豪州SC:シモーナ・デ・シルベストロ、2019年限りでのシリーズ離脱を表明

 VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーに電撃参戦以降、ケリー・レーシングのニッサン・アルティマをドライブしてきたシモーナ・デ・シルベストロが、ニッサンからフォードへのスイッチに伴い4台体制から2台へ縮小するチームの方針にも影響を受ける形で、2020年のシリーズフル参戦を断念する意向を表明した。

 スイス出身の女性トップドライバーとして活躍を演じてきたシモーナは、F1の開発ドライバーを筆頭に北米のインディカー、フルEVシリーズのABBフォーミュラE選手権など、シングルシーターでのキャリアを積み重ねたのち、2017年から豪州大陸に渡り本格的ツーリングカーの流儀を学ぶ3年間を過ごしてきた。

 しかし2020年を前に、ふたたびフォーミュラEで女性初のポルシェ契約ドライバーとしての役割を果たすことを決断したシモーナは、VASCシリーズ第13戦サンダウン500の週末を前に、この愛着あるツーリングカー選手権に留まる意欲があるにも関わらず、シリーズから去る可能性が高いことを示唆した。

「私は来季フルシーズンエントリーで、このシリーズのグリッドに着くことはないと思う」と、現地パドックでFOXスポーツのTV取材に応えたシルベストロ。

「まだオーストラリア大陸に留まることのできる可能性すべてに、チェックボックスを入れていない状況のように感じて少し残念なのだけど、タグ・ ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチームとの契約は、私にとって本当に大きな出来事だった」

「彼らの近くにいたことは事実だけど、こうして機会が巡ってくるとは思いもしなかった。このチャンスで、私が常に思い描いてきた夢を実現し、チャンピオンシップやレースで勝てる環境を手にすることができるのでは、と考えたの」

2020年のシリーズフル参戦を断念する意向を表明したシモーナ・デ・シルベストロ
3年間のシリーズ最上位は今季のプケコへで記録した7位。表彰台登壇は果たせなかった

「このオーストラリアでは、支援してくれたハーベイ・ノーマンや(同社CEOの)ケイティ・ペイジ、そしてニッサン・モータースポーツやケリー・レーシングのおかげで3年間もの貴重な経験を積むことができた。ポルシェと契約できたのは、すべてこのオーストラリアでの3年間があったからこそだと感じているわ」

「1日の終わりに考えることはつねに同じで、『私はチームに必要とされているか、私は必要なチャンスを与えられているか』ということ。だから私はここで3年間も戦えたんだし、今回の決断を下した最大の理由もそこにあるの」

「31歳の私にとって、達成したいことを本当に達成できる場所を確認する必要があったことは事実だし、ティックフォードのマスタングやトリプルエイト(・レースエンジニアリング)のレッドブル支援で戦うか、それともリザーブ待遇でもポルシェとの将来に賭けるか。長期的に考えれば、私の決断は間違っていなかったと信じたいところよ」

 シングルシーター上がりのシルベストロにとって、重量級の”ハコ車”はなかなか手のうちに入れるのが難しいジャンルだったようで、VASCシリーズでの最上位は今季2019年にプケコへで記録した7位、トップ10フィニッシュは3年間で3度に留まった。

 一方、2020年に向けてのVASC移籍市場は活発化しており、ジェームス・コートニーの離脱が発表されたWAUウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッドは、2016年からチームに在籍したスコット・パイとの契約終了もアナウンス。2020年は完全にドライバーラインアップを一新する方向で検討していることを明かした。

 そのパイは、ケリー・レーシングの体制縮小によりシリーズエントリー権となるREC(レーシング・エンタイトルメント・コントラクト)を購入したTeam18、チャーリー・シュワルコート・レーシングへの移籍を発表。

 2014年王者マーク・ウインターボトムのシングルカー体制で戦ってきた組織に加入し、2台目のホールデン・コモドアZBをドライブすることが決まっている。

2019/20シーズンからタグ・ ホイヤー・ポルシェ・フォーミュラEチームとの契約で開発ドライバーを務める
Team18、チャーリー・シュワルコート率いるIRWIN Racingへの移籍を発表した29歳のスコット・パイ(右)

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