TCRオーストラリア第3戦:クラッシュ多発の週末で、豪州SCスターのアウディが初勝利

 2019年に創設されたツーリングカー選手権、TCRオーストラリアの第3戦がアデレード近郊の新設トラック、ザ・ベンドで開催され、前戦からメルボルン・パフォーマンス・センター(MPC)のアウディRS3 LMSをドライブするスタードライバー、ガース・タンダーがレース1でシリーズ初優勝。続く2戦も連続2位表彰台を獲得し、クラッシュ多発の週末で安定の走りを披露した。

 7月12〜14日に開催されたザ・ベンド・モータースポーツパークでの1戦は、雨がらみとなった金曜最初のプラクティスからヘビークラッシュが発生する、荒れた週末を予感させる展開で始まった。

 このシリーズ開幕戦から勝利を挙げ、新たなスター候補生として脚光を浴びるウィル・ブラウン(ヒュンダイi30 N TCR)は、前方を走っていたVASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカー・ドライバーのジェームス・モファットがドライブするルノー・メガーヌR.S.TCRに激しく追突してしまう。

「彼(モファット)とは5〜6車身は離れていて、ターン6のヘアピンに向かっていた。(ウエット路面の)スプレーを避けようと左のイン側にマシンをズラしていたが、ブレーキに触れた途端アクアプレーニングが起きてしまった」と、ブラウンのi30 N TCRは車速を落とせぬままクラッシュ。

 ブラウンが所属するHMOカスタマー・レーシングと、モファットのGRM(ギャリー・ロジャース・モータースポーツ)のクルーは、夜通しのマシン修復作業を進めることとなった。

 しかし周囲の予想に反し、予選からレース1で健闘を見せたのもこの2台となり、2019年もVASCでティックフォード・レーシング、チャズ・モスタートの耐久カップ登録ドライバーを務めるモファットは、修復されたルノー・メガーヌでポールポジションを獲得。同じくVASCでDJRチーム・ペンスキーの耐久カップドライバーであるウォール・レーシングのトニー・ダルベルト(ホンダ・シビック・タイプR TCR)をフロントロウ2番手に退ける速さを見せた。

 迎えたレース1のオープニングラップも、スタート直前の降雨でウエット路面と化したトラックによりクレイジーな展開となり、ポールシッターのモファットはクラッシュに遭遇したヘアピンのターン6でラインを守れず2番手にドロップ。

 するとフロントロウ発進で首位浮上のダルベルトも、ターン9の中盤でスナップオーバーに見舞われリードは続かず。元のポジションに戻ったルノーも、ターン15でWall Racingから新規参戦のジョーダン・コックス(FK8ホンダ・シビック・タイプR TCR)にヒットされスピン。両者ともに遅れる展開となってしまう。

 このカオスなオープニングラップを首位で戻ってきたのは3番グリッド発進だったMPCのタンダーで、2007年VASCチャンピオンの操るアウディは2戦目にしてその特性を手中に収めたか、セーフティカー(SC)出動からリスタートでもポジションを堅守し、バサースト1000勝者のベテランらしいレース運びでラップを重ねていく。

ウエットに足元をすくわれたウィル・ブラウンが、アクアプレーニングでマシン大破
「若いブラウンには酷なほど、トリッキーなコンディションだった」と寛容な態度を見せたジェームス・モファット
そのモファットとGRMのクルーは早業のマシン修復を経てR1のポールポジションを獲得してみせる
参戦2戦目、FFツーリングカーを早くも手なづけたガース・タンダーが、バサースト1000勝者の貫禄を見せた

 その後方で目覚ましいジャンプアップを披露したのはクラッシュの発端となったブラウンのヒュンダイで、予選16番手発進からSC時点で6番手にまでカムバックすると、リスタートではアレックス・ルーロ、ジョン・マーティンと、2台のFK8ホンダ・シビック・タイプR TCRを仕留めて3番手にまで上がってくる。

 タンダー、コックス、ブラウンで推移した隊列は、7周目。FF前輪駆動ツーリングカー2戦目のタンダーがターン12でバランスを崩してスナップオーバーに見舞われ、まさかの4番手に後退しレースが動くと、3番手ホンダのマーティンがブラウンのヒュンダイを攻め立て、プレッシャーに押されたブラウンはターン9出口でタイヤを芝生に落とし、ポジションを明け渡す。

 そのまま首位コックスに迫りテール・トゥ・ノーズに持ち込んだマーティンだが、彼のシビックはフロントスプリッターを破損したようで終盤にペースダウン。ときを同じくして、今度はタンダーがブラウンを攻略し2番手に浮上してくる。

 そしてレースは4周を残したところでタンダーが勝機を見出し、ターン12のトラクションで勝ったアウディRS3 LMSは加速競争でコックスに競り勝ち再びトップランに返り咲くと、そのまま13周のフィニッシュラインを通過。TCR参戦2イベント目でさすがの初勝利を飾ってみせた。

 続いてコックス、ブラウンとチェッカーを受けるも、コックスはオープニングラップのモファットとの接触で10秒加算ペナルティを受け7位に降格。これでブラウンが復活の2位、3位にホンダのマーティンが続く表彰台となった。

 その後のレース2、レース3もこの表彰台の顔ぶれが活躍を演じ、再びSC発動の荒れた展開となったレース2は、ポールシッターのタンダーを逆転したブラウンがクラッシュの影響を払拭する今季4勝目を獲得。2位にタンダー、3位に同じく復活のモファットが続いた。

 そして最終ヒートのレース3は、ウォール・レーシングのマーティンがバサースト1000勝者に競り勝ちシリーズ初優勝を達成。2位に再びのタンダー、3位にモファットが続き、実力者たちが早くもTCRツーリングカーを完全にコントロール下に置いたことを感じさせるリザルトとなった。

 TCRオーストラリアの初年度シーズン、続く第4戦は8月2〜4日にVASCでもおなじみのクイーンズランド・レースウェイで開催される。

R2、R3でもSC出動のクラッシュが多発する荒れた展開のレースウイークとなった
痛々しいマシン外観にも関わらず、R1の2位に続いてR2を制したウィル・ブラウン。早くも国際シリーズ昇格の噂が立ち始めた
このラウンドから3台体制に拡大したWall Racingのジョン・マーティンがR3でシリーズ初勝利を獲得した
直前にGRMのクリス・ピザーがトラブルで離脱し、R3で連続2位を手にしたガース・タンダー(左)

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