MotoGP:マルケス、チェコGP決勝前は「居眠りしてしまった」。ライバル圧倒し後半戦の緒戦終える

 MotoGPのシーズン後半戦が始まり、その緒戦となる第10戦チェコGPでレプソル・ホンダマルク・マルケスがポール・トゥ・ウィンでシーズン6勝目を記録した。

 2019年のチェコGPは初日こそ全クラス、ドライコンディションで行なわれたが、2日目以降、不安定な天候のウイークとなった。MotoGPクラスの予選Q2はウエットながらライン上が一部乾き始めているという難しいコンディション。マルケスはレインタイヤでの1回目のアタックを8番手で終えると、スリックタイヤを装着したマシンに乗り換えて2回目のアタックに出た。

 レインを履くライダーとスリックを履くライダーが混走するなか、マルケスは乾いたラインを巧みに読み、残り1分でトップに浮上。セッション終盤には再び雨が落ち始めるという難しいコンディションのなかで最終ラップにファステストラップを更新し、同じくスリックタイヤでアタックを行なった2番手のジャック・ミラー(プラマック・レーシング)に2秒524という大差をつけて、今シーズン6回目となるポールポジションを獲得した。

マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)

「予選が始まったときに、路面コンディションの変化を見て、スリックタイヤを使おうと決めていた。セッション終盤、雨が再び降り出したときは、路面の水量が増えてスリックタイヤでは難しい状況だった。予選が終わった後で、リスクが少し大きな走りだったと思ったが、結果的にはいい形でセッションを終えることができたからうれしい。今日のようなコンディションでは、コース上でほかのライダーを把握するのが大変だった」と予選を終えて語ったマルケス。

 スリックを選んだ理由は「ジャックがスリックで来る」と考えたからだという。ミラーはこうしたミックスコンディションに強く、過去にもポールポジションを獲得したことがある。

 そして、1回目のアタック中にマルケスはアレックス・リンス(スズキ)と接触している。リンスはマルケスがインを空けてくれたと判断してパスしようとしたが、コーナー途中でマルケスがインを締め、二人は軽く接触してしまった。そして、この周を終えて、ピットロード入口となる13コーナー進入でマルケスはやや強引にリンスを交わして、ピットロードに入り、ピット入口付近でリンスに対して怒りをアピールした。

「リンスに当てられて少し怒りを覚えた。少しコーナーではらんでしまい、ジャックに先行された。彼はこうしたコンディションで速いから、追いかけて次のラップに向けていい準備をしたかったが、続くコーナーでまたはらんでしまい、今度はリンスに抜かれてしまった。後で状況を理解したが、あのようにやり合うことが目的ではなかった」とマルケス。リンスとの交錯でマルケス自身、熱くなっていた面があったのかもしれない。

「目標はフロントロウ獲得だったし、転倒しなくてよかった。2秒5というタイム差はすごいけど、その差ほどグリッド位置の差はない。パルクフェルメではチームスタッフも喜んでくれたけど、パーソナルマネージャーのエミリオ(アルサモラ)や、チームマネージャーの(アルベルト)プーチは、僕がリスクを取り過ぎた走りをしたことに対してちょっと厳しい表情だったよ」とマルケス。

 そして、このポールポジションは、GP500クラス時代のレプソル・ホンダのエース、ミック・ドゥーハンが持つ最高峰クラスの最多ポールポジション記録、58に並ぶことにもなった。

■決勝レース前の慌ただしいなか居眠りしたマルケス

 そして、決勝日もMotoGPクラスは不安定な天候に悩まされることになった。決勝グリッドに着いたところで雨が降り、最終コーナー付近からホームストレート、1コーナー先にかけて路面がウエット、その他のセクターはほぼドライという変則的なミックスコンディションとなったのだ。スタートはディレイとなり、ライダーたちは約40分間ピット待機を余儀なくされた。

「なぜだか分からないけど、レース前に居眠りしてしまった。それだけ落ち着いていたということだろう。スタートディレイは正しい判断だった。とても危険な路面コンディションだったからね」

 チームはディレイ中に路面状況に合わせてマシンのセットアップを変更。マルケスはフロントにハード、リアにソフトのスリックをチョイスして決勝に臨んだ。

チェコGPのスタートシーン

 再開されたレースで、マルケスはホールショットでぬれた1コーナーに飛び込むと、集中力を発揮してトップをキープ。中盤まではアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)の追撃を受けるが、ポジションを譲ることなくトップを走り続けると、中盤すぎにプッシュしてリードを広げ、そのまま独走で今シーズン6勝目を記録した。

「ウエットパッチが残っている状態だったから序盤から集中して走った。特に1コーナーはぬれていたから気をつけた」とマルケスは決勝での戦い次のように振り返る。

「ドヴィツィオーゾが後ろにいたから、プッシュし続けなければならなかった。ドヴィツィオーゾは前後ミディアムをチョイスしていたが、ソフトよりミディアムのほうが消耗してしまうことは初日に分かっていた。でも、ソフトでどこまで行けるのか疑問はあったんだ」

レース中のバトル

「ドヴィツィオーゾはコンマ3、4秒差でついて来ていたが、プッシュして来なかったから、彼にも問題があると判断して、ギャップを広げるために10周目からさらにプッシュしたが、転びそうになったから注意深く走らなければならなかった。天候が不安定でクレージーな週末だったが、チームの仕事は完ぺきだった」

 マルケスはこの勝利でMotoGPクラス通算50勝目を記録。グランプリ通算76勝目となり、マイク・ヘイルウッドに並ぶ通算優勝ランキング4位タイに浮上した。

 ここまでの10戦でマルケスは6勝、2位に3回入賞。ノーポイントは転倒リタイアに終わった第3戦アメリカズGPのみと、ランキング2位のドヴィツィオーゾ に63ポイント差をつけている。10戦終了時点のポイント差としては、開幕10連勝を飾った2014年の89ポイント差に次ぐリードをランキング2位につけており、昨年の10戦終了時点よりも、そのリードは14ポイント多い。

 マルケスは6回目のタイトル獲得に向けて、シーズン後半戦をいい状態でスタートした。難しい路面コンディションの中でリスクを取ることをいとわず、ライバルたちを圧倒する走りで。

表彰台でチームスタッフと勝利を喜ぶマルク・マルケス

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