テレワークで残業代が減り赤字に…急な収入減をどう乗り切る?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、新型肺炎の影響でテレワークやシフト調整を迫られ、収入が減る見込みだという30代夫婦。家計は赤字に転落しそうで、この先が不安だといいます。FPの平野泰嗣氏がお答えします。

新型コロナの感染拡大が懸念される中、夫が勤める会社では、一部、在宅でのテレワークを実施することが決まりました。在宅勤務では原則、残業禁止ということなので、これから月当たり2万円程度収入が下がる見込みです。また私も、パート先から仕事量が減っているとの理由でシフトの調整が行われ、月2万円ぐらい減収の見込みです。

これまでは、ゆとりのある生活をし、わずかばかりですが、貯金もすることができていました。夫婦2人で月4万円の減収となると、毎月の収支がマイナスになり、貯金もそれほど多くありませんので、この先、やっていけるかどうか不安で仕方がありません。

<相談者プロフィール>

・女性、32歳、既婚(夫:32歳・会社員)

・子ども:1人(3歳)

・職業:パート

・ボーナス込みの額面年収:472万円

(夫:400万円、妻:72万円)

・手取り世帯月収:30万円

(夫:24万円、妻:6万円)

・現在の貯金:120万円

<毎月の支出状況>

・住居費(家賃):7.5万円

・食費:6.5万円※外食費込み

・水道光熱費:1.5万円

・日用雑貨:1万円

・習い事・子ども費:1.5万円(通信教育、音楽教室)

・被服費:1.5万円

・通信費(ネット、携帯):1.5万円

・保険料:1万円(学資保険)

・夫婦の小遣い:4万円

・雑費:1万円

・毎月の貯蓄:3万円

【ボーナス時】

夏冬10万円ずつ貯金(年間20万円)、あとは家族旅行や買い物に充当。


平野:ご相談ありがとうございます。新型コロナウィルスの感染拡大抑制のため、在宅でのテレワークを導入する企業が増えています。また、小さなお子さまがいらっしゃるご家庭では、子どもを保育所に預けるのは心配という理由でパート出勤を控えたり、パート先の仕事量が減り、出勤日数を減らして欲しいという要請があったり、家計への影響も少なくありません。

今回は、急な収入減少に家計としてどのように対応したらよいかを解説します。

緊急事態であれば、貯蓄は取り崩してもよい

まず、相談者様の現在の家計の収支(収入が減る前)の状況を見てみましょう。

参考として、平成26年全国消費実態調査(世帯類型, 年間収入階級別)から、夫婦と子どもが1人の世帯で相談者様と同じ、年収階級が400~500万円の世帯と相談者様の1ヵ月の収支を比較してみました。

比較世帯と相談者様ともに手取り月収は約30万円で、月の家計収支は比較世帯が約2万円、相談者様は3万円なので、「これまでは、ゆとりのある生活をしつつも貯金することができていた」とおっしゃる通り、まずまずの家計状態であったと言えそうです。

ただし、相談者様が心配されるように、ご主人の残業代の減収と相談者様のパート収入の減収を合計4万円と見込むと赤字に転落します。今まで、しっかり貯金を積み上げてきた実績がある相談者様から見れば、急に不安な気持ちになるのは仕方のないことだと思います。

ただ冷静に考えれば、今回のご主人様の在宅勤務や相談者様のパート先のシフト調整は、緊急事態への対応とも考えられるので、心配し過ぎるのもよくないのではないでしょうか。

仮に月4万円の減収であったとしても、月1万円の赤字なので、現在の貯金残高120万円は、まだまだ十分な貯蓄とは言えませんが、当面はしのぐことは可能です。貯金は、このような緊急事態に備えて貯めておくものなのですから、緊急時に貯金を減らすこと自体に罪悪感を感じてはいけません。

家計の緊急事態は、即効性のある〇〇費の削減から

そうは言っても、勤務先やパート先の緊急対応がどのくらい続くかは不透明ですので、家計の緊急体制を取るという認識のもと、ご主人と意識合わせして、支出の削減に取り組んでいく必要はあるでしょう。

通常、家計支出の見直しは、支出割合の大きいもの、そして変動費よりも固定費を優先して取り組むと効果が続くと言われています。ただし、固定費の削減は、一度手続きをすれば、我慢をせずに効果が長続きしますが、効果が出るまで少し時間がかかりますので、緊急事態に対応する手段としては不向きです。

一方、変動費は、意識して行えば節約できるけれども我慢が必要なので、長続きはしません。ただ、ここ1~2ヵ月を正念場と考えるのであれば、変動費はすぐに減らすことができます。貯金をねん出しつつ赤字にならないことを目標にするのであれば、外食を減らし食費を1.5万円削減、小遣いも当面は各々必要なものしか買わないということで1.5万円削減し、合計3万円が達成できます。とはいえ、「言うは易し行うは難し」なので、ご主人の協力も必要です。

固定費の削減は「止める」だけではなく、「中断する」という視点も

収入減が長期化する、あるいは、より一層の減収が見込まれる場合も想定しておかなければなりません。変動費の削減は一過性のものなので、本格的に家計の支出を抑えるというのであれば、やはり固定費の見直しが必要になるでしょう。

固定費の見直しも、支出を「中断する」と「止める」に分けて考えるとよいでしょう。「止める」と考えると、相当の決断が必要になりますが、一時中断と考えれば、少し気持ちが楽になります。相談者様の支出に含まれていない項目もありますが、一般的には、以下のものが考えられます。

・通信費
・新聞・雑誌の定期購読
・スポーツクラブの会費
・子どもの習い事
・サブスクリプションサービス(定額制のサービス)
・財形などの給与からの天引き貯蓄(支出ではありませんが)

また相談者様は学資保険に加入されていますが、収入が減り、保険料の支払いができなくなった場合、解約するのではなく、自動振替貸付(保険料が支払われなかった場合、解約返戻金の範囲内で貸付が行われる)や契約者貸付(解約返戻金の70~90%の範囲で貸付が行われる)という制度を使い、保障を維持することができます。貸付制度なので、所定の利息がかかります。

保険は、いざというときに備えて加入しているものなので、必要な保障と思って加入した保険であるならば、家計が厳しい時でもできるだけ継続できるようにした方がよいでしょう。

どうしても借りる必要がある場合は、会社の福利厚生や自治体の融資制度を活用

収入減が長引き、貯金も尽きそうという段階になった場合、どうしても借金に頼らなければならないという場合も考えられます。

手元にあるクレジットカードの多くは、キャッシングローン機能がついていますし、最近は、スマホのアプリで簡単にローンが組める時代です。お手軽という理由で、ついこういったローンを利用してしまいがちです。けれども、簡単に借りられるローンは、一般的に金利が高く返済期間も短いので、借りた後の返済負担が重くなるのが一般的です。

もう少しで貯金が尽きそうだと予想されるのであれば、早めに低利でかつ長期で借りることができる制度などを探し、そちらを優先して利用することをお勧めします。

例えば、勤務先に従業員貸付制度があるのであれば、一般的なカードローンより金利も安く、金額も比較的多く借りられるでしょう。勤務先が中小企業で従業員貸付制度がないという場合は、自治体の制度の利用を検討するのもよいでしょう。例えば、東京都の場合、東京都中小企業従業員生活資金融資(さわやか)というものがあり、原則70万円、固定金利1.6%(※)、期間3年、保証人不要(労金指定の保証協会を利用)で、ローンを組むことが可能です。お住いの自治体に生活資金の融資制度があるかどうか確認してみましょう。

(※令和元年11月30日以前及び令和2年4月1日以降に申し込んだ場合の年利は1.8%となります)


今回は、家計の収入減少という緊急事態を踏まえて、家計の見直しの視点を解説しました。このような緊急事態は、家計を夫婦で見直すよい機会にもなります。少し余裕が出てきた時点で、お二人のライフプランを見直し、適切な生活水準を見つけましょう。

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