【高校野球】敦賀気比、今大会1試合最高のOPS1.326…データで楽しむ甲子園【8日目・第3、4試合】

大会8日目の結果一覧

智弁和歌山の先発・矢田は低めに集める投球、2番手・池田は空振り率15.4%

 夏の甲子園37勝の智弁和歌山と34勝の明徳義塾という常連校同士の対戦が第3試合に組まれた夏の全国高等学校野球選手権大会第8日目。13勝の敦賀気比と1回戦で甲子園初勝利を飾った国学院久我山との対戦も含め、セイバーメトリクスの指標で各校の闘いぶりを振り返ってみます。

 指標の説明は以下の通りとなっています。

OPS 出塁率+長打率 1を超えると優れている
wOBA 各プレーの得点価値を累積して算出した打撃指標
O-swing% ボールゾーンに来た球をスイングした割合
Z-swing% ストライクゾーンに来た球をスイングした割合
Swing% スイングした割合
O-contact% ボールゾーンに来た球をスイングした際にバットにボールが当たった割合
Z-contact% ストライクゾーンに来た球をスイングした際にバットにボールが当たった割合
Contact% スイングした際にバットにボールが当たった割合
Zone% ストライクゾーンを球が通過した割合
SwStr% 空振り率

WHIP 1イニングあたりに許したランナーの数
P/IP 1イニングあたりに投球した球の数
GB/FB フライに対するゴロの割合

○智弁和歌山 7-1 明徳義塾

攻撃指標
【智弁和歌山】
打率.333 OPS.965 wOBA.443
O-swing% 18.6% Z-swing% 74.7% Swing% 50.7%
O-contact% 90.9% Z-contact% 94.9% Contact% 94.3%
Zone% 57.2% SwStr% 2.9%

【明徳義塾】
打率.133 OPS.402 wOBA.235
O-swing% 32.8% Z-swing% 53.4% Swing% 44.0%
O-contact% 60.0% Z-contact% 89.7% Contact% 79.7%
Zone% 54.5% SwStr% 9.0%

○智弁和歌山 投手の各指標

矢田真那斗
5回 打者数22 投球数81
WHIP 1.20 P/IP 16.20 GB/FB 1.14
ストレート50.6% スライダー 45.7%
Zone% 53.1% 空振り率 4.9%

池田陽佑
4回 打者数14 投球数53
WHIP 0.50 P/IP 13.25 GB/FB 3.00
ストレート49.1% スライダー 43.4%
Zone% 56.5% 空振り率 15.1%

○明徳義塾 投手の各指標

新地智也
6回2/3 打者数33 投球数121
WHIP 1.95 P/IP 18.15 GB/FB 0.82
ストレート87.6% スライダー 8.3%
Zone% 56.2% 空振り率 2.5%

服部遼馬
2回1/3 打者数8 投球数17
WHIP 0.43 P/IP 7.29 GB/FB 0.33
ストレート41.2% スライダー 58.8%
Zone% 64.7% 空振り率 5.9%

 両チームの打撃指標は1回戦のものとほぼ変わらない数値を示していました。その差がこの試合での得点差としてあらわれた形となりました。明徳義塾の新地投手はストレート割合87.6%、低めコントロール率52.9%の数値からもわかるように、120km/h台のストレートを低めに集める丁寧なピッチングで6回まで6安打無失点に抑えていたのですが、7回に入り20球連続でストレートを投げるものの、コントロールが甘くなり二塁打、エラー出塁、ヒットと重ねられて初失点。そして智弁和歌山の2番・細川選手にど真ん中のストレートをライトスタンドに運ばれ逆転を許してしまいます。その後もストレートで2本の本塁打を浴び、7失点で降板となりました。

 智弁和歌山の先発・矢田投手は低めコントロール率64.2%と丁寧に低めに集めるピッチングでWHIP1.20、5回1失点とまずまずの内容でした。前の試合で8イニング投じた池田投手は2番手として出場。スライダーでの空振り率30.4%を含む、トータル15.4%の空振り率で明徳義塾打線を二塁打1本、奪三振5と制圧し、リリーフとして3回戦進出に貢献しました。

敦賀気比・笠島はストライクゾーンに投げ込み、ゴロに打ち取るスタイル

○敦賀気比 19-3 国学院久我山

攻撃指標
【敦賀気比】
打率.524 OPS1.326 wOBA.571
O-swing% 21.7% Z-swing% 76.3% Swing% 53.1%
O-contact% 66.7% Z-contact% 94.4% Contact% 89.5%
Zone% 57.4% SwStr% 5.6%

【国学院久我山】
打率.265 OPS.695 wOBA.346
O-swing% 24.6% Z-swing% 60.8% Swing% 45.0%
O-contact% 53.3% Z-contact% 95.8% Contact% 85.7%
Zone% 56.4% SwStr% 6.4%

○敦賀気比 投手の各指標

笠島尚樹
6回 打者数25 投球数82
WHIP 1.33 P/IP 13.67 GB/FB 5.33
ストレート69.5% スライダー 22.0%
Zone% 59.8% 空振り率 4.9%

黒田悠斗
2回 打者数9 投球数36
WHIP 1.50 P/IP 18.00 GB/FB 0.20
ストレート58.3% スライダー 25.0 カーブ 11.1%
Zone% 55.6% 空振り率 5.6%

 打者のべ54人で22安打、19得点の敦賀気比。OPS1.326は今大会の1試合での数値として最高となりました(5本塁打した履正社の1回戦はOPS1.276)。大量得点差となると、バッティングに粗さが出やすくなりがちですが、O-swing%21.7%、空振り率5.6%と試合終了までしっかりとボールを捉えようとする姿勢は崩していませんでした。なお敦賀気比の3番・杉田選手は5安打でしたが、単打2本、二塁打、三塁打、本塁打1本ずつとサイクルヒットを達成。これは2004年以来15年ぶり、大会史上6人目の記録です。

 得点差があったからかもしれませんが、敦賀気比の投手陣はZone%6割とストライクゾーンにすいすいと投げ込んでいく様子が伺えます。特に先発の笠島投手はストレート投球割合7割とストレート主体に投げ込みましたが、空振り率4.9%、GB/FB5.33からもわかるように、ゴロに打ち取っていくスタイルでアウトを重ねていきました。

 国学院久我山の打撃指標は平均的な数値ではありましたが、残塁9とチャンスでのバッティングで結果が出ず3得点で試合を終えることになりました。鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ・ラジオ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。

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