなれば、巡航中のエンジン回転が抑えられ、燃費にも好影響を与えるように感じた。

フィットのハンドリングは「レベルの高い普通」

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郊外路編ではマイナーチェンジ後のフィットハイブリッドのハンドリングと乗り心地を中心にお伝えする。

まずハンドリングはいい方でも悪い方でも特に印象に残る部分はない。レベルの高い普通というか中庸といったところで、大量販売される標準的なコンパクトカーとして相応しいものといえる。

乗り心地は全体的にはまずまずのレベルではある。しかし、スポーティグレードのハイブリッドSは16インチタイヤを履くせいもあるのか、路面が荒れたところや凹凸が大きいところだと、少し硬さのあるブルッとした感じが残ることもあるのは少し残念だった。ハイブリッドSには見た目やパドルシフト、高速道路編で書く静粛性の向上といったメリットもあるが、乗り心地のことを考えると、強いこだわりがないのであれば価格も含め15インチタイヤを履くF、Lを基本に考えるべきだろう。

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ホンダ フィットハイブリッド(2017年マイナーチェンジモデル) 実燃費レポート|高速道路編

フィットハイブリッド(2017年マイナーチェンジモデル)郊外路での実燃費 24.9km/L

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マイナーチェンジ後のフィットハイブリッドの高速道路での燃費は24.9km/Lと、ライバル車や初期モデルとの差異はやや縮まったものの、概ね市街地、郊外路と同じ傾向であった。原因は市街地編、郊外路編で書いたのと同様であろう。

高速道路編ではマイナーチェンジ後のフィットハイブリッドの動力性能と運転支援システムの印象を中心にお伝えする。

まずアクセルを深く踏んだ際の絶対的な動力性能についてだが、市街地編で書いたようにEV走行中からの加速は小さくないタイムラグがある。しかし、エンジンが回っている状態なら爽快な加速を楽しめる。ハイブリッドのシステム出力が137馬力もあるところに、理論的には変速の速いDCTが組み合わされているからだろう。

なおトップギアの7速での100km/h走行時のエンジン回転数は、タコメーターの目盛りが細かく見にくい状態ではあったが、おおよそ2000回転弱であった。

また初期モデルでは全回転域で雑な回り方やうるささを感じたエンジンは、澄んだ方向に改善されている。また、ハイブリッドSはフロアアンダーカバーの材質変更や遮音ガラスが採用されていることからか、ハイブリッドLやハイブリッドFよりも静かなような気はした。

先進運転支援機能「ホンダセンシング」の実力は?

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運転支援機能「ホンダセンシング」に関してもお伝えしておこう。

搭載されているアダプティブクルーズコントロールは、30km/h以上のみでの作動のため、基本は自動車専用道路や高速道路用となる。また、先行車がいなくなり単独走行になった際に設定速度への復帰が遅い時があり、加減速は及第点といったところだ。

LKAS(車線維持システム)は車線の中央をキープしようと積極的に作動し、首都高のコーナーにも対応することもあるなど、有効に働いていた。

運転支援システムが付くコンパクトカーも増えたが、それでもホンダセンシングはフィットのライバル車に対するアドバンテージの1つではある。

ちなみにテスト前に他車のエコモードに相当するECONモード、Sモードも試してみた。

ECONモードはアクセル操作に対するレスポンスがマイルドに、エアコンが控えめになるといったお決まりのものだ。Sモードはアクセル操作に対するレスポンスがシャープ、シフトアップが高回転になる、モーターアシストが強くなるといった変化がある。普段は、運転しやすいというメリットもあるECONモードをオンにしておくことを勧めたい。

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ホンダ フィットハイブリッド(2017年マイナーチェンジモデル) 実燃費レポート|総合実燃費編

フィットハイブリッド(2017年マイナーチェンジモデル)総合実燃費 23.1km/L

マイナーチェンジ後のフィットハイブリッドの燃費は、起用したSグレードではやや期待はずれであった。しかし、標準的なグレードであれば初期モデルと同等の燃費は期待できると考えると、相変わらずライバルを凌ぐ広さも加味すれば、依然としてコンパクトカートップレベルではある。

しかしフィットは表のように1.3リッターガソリンの燃費も十二分に良好である。エコカー減税の差を加味しても差額が30万円ほどある点や、度重なるリコールによるホンダの1モーターハイブリッドのイメージを考慮すると、ハイブリッドとガソリンで迷っているなら1.3リッターガソリンの方が何かと無難に感じる。もちろん、ハイブリッドが欲しいならハイブリッドを選べばよい。

2019年に登場!? 次期フィットにも期待

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ちなみに、最近復活したホンダ インサイトが1.5リッターエンジン2モーターハイブリッドなのを見ると、ホンダも1モーターハイブリッドに見切りをつけ、2019年登場と言われている次期フィットでは2モーターハイブリッドに移行するのかもしれない。

現行フィット自体は登場から5年が経っても広さを核に、特にガソリン車は依然として「レベルの高いコンパクトカーのスタンダード」と断言できる存在だ。しかし、さすがに同じコンセプトが2019年で18年も続くと、飽きを感じ始めてきたのも事実ではある。軽自動車クラスでは、よく出来過ぎた弟分のN-BOXも人気だ。

それだけに次期フィットは、難しいフルモデルチェンジになると思われる。次期フィットに自動車専門誌のスクープで噂されるような3気筒ターボや最低地上高を上げたクロスオーバーモデルの追加があるのか定かではないが、フルモデルチェンジでどんなクルマになるのか非常に興味深いところだ。

[筆者:永田 恵一 / 撮影:茂呂 幸正・永田 恵一]

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