元銀行マン右腕がメキシコ球団と異例プロ契約 NPB球団経ずに四国ILから

メキシカンリーグのペリコス・デ・プエブラと契約した片山悠【写真:福岡吉央】

今冬はコロンビアのウインターリーグで好成績

 昨年まで四国アイランドリーグplusの愛媛でプレーしていた元銀行マンの片山悠投手が、メキシカンリーグのペリコス・デ・プエブラと契約したことが6日、分かった。メキシカンリーグはメジャーの3Aレベルとされており、日本のNPB球団でのプレー経験がない選手がメキシコでの契約を勝ち取るのは異例のこと。今冬、コロンビアのウインターリーグでプレーし、好成績を残したことがメキシコ行きのオファーへと繋がった。

 東海大出身の片山は大学では野球部には所属せず、クラブチームで5年間プレーした。大学卒業後は都内で銀行に務めていたが、プロへの夢を捨てきれず、17年から四国IL愛媛でプレー。2年目の昨年には42試合3勝3敗、防御率リーグ2位の1.92という好成績を残した。コロンビアではトロス・デ・シンセレホで先発を任され、レギュラーシーズンでは10試合3勝0敗、防御率2.20の成績でチームのプレーオフ進出に大きく貢献。プレーオフではエースの座を任され、決勝では元ロッテのキューバ代表ロエル・サントス外野手、元阪神のネルソン・ペレス内野手、元DeNAのアウディ・シリアコ外野手らを擁するカイマネス・デ・バランキージャに惜しくも敗れたが、制球力のある安定したピッチングが、日本人投手を探していたプエブラ関係者の目に留まった。片山は当初、コロンビアでのプレーを最後に引退し、高校野球の監督を目指す予定だったが、思わぬ好オファーに現役続行を決めた。

 プエブラでは02年に所属した根鈴雄次外野手に続く、球団史上2人目の日本人。同リーグではこれまで佐野慈紀投手、マック鈴木投手、藪恵壹投手、山村路直投手、吉岡雄二内野手、岡本直也投手らがプレーしているが、NPBやメジャーでのプレー経験がある選手がほとんどで、日本の独立リーグ出身の片山のようなケースは稀だ。

日本球界の海外スカウトも“掘り出し物”に注目

 片山は「コロンビアで海外の選手と対戦し、これまで以上に1球の重みを感じることができた。海外の打者にはコントロールミスをすると(1発を)簡単に打たれてしまうことを痛感した。メキシコでも同じことが言えると思うので、この経験を生かして抑えていきたい。嬉しさ半分、どんなリーグなんだろうという未知の部分も半分あるが、3Aレベルの舞台でやれることは嬉しいし、野球を楽しみたい」と期待に胸を膨らませている。プエブラは標高約2100メートルの高地で気圧が低く、打球が飛ぶため、投手には不利とされるが「自分はゴロを打たせて取るタイプの投手なので、低めにボールを集めて、ゴロアウトを重ねたい。コロンビアではチームが優勝することはできなかったので、メキシコではチャンスをもらったら、ミスをしないようにしっかり投げたい」と、新天地での抱負を語った。

 メキシカンリーグと契約したことで、早くも日本球界の海外スカウトらも“掘り出し物”である片山の存在をチェックしており、今季メキシコで好成績を収めれば、今秋にドラフト指名を受ける可能性も十分。海外から逆輸入の形で、自身の夢でもある日本のプロ野球入りするチャンスも出てきた。

 現在はコロンビアから帰国し、古巣の愛媛で自主トレ中。だが、コロンビアからフランス経由で帰国する際に、航空会社に預けていたグラブやスパイク、練習着などが入った荷物を紛失した。出発を前に早くもハンディを背負う形になり「グラブとスパイクは商売道具なので、1日も早く戻ってきてほしい」と、思わぬ災難にはさすがに頭を抱えているが、コロンビアでも停電による中断、試合球が会場に届かないことによる開始遅延など、数々のハプニングを乗り越えてきた片山。今季メキシカンリーグでは元楽天のジャフェット・アマダー外野手、元ロッテのロエル・サントス外野手らがプレー予定で、日本でも名前のある選手らを抑えれば今後の道も開けていくだけに「しっかり準備してメキシコに向かいたい」と、3月上旬のチーム合流を見据えた。(福岡吉央 / Yoshiteru Fukuoka)

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