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早朝の7時前、被害者の女性(事件当時17歳)は自宅で就寝中でした。そこに犯人の男がやって来ました。男は被害者の着ていたタンクトップを捲り上げました。手にはスマートフォンを持っています。男は撮影をしながら被害女性の胸を揉みはじめました。そしてパンツを脱がせ、また撮影しながら陰部を弄りました。
犯行の間、被害者は寝たふりをし続けました。彼女は犯人の男のことを知っていました。知っていたどころの話ではなく、一つ屋根の下に住んでいました。犯人は母親の内縁の夫、つまり血はつながっていないにせよ「父親」同然の男だったのです。
被告人(氏名、年齢非公表)は逮捕される2年前から風呂場などに防水小型カメラをしかけ義理の娘を盗撮していました。1度はそれが妻にバレて咎められましたが、その後も盗撮は続けました。
そして事件の日をむかえました。
その日、身体を弄られ撮影されながらも被害者が寝たふりを続けたのは、
「騒いだり抵抗したりして母に知られたらきっと悲しませてしまう」
「今の生活を壊したくない」
という理由からです。抵抗をしないこと、それは彼女にとっては「家族」を壊そうとする者から「家族」を守るためにできる唯一の抵抗でした。そのために必死に我慢をしたのです。逆に言えば、被告人は娘の「家族」を守ろうとする想いにつけこみそれに守られながら犯行を重ね続けたのです。
しかし、今までに盗撮をされたことはあっても陰部を弄られるという犯行態様は初めてのことでした。そこまでされてはもう耐えることはできず、彼女は被害を打ち明けました。
被告人は裁判では、
「被害者とはもう今後は会いません。関わらないよう心がけます」
と話していました。
裁判前の検察官調書を取る段階では、
「娘が成人するまでは成長を見届ける義務がある」
などと今後も被害者と関わる意思を示していたのです。その時は自分のしたことがどれほどの傷を被害者に与えたかわかっていなかったのかもしれません。
裁判の最中でも、動機について問われた時には、
「性的関心はそこまでありませんでした」
「動画を撮ったらデータが保存されていました。撮ってる時点では後で動画を観てオナニーをしようなどとは思っていませんでした」
「後で観るつもりで撮ったというか、いつでも観れる状態になっていたのは事実です」
と曖昧な言葉を連ねていました。
裁判官に激しく詰められてようやく、
「動画を観て…興奮してました」
「性的欲求を満たそうとしていたのかもしれません」
とある程度は性欲を満たすための犯行だったと認めたものの、裁判という場でさえ自分を取り繕い誤魔化そうとしていた姿からは罪ときちんと向き合い更正を目指す姿勢は見受けられません。
彼は自分の行為が被害者にどんな影響を与えるかについてあまり考えてはいなかったようです。もちろん、少しでも考えていればこのような犯行に至るはずはないのですが、それにしてもあまりに無頓着でした。
「(犯行時は)被害者は寝てると思ってました。気づかれてないと思ってたので傷つけてしまうとは考えてませんでした」
気づかれていないから大丈夫だと思っていたのです。
自分の娘を1人の人格のある人間として尊重していたとは思えません。「父親」から性的に利用され消費された経験は被害者の心に一生消えない傷を残しかねないものであり「考えてませんでした」ということ自体があり得ないのです。
彼は今後は実家に戻って暮らしていくそうです。
彼の母親は息子のしたことを知りながらも拘置所へ5回も面会に来てくれました。
「家族」を壊した彼にも心配してくれる「家族」はいます。
裁判では彼は自分を偽り続けました。しかし実家に戻れば彼は否が応でも「家族」とは何なのか、という問いを突きつけられることになります。その問いに彼が自分なりの答えを見いだし自分が壊したものが何なのかを知った時、その時から本当の意味での償いの日々は始まります。(取材・文◎鈴木孔明)