DeNA筒香が語る球界の未来 増える子供の怪我は「トーナメント制が弊害」

日本外国特派員協会で記者会見を行ったDeNA・筒香嘉智【写真:広尾晃】

特定の子供に偏る負担、一発勝負の連続で「試合に出られない子供も増える」

 25日に都内の日本外国特派員協会で記者会見を行ったDeNAの筒香嘉智外野手。子供たちの将来を危惧し、野球人口の減少や、それに繋がる球界が抱える問題点を語り、そして子供世代の競技が「勝利至上主義」になっていることを、その問題の1つに掲げていた。

 では、なぜ「勝利至上主義」になるのか。「小学生が肘や肩を痛め、ひどい場合は手術をしないといけないという例も多く聞きます」と胸を痛めている筒香は、その問題をどのようにして改善、解決、改革すべきだと考えているのか。

 現在、小学生や中学生、そして高校野球と多くの大会が、一発勝負のトーナメント制で行われる。負けられない試合が続くことで、例えば、1人の主戦投手に登板が偏り、その子供に過度に負担がかかることがあり、それが結果的に怪我に繋がるリスクとなる。だからこそ、筒香も「トーナメント制が大きな弊害です。体が出来上がったプロ野球でさえもリーグ戦なのに、体ができていない子供がトーナメントで戦っています」と指摘する。

 さらには「皆さん良かれと思ってのことですが、全国で大会数がかなり増えています」と筒香。子供たちがより多くの試合を戦えるように、という考えもあるのだろうが、毎週、毎月のように様々な大会が行われている現状がある。大会数の増加は、必然的に勝ち進んだ場合の試合数の増加に繋がるだけに「トーナメントでやると勝つにつれて試合数がかなり増えて、日程的にも休みがない状態になります」と筒香も指摘した。

 さらには、一発勝負のトーナメント戦では勝つために、そのチームの中心メンバーばかりが試合に出ることになり、控えのメンバーがグラウンドに立つ機会は減っていく。そのために「メンバーが固まってしまい、勝つために試合に出られない子供も増えて、野球が面白くないという子供も出てきます」とも筒香は言うのだ。

ドミニカ共和国は「指導者が答えを与えすぎず、決して無理をさせない指導」

「先ほども言いましたが、連投連投による投手の肘、肩の故障が小中学生でかなり増えています。慶友整形外科病院(?)の古島弘三先生のお話によると、侍ジャパンU12の代表の15人のうち10人が肘を怪我している、内側障害があるというデータが出ています」。侍ジャパンU12代表に入るような選手は、もちろんそれだけの力がある選手。先の例に照らし合わせると、チームの中心選手として負担がかかっているということだろう。

 ドミニカ共和国のウインターリーグに参戦した経験を持つ筒香。現在、数多くのメジャーリーガーを輩出し、日本球界でも多くの助っ人が活躍している野球強豪国だが、筒香は「僕自身もウィンターリーグなどで訪れたドミニカ共和国で、古島先生が同様の検査をした結果、ドミニカ共和国の子どもたちは全然違う結果でした。僕自身、ドミニカ共和国を訪れて感じたのは、指導者が答えを与えすぎず、決して無理をさせない指導でした。もちろんドミニカ共和国が日本の素晴らしいところを学ばないといけない部分もありますが、日本もドミニカ共和国や他の国の素晴らしいところを学ばなければならないと思います」という。

 勝利至上主義と、それに直結するトーナメント制の弊害。「将来がある子供たちを守るには一発勝負のトーナメント制をやめてリーグ制を導入にしたり、ルールで球数制限や練習時間を決めることが必要だと思っています」と筒香は語る。次回は、近年、高校野球でも導入に対しての是非、議論が起こっている球数制限について、筒香の語った考えを紹介していく。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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