読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、外国籍の夫を持つ41歳の共働き主婦。やっと夫が給与の安定した仕事に就いたものの、年金には期待できず老後が不安で仕方がないといいます。FPの飯田道子氏がお答えします。
主人が外国人で、日本に来た10年前は日本語も話せず、英会話のバイトぐらいしか仕事がなく、今まではほぼ私の収入のみで暮らしてきました。お給料は低いですが、2年ほど前からやっと安定した給与の仕事に就いたので、これから生活を安定させたいと思っています。
結婚前からコツコツ貯金していたことや、双方の両親が援助してくれたこともあり、住宅ローンは完済しています。現在はまだ子どもにそれほどお金がかからないので、月収の35%を貯蓄に回しています。内訳は、老後資金に7万円、教育費に7万円。ボーナスも本来は全額貯蓄できればいいのですが、1年に1回は主人の母国の義母に会いに帰るため、90万円が飛んでしまいます。しかし、主人の母が健在である以上、お金がかかっても帰省するのは義務ですし、孫たちにも会わせてあげたいと思っているため、ボーナスからの貯蓄は考えていません。
先日から老後資金7万円のうち3万円を、つみたてNISAに積立て始めました。将来的には実両親から1500万円程度、義母から1500万円程度の相続を受け取る予定です。また、主人は母国で月400ユーロの不動産収入があります。ありがたいことに、双方の両親が私たち子どものためにと貯めてくれているのですが、私も(事務職・厚生年金)主人も(30~39歳まで国民年金、今後厚生年金予定)受給年金が少ないと見積もっているので、今後さらに年金制度が厳しくなるであろうと考えると、老後が不安でしかありません。
<相談者プロフィール>
・女性、41歳、既婚(夫:39歳、会社員)
・子ども2人:6歳、3歳
・職業:会社員
・居住形態:持ち家(マンション)
・毎月の世帯の手取り金額:40万円
・年間の手取りボーナス額:96万円
・毎月の世帯の支出目安:26万円
【支出の内訳】
・住居費:1.4万円(管理費のみ)
・食費:8万円
・水道光熱費:1.5万円
・教育費:3.5万円
・保険料:0.4万円
・通信費:1万円
・車両費:なし
・お小遣い:6万円
・その他:4万円
【資産状況】
・毎月の貯蓄額:14万円
・現在の貯蓄総額:1080万円
・現在の投資総額:15万円
・現在の負債総額:なし
飯田:外国人の夫を持ち、共に働いている相談者様。夫の仕事も安定し、これからは落ち着きたいと願っています。現在の悩みは将来のこと。老後に受け取れる年金があてにできないため、どのようにすればよいのかというお悩みをお持ちのようです。
教育費と老後資金がいくら必要になるのか算出する
相談者様ご夫婦はまだ若いので、まずはこれからの生活において、どれくらいの支出があるのかを予想し、予定しておくことが大切です。相談者様の場合、すでにマイホームはお持ちですので、主に大きな出費となるのが教育費と老後資金となります。
【教育費】小学校~高校は公立、大学は私立文系の場合
押さえておくべきなのは、教育費がどれくらいかかるのかということです。生命保険文化センターによると、小学校から高校までを公立で過ごし、大学は私立の文系に進学し、自宅から通学した場合を例に、教育費を算出しました。その16年間にかかる教育費の合計は、約1139万円となっています。
<内 訳>
小学校6年間:約193万円
中学校3年間:約143万円
高 校3年間:約135万円
大 学4年間:約668万円
この他にお稽古事にもお金がかかると思いますし、進学先が私立であれば、お金はさらに必要になります。特に大学では自宅から通学する場合と下宿する場合でも大きく差が出ており、私立の文系に進学し、下宿先から通学した場合には教育費は、約933万円です。同じ学校、学部であっても、265万円も多く支払わなくてはなりません。
基本的な支出としては、子ども2人ですので、約1139万円×2人で2278万円の支出が予想されます。とはいえ、これはあくまでもモデルケースの場合の費用です。できるだけ早く子どもの意向を聞いて、必要な支出額を修正していくことが大切です。
【老後資金】ゆとりある老後を送るには月いくら必要?
多くの企業が定年退職のタイミングを先送りする傾向にありますので、65歳で定年退職して、セカンドライフを送ると考えてみましょう。
生命保険文化センターが令和元年に行った調査によれば、老後、いわゆるセカンドライフで必要となる最低の生活費は平均で月額22.1万円。ゆとりある老後生活では月額36.1万円という結果になっています。
これを相談者様の夫婦に当てはめてみると、夫婦の90歳までの生活費は25年間で6630万円。ゆとりある老後資金では、1億830万円という金額が算出されました。
4つのステップでお金を貯める!
大まかな支出がわかったところで、どのように貯めていくのかを考えてみたいと思います。とはいえ、その前に、家計の見直しをすることが必須です。
(1)月8万円の食費を見直して
一見すると無駄がなさそうな毎月の支出ですが、おそらく外食の費用も含まれているかと思いますが、毎月の食費の8万円はちょっと高いのでは? お仕事の関係上、仕方ないのかもしれませんが、将来のことを考えたら可能であれば2万円、最低でも1万円は減らして貯蓄にまわして欲しいと思います。
(2)保険の見直しで過不足を調整する
また、保険料が0.4万円なのも気になります。最低限の医療保障のみに加入しているのかもしれませんが、夫婦それぞれ、万一、病気等で働けなくなった場合を考えて医療保障として入院日額を8000円前後は確保しておきたいところです。
その他、子どものための学資保険への加入も検討してみてください。
現在の預貯金額であれば、1人目の子どもの学費は準備できると思いますが、2人目となると、足りなくなってしまう可能性が出てきます。もちろん、貯金しながら支出することになるかと思いますが、教育費という観点から考えてみると、貯蓄して準備するよりも学資保険で教育費として準備して行く方が、効率よく貯めることができますよ。
(3)日本の年金と通算できる可能性も?老後資金の準備
厚生労働省によると、厚生年金の平均受給額は14万3761円でした(平成30年分)。ただし、これはあくまでも40年間就業した場合の金額です。
相談者様は平均値に近い金額を受給できる可能性はあるのですが、ご主人の年金はそれ以下となることは必至。しかしながら、最低限の必要な老後の生活費は月額22.1万円ですので、ご主人の年金および収入が7万円強あればOKという計算になります。海外での賃貸収入もあることから、総合的にみれば、老後の生活費はクリアできる計算になります。
その他に確認して欲しいのは、ご主人が本国で年金制度に加入していたかどうかです。加入していた場合には、日本の年金と通算できる可能性があり、年金受給額が増えることも。ぜひ、確認してみて下さい。
(4)貯蓄は必要になるものから、優先順位をつけて貯める
現在、老後資金に7万円、教育費に7万円と積み立てていらっしゃいますが、このペースは続けて欲しいと思います。
しかしながら、内訳を変えてみるのも一考です。たとえば老後資金および予備費として5万円、教育費7万円、学資保険2万円というように、貯蓄総額はそのままで、その時の生活で必要になる資金を優先して準備してみてはいかがでしょうか。
このデータは、あくまでも今の数値でしかありません。大まかなお金の流れがわかったら、適宜に修正しながらお金を貯めていくことが大切です。家計はしっかりと運営されていると思いますので、自信を持って、ご家族との生活を楽しんでくださいね。