デイトナ24時間:予選6番手も想定内の可夢偉「最後の2時間に勝負できるポジションに」

 フェルナンド・アロンソ、小林可夢偉を擁してデイトナ24時間レースに挑むウェイン・テイラー・レーシング(WTR)の10号車キャデラックDPi-V.R。24日に行われた予選で、総合6番手を獲得した。

 朝方に暴雨風に見舞われたフロリダ州デイトナ・ビーチだったが、プラクティス1回目は予定通りに午前10時20分にハーフウエットでスタートし、セッション終盤はドライコンディションになった。

 しかし、今週末はもう雨が降らない可能性が高いため、多くのチームはここで力を入れた走りをしなかった。一昨年のデイトナ24時間ウイナーで18年の最終戦プチ・ル・マンで優勝しているWTRもそうしたチームのひとつで、僅かに6ラップをこなしたのみ。セッション順位はGTル・マン(GTLM)やGTデイトナ(GTD)クラスのマシン群より後方の総合29番手、クラス7番手だった。

 午後に入ってプラクティス2回目が行われる際には、路面は完全ドライになっていた。ここから全エントラントが本領を発揮し出す。

 トップタイムとなる1分34秒672はジョナサン・ボマリート搭乗のマツダRT24-Pの55号車が記録。1月初旬に開催された合同テストでマツダ勢は1分33秒台のコースレコードを上回るラップを2台揃って叩き出していた。

 スポーツカー最強チームであるドイツのヨースト・レーシングとのジョイントは昨シーズン終盤に実を結び出していた。オリバー・ジャービスは77号車で1分33秒398をマークしてトップ。55号車のハリー・ティンクネルは1分33秒423で2番手につけ、マツダは1月上旬の合同テストでトップ2を占拠した。

 この成績により彼らはガレージとピットボックスの選択権を獲得。1、2番ガレージと、そこにもっとも近いピットで今年の24時間レースを戦うことになった。

 そして今日の予選、路面コンディションは朝の豪雨によって決してタイヤラバーの乗りが悪く、グリップは決して高くなかったが、ジャービスが1993年のPJ・ジョーンズ(トヨタ・イーグルMk.III)が打ち立てた1分33秒875を打ち破る1分33秒685を記録した。

 フェルナンド・アロンソ、小林可夢偉を雇い入れているWTRは、昨年はランガー・バン・デル・ザンデがポールポジションを獲得をしたが、今年はジョーダン・テイラーのアタックで6番手に食い込むのがやっとだった。

「現実的に考えれば、今日の僕らは予選5番手が望めた最良のリザルトだった。そして、僕らは同じキャディラックDPi-V.Rを走らせるアクション・エクスプレス・レーシングの31号車に0.046秒及ばずの6番手という結果を手にした。それでも僕らは落胆などしてはいない」とテイラー。

「自分たちは予選をレースに向けたプラクティスとして捉えていたからだ。プラクティスから予選に向けてマシンのセッティングを大きく変えた。走行時間が非常に少ないので、そのセッティング変更がどんな効果をもたらすかを見極めることにした」と話している。

「ナイトプラクティスでも僕らは新しいセッティングをトライすることにしている。今年のデイトナで僕らはポールを目指していなかったということさ。その現実性も、必要性も感じていなかったのでね。それよりもレースに向けた準備をもっと行うことが目標に掲げられていた。デイトナも他のコースと同じく、ハンドリングの良さがもっとも重要だからだ」

■可夢偉はナイトセッションから走行

10号車キャデラックDPiに乗り込むフェルナンド・アロンソ

 IMSA DPiというマシンも、デイトナというコースも初めての小林可夢偉は、24日のプラクティス1、2回目、そして予選で走行のチャンスを与えられなかった。

 アロンソは2回目のプラクティスから走ったが、可夢偉は予選後のナイトプラクティスが合同テスト以来の走行となった。土曜日の午後2時半にスタートが切られるレースでも彼は暗い間のスティントを任せられるようだ。

「テストで走ったのは50周以下だと思う」と話す可夢偉は、まだキャディラックDPi-V.Rというマシンを完全に手足のように操ることのできるレベルに達していないと認める。

 しかし、「難しいマシンでも、難しいコースでもない」とドライビングには何の心配もしていない様子だった。

「それよりもフルコースコーションなど、アメリカ独特のルールの方が(完全に)理解するのが難しいと思う。マシンを自分のものにすることは、レースで走る中で可能」と自信のほどをみせていた。

 難しい夜間走行を任せられるのも、彼がWECで見せてきた実績をWTRというチームがフルに信頼していることの証拠だろう。

 チーム・オーナーのウェイン・テイラーはIMSAシリーズで多くの実績を挙げている元ドライバーだが、彼は「うちのエンジニアたちが昨年のWECシリーズでの全セッションの全ラップをチェックした結果、可夢偉は飛び抜けたスピードと安定感を有しているとわかった。だから『デイトナを走ってくれないか?』というオファーをした」と起用の事情を説明。

 可夢偉自身も、「レースでは最後の2時間に勝負のできるポジションにつけられるよう、自分たちのマシンを走らせることを目指す」と目標を話した。初挑戦のデイトナ、そしてIMSAのレースだが、優勝を十分に狙える体制であると確信をしているようだ。

ナイトプラクティスを走行する10号車キャデラックDPi-V.R

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