「入院手術になっても給付金が出ない…」 “保険に無知”が招いた失敗

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、保険に加入しているのに、先日入院した時に給付金が出なかったという20代男性。夫婦に適切な保険や、入院のような特別支出があったときに対応できるようにするには家計のどこを見直したらいいのか知りたいといいます。FPの氏家祥美氏がお答えします。

結婚してもうすぐ3年になります。2人とも働いているので、毎月の支出は気にせず過ごしていましたが、なかなか貯金できないことに不安を感じて、昨年末に妻と相談してお小遣い制にして家計簿をつけることにしました。

ネットや本で自分なりに勉強し、まずは住宅購入のための貯蓄を始めました。個人的には、マイホームは若いうちに購入したいと考えていましたが、妻はよく考えて貯蓄してから購入したいとのことで、5年間貯蓄を頑張ろうということになりました。都内のマンション4000万円程度で考えていますが、金額的に中古になるのではという話をしています。

貯蓄の中にはつみたてNISAも入れた方がよいという話を聞き、投資にもチャレンジし始めました。同時に老後のことも少し考えなくては、という話になり、夫婦でそれぞれ5000円ずつiDeCoにも加入しました。

子どもは、1人は欲しいという話になっていますが、2人で旅行したり外食したりすることが楽しく、この時間をもう少し大切にしようという話をよくしています。また、家計簿をつけて気づいたのですが、食費が2人にしては高いなと感じます。2人でおいしいものを食べに行くのが趣味でもあるので、外食は月1回程度にして、他は貯蓄にまわしていきたいと思います。また海外旅行も年1回は行きたいです。

また保険についての知識が少ないのが、我が家の弱点だと最近気がつきました。実は私自身が急な病気で手術、入院をすることになりました。保険に入っているから大丈夫だと思っていましたが、入院・手術代は該当しない内容だったらしく給付金が出ず、妻とがっかりしているところです。

妻は保険に入っていませんでしたが、これを機にもっと勉強しなければということになり、これから加入を予定しています。私も病気が治り、しばらくしてからになると思いますが、入院・手術給付金の出る保険に入り直さなければと考えています。

現在加入している保険は、外貨建て貯蓄保険と掛け捨ての保険で、合わせて約1万円を毎月支払っています。どちらも死亡保障の内容だったようで、見直さなければいけないと感じています。いろいろ調べた結果、外貨建ての貯蓄性のある保険はあまりおすすめできないという情報をよく目にするのですが、入るべきではなかったのでしょうか。解約して少しでもお金が戻ってくるならば、今回の入院・手術代の医療費に充てたいと考えています。ですが、どの程度戻ってくるのかもあまり分かりません。

今の家計状況では余剰分が少なく、今回の入院のような特別支出を捻出するときに苦しくなると感じました。月々の貯蓄額が多過ぎるでしょうか。また今の家計で削れる部分はどこか、適切な保険は何かを教えていただきたいです。長文になってしまいましたが、よろしくお願いします。

<相談者プロフィール>

・男性、28歳、既婚(妻:29歳、派遣社員)、子どもなし

・職業:公務員

・居住形態:賃貸

・毎月の手取り金額:46万円

(夫:24、妻:22万円)

・年間の手取りボーナス額:100万円(夫のみ)

・毎月の世帯の支出目安:約32.3万円

【支出の内訳】

・住居費:8.3万円

・食費:8万円

・水道光熱費:1万円

・教育費:なし

・保険料:1万円

・通信費:1万円

・車両費:なし

・お小遣い:5万円

・交際費:2万円(夫婦それぞれ1万円)

・趣味娯楽費:2万円

・奨学金返済:3万円(夫:1万円、妻:2万円)

・その他:1万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:12.3万円

夫:定期3万円、つみたてNISA3.3万円、貯蓄保険1万円、iDeCo0.5万円

妻:定期4万円、iDeCo0.5万円

・年間ボーナスからの貯蓄額:70万円(昨年は40万円、今年から)

・現在の貯蓄総額:120万円

・現在の投資総額:3.3万円(つみたてNISA)

・現在の負債総額:奨学金(残債の記載なし)


氏家:今回は、共働きのご夫婦からのご相談です。ふたりとも20代で、ご主人は公務員。堅実に将来のことを考えつつ、貯蓄や資産形成に努めています。

(1)保険がよくわからない(2)家計に余裕がないため突然入院した時に苦しく感じた(3)家計で削れる部分があったら指摘してほしい、という3つのご相談ポイントに注目しながら、アドバイスをしていきます。

夫婦で医療保険の加入を!病後の保険は…

先日、入院・手術をしたのに、入院給付金や手術給付金を受け取ることができなかったというご相談者さん。月額1万円の保険料を支払っていましたが、加入していた保険が貯蓄目的の外貨建て保険と、掛け捨ての死亡保険だったため、医療への備えができていなかったからでした。

20代のご夫婦でしたら、入院日額5000円の終身医療保険(終身払い)であれば、一人当たり月額保険料が1000円台前半から加入できます。いずれ出産も考えているのであれば、奥さまは女性疾病特約をつけておくと、妊娠中や出産時のリスクにも手厚く備えられます。

ただし、ご主人はつい最近、入院・手術をしたばかりですね。その場合、保険への加入はやや難しくなります。保険会社によっても異なりますが、医療保険の告知書では5年以内の入院や手術については告知を必要とする場合が多く、加入できても部位不担保や特定疾病不担保、保険料割増、保障削減などの特別条件がつく可能性があります。告知基準を緩めた「引き受け基準緩和型医療保険」と合わせて、検討してみましょう。

加入中の外貨建て保険はどうするか?

加入中の外貨建て保険について、「中途解約したほうがいいのか?」というご質問がありました。内容を詳しく拝見していないので何とも言えませんが、為替リスクや返戻率の説明を受けたうえで、貯蓄よりもメリットがあると納得して加入したのでしたら、慌てて解約する必要はないと思います。

今回のコロナショックで、アメリカはゼロ金利を発表しました。加入時には日本よりも高金利ということで、外貨建て保険を選ばれたと思いますが、アメリカのゼロ金利政策により、今後は外貨建て保険でも高金利のメリットを得にくくなります。外貨建て保険は加入時の金利が一定期間継続するので、そのまま保有されるといいでしょう。

また今後、円高傾向が進めば円ベースの支払い保険料はいままでよりも安くなります。

貯蓄は目的別に色分けし、突発的な支出に対応できるお金も確保

現在、ご相談者さんの家庭は、手取り月収46万円に対して、毎月の支出は、奨学金返済3万円も含めて32.3万円、収入の約7割に支出を抑えています。毎月の積立貯蓄・積立投資は12.3万円で、月収の27%をしっかりと貯めています。

支出のなかでは、食費8万円がふたりにしてはやや高めですが、そこについては、自分たちでも気が付いて、「二人の楽しみの外食は月に1回程度にしよう」とお二人で決めたそうですし、そのほかには大きな無駄は見当たりません。

「家計に余剰金がない」とおっしゃる通り、毎月の収入から積立でしっかりと貯めているうえ、ボーナスも7割を貯蓄しているので、暮らしにゆるみがありません。将来のために貯める貯蓄と、何かあったら取り崩してもいい貯蓄をあらかじめ色分けしておくと、今回の入院のように何かがあった時に、心苦しい思いをしないですみます。

急に家電が壊れたり、冠婚葬祭に招かれたり、暮らしていると突発的な出費はいろいろあるものです。「海外旅行にも年に1回は行きたい」ということなので、ボーナスからの貯蓄は5割程度に減らして、残りの5割を海外旅行費と予備資金に充ててはいかがでしょうか。

定額コストが差し引かれるiDeCo、増額の検討を

毎月12.3万円を積立していますが、内訳はどのように決めたのでしょうか? まだ結婚したばかりで貯蓄残高が少ないこと、将来的にマイホームを購入したいことから、預貯金の割合が多めなのはいいと思います。気になったのは、iDeCoとつみたてNISAの割合です。

<毎月の貯蓄額:12.3万円>
夫:定期3万円、つみたてNISA3.3万円、貯蓄保険1万円、iDeCo0.5万円
妻:定期4万円、iDeCo0.5万円

iDeCoに拠出するには、拠出額にかかわらず定額でコストがかかります。国民年金基金連合会に105円、事務委託先金融機関に66円が必ずかかりますし、多くの場合、運営管理機関である金融機関にも数百円程度かかります(無料の場合もあります)。

いくら拠出しても定額が差し引かれてしまうので、iDeCoをやるなら、拠出可能な枠をめいっぱい使って、可能な限りの所得控除のメリットを使いたいところです。

公務員であるご主人の場合、拠出可能額は1万2000円が上限です。派遣社員である奥さまは、もう少し限度額が高くなる可能性がありますね。老後資金が目的で、途中で解約しないと考えているお金なら、iDeCoを増額して、その分、つみたてNISAを減額しましょう。

© 株式会社マネーフォワード