緊急事態宣言 観光業「仕方ない」 島の渡航自粛、不安も

 この島に感染者が出たら-。都市部と比べると高齢化率が高く、医療体制も万全とはいえない離島で新型コロナウイルスへの警戒感が高まる中、県は17日、県内外に向け離島への渡航自粛を要請した。リスク回避につながると安堵(あんど)する島民は少なくないが、旅行客など“外需”に頼る観光関係者には「納得」と「不安」が交錯している。
 「市民から、五島への入り込みを抑えてほしいとの声がたくさん寄せられていた」。17日の会見で五島市としても来島自粛を求めた野口市太郎市長はそう明かした。同じ離島で、既に自粛を呼び掛けていた北松小値賀町などよりも遅い表明。「医療体制も異なり比較は難しい。観光で『飯を食って』いる島で、厳しい部分もあった」と釈明した。
 一方、観光関係者は複雑だ。同市の旅館経営者は「県外客でも断れない。感染者が出た場合の宿や従業員への風評被害も怖かった」と心中を吐露。「(客が来ず)自分の首を絞めることになるが、自粛要請は仕方ない」と言い聞かせるように語った。
 新上五島町観光物産協会の江原正和事務局長(42)も「ゴールデンウイークの時機を失うのは大きな痛手」と深刻に受け止めつつ、「(今の時期を)自粛後に何ができるか考える時間にしたい」と気持ちを切り替える。
 日韓関係悪化の影響と合わせて、新型コロナの“ダブルパンチ”を受ける対馬市。対馬観光物産協会の江口栄会長(65)は国民一律10万円の給付金に言及し、「島内人口は約3万人で、30億円規模の資金が投入される。福岡や通販に流れないよう、行政と連携し島内経済が回る工夫をしたい」と力を込めた。
 各離島には、感染者の多い都市部から避難する“コロナ疎開”への不安も。壱岐市郷ノ浦町の会社役員、横山太三さん(47)は「東京と神奈川にいる2人の子には帰るのを我慢してほしいと伝えた。とにかく今は自粛するしかない」と話した。

 


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