開花の春を

 つぼみと呼ぶには早いような、ほんのわずかな膨らみを枝の先に見つけた。自宅近くの公園にソメイヨシノの木が数本ある。この時節、つぼみの様子を観察するたび、春の足音が聞こえてくる。日本気象協会によると、長崎市の桜の開花日は平年よりも3日早く、今月21日と予想される▲桜が開花するには、冬の一定期間、寒さにさらされる必要があるらしい。前年の夏につくられ、いったん休眠に入った花芽が、低温が続くことで目を覚ます。「休眠打破」という▲休眠の余裕はなかったとしても、厳しい寒さ、我慢の時を過ごし、花開く日を待つという点では、受験生は桜のつぼみと同じなのかもしれない。県内できょうから2日間、公立高校の入試がある▲例年だと、同級生らと日々、温かく励まし合って迎えるはずの本番だが、今年は様子が違っている。新型ウイルス禍に伴い、休校のさなかの受験になる▲社会には感染の不安があり、終わりが見えない不安もある。季節は暖冬から春へと移っても、世の中、冷え込みがまだ続く。入試の直前に“自宅待機”となった受験生はことの外、寒さがこたえたに違いない▲「氷が解けると何になる?」。もちろん水だが、もう一つ、「春になる」という答えもある。2日間、どうか平常心を携えて、開花の春を迎えることを。(徹)


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