新型『フィアット・ティーポTCR』が2年の開発熟成期間を経て2020年登場へ

 イタリアに拠点を置くプライベートチームであるTecnodom Sportは、2018年に開発をアナウンスしていた新型『フィアット・ティーポTCR』を改めて公開すると同時に、トラックデビューに向けた計画をアナウンス。2年間の開発熟成期間を経て、この2020年のレース投入を予定している。

 当初の計画ではTCRのリージョン・ホモロゲーションを取得して2018年にもTCRイタリア・シリーズに登場する予定だった『フィアット・ティーポTCR』は、チームが直前になって非公開の開発作業を続行する判断を下したため、レースウイークのグリッドに並ぶ姿を見ることはできないままだった。

 その後、ボディワーク、サスペンション、そしてエンジンなど主要機関のほぼ全域にわたるアップグレードを施し、2年前に発表されたモデルから大幅な変更を経たマシンだが、チームとしてもその戦闘力を図る機会を「早期に得たい」と望んでいる。

 ただし、デビュー戦の前にはTCR規定マシン全車に課されるBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)テストを受ける必要があり、さらには全世界で進行中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの状況が緩和され、レースカレンダーが実施される環境まで衛生状態が回復するのを待つ必要がある。

「フィアット・ティーポTCRは完全に具現化され、こうして今ここにある。すでに、どのTCRチャンピオンシップにも参加できる品質を備えているんだ」と語るのは、開発ドライバーとしてプロジェクトに参加しているケビン・ジャコン。

2018年にもTCRイタリア・シリーズに登場する予定だった『フィアット・ティーポTCR』と、テスターを担当したケビン・ジャコン(左)
ボディワーク、サスペンション、そしてエンジンなど主要機関のほぼ全域にわたるアップグレードが施されたという

「このクルマにとって実際のターニングポイントは、アウディスポーツで働いていたエンジニアのマッシモ・デルプレーテの助けを借りたことだ。目標は競争力があり、スピードと信頼性を両立したマシンを作り上げることだったから、プロジェクト全体が完全に見直されたんだ」と続けるジャコン。

「今やこのクルマは発表時点から何もかもが刷新され、ステアリングホイールに至るまで完全な新作だ。パッケージ全体が修正を受け、これで上手くいくはずだと確信しているよ」

「公式のホモロゲーション認証はTCRの技術部門に委ねられるから、エンジン・ダイノでテストを受けるためにマシンを運び、風洞にかけてBoPを調整するプロセスを経て、TCR公式承認を受ける適切なタイミングを待つ必要がある」

 その行程を経たのちに、チームはこの2020年シーズンに向けWTCR世界ツーリングカー・カップ数戦へのワイルドカード枠エントリーや、TCRヨーロッパ・シリーズ、TCRイタリア・シリーズへの参戦計画を描いていた。

「僕らの計画はTCRヨーロッパとTCRイタリアに参戦することだったが、どうなるかは様子を見てみよう。さらなる夢として、僕らのホームに近いWTCRの2戦で参戦登録をすることも考えていたけど、状況を考えれば当分は待機の判断になるだろう。だから今は、TCRの公式承認を得ることだけにフォーカスしている」

チームはWTCRワイルドカード枠や、TCRヨーロッパ、TCRイタリアへの参戦計画を描いていた
今後はエンジン・ダイノでテストや、風洞にかけてBoPを調整するプロセスが必須となる

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