【高校野球神奈川大会】勢い止められず 横浜エース及川、夏終わる

【横浜-県相模原】勝で敗れ、目を潤ませる横浜の及川=横浜

<県相模原8-6横浜> 甲子園に戻る-。そう信じて疑わなかった。だから横浜の背番号1は、「終わった瞬間は実感がなくて頭が真っ白だった」。最速153キロ左腕の高校野球が終わった。

 七回裏、及川の名がアナウンスされた。2年生の木下、松本がつかまり、2点差に迫られ1死二、三塁。「相手の波は感じていた。それを押し返してこそのエース」。力で押したが、同点の2点二塁打を打たれた。

 次の攻撃。自らの三塁打から勝ち越しのホームを踏んだ。あとは、リードを守るだけだった。

 最も自信を持つスライダーを軸にした。1死一、二塁。追い込んでから直球のサインに首を振った。「スライダーも良い高さに決まっていたので、ゴロで併殺を狙おうと」。自信があった勝負球が少し、高めに入った。逆転の決勝2点二塁打が、右翼線で跳ねた。

 平田徹監督(36)は「及川を不完全燃焼で終わらせてしまった」と悔いた。最後の試合で1回2/3を3安打3失点。左腕は「理想に近い投球だったと思うし、調子は悪くなかった。自分の実力のなさです」と言い訳はしなかった。

 千葉での中学時代に15歳以下日本代表として鳴らし、プロへの近道として名門を選び、「高校ビッグ4」に数えられた3年間。最後の夏には「チームを勝たせたかった」という思いだけが残った。ただ正念場でマウンドを託され続けたのは、エースであればこそだった。

© 株式会社神奈川新聞社