結婚前に浮かび上がったお金の問題、両親の無計画な住宅ローンに不安

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、1年後に結婚を控えている中、次々とお金の問題が見つかり不安になっているという32歳の女性。貯蓄の少ない親が抱える住宅ローン、義母への仕送り、結婚後は出産し子育てできるのか…。不安を解消するには何から手をつけれたらいいのでしょうか。FPの秋山芳生氏がお答えします。

約1年後に結婚を予定しており、家族や将来のマネープランを真剣に考える機会が増えたのですが、今まで気がつかなかったお金の問題が次から次へと見つかり、とても不安な状況です。

まず1つ目の大きな不安が、親の住宅ローンについてです。現在両親ともに67歳ですが、住宅ローンが10年以上残っています(79歳まで)。月々の支払いは、管理費や固定資産税を含めて約16万円。現在、父親は長年勤めていた会社で働かせてもらっており、年齢の割には多めの給料をいただけているのでローンを支払えていますが、いつ解雇されるかもわからず、健康面で何かあって働けなくなってしまった場合、ローンの支払いがかなり厳しい状況になります。

貯蓄も現在80万円ほどしかないようで、何かあった場合、一瞬でなくなってしまうことは想像に難くありません。65歳から年金をもらっており、現在の収入であれば月15万円ほどは貯蓄に回せるということなので、今のうちにできるだけ貯めていこうと家族で一致団結しましたが、将来父親の仕事がなくなってしまったらと思うとかなり不安です。もしローンの支払いが困難になった場合は、私の姉と兄を含めた3人でどうにか助けていくしかないと覚悟は決めています。

2つ目の不安は、結婚後のお金についてです。結婚相手の収入は手取り月25万円ほどでボーナスはありません。そして貯蓄も30万円ほどしかないようです。私の貯蓄も50万円ほどしかありません。これからの1年間で100万円を目標に貯めるつもりですが、将来子どもを出産するまでに費用を準備できるのかとても不安です。

また、結婚相手のお父様が昨年亡くなり、現在お母様が実家(賃貸戸建)で一人暮らしをしているのですが、お父様の治療費などで貯金がほとんどなく、結婚相手が月5万円ほど仕送りをしているようです。お母様は正社員で働かれていて、お給料はそれなりにもらっているとのことなので、仕送りを減らせるのであれば減らしてもらい、できるだけ貯蓄に回して欲しいと掛け合っているところです。しかし、65歳の定年後、年金だけで足りるのかは不明で、もし生活が困難ということになれば、支援が必要になるだろうと考えています(ちなみに結婚相手は一人息子なので助け合える兄弟はいません)。

結婚後、できれば私も正社員として働き、収入を増やし、もちろん節約もして、できる限りの貯蓄をしていく覚悟ですが、自分と結婚相手両方の親の支援をしながら、自分たちの貯蓄も少ない中、子どもを産んで育てていくことは可能なのかとても悩んでいます。もし困難なのであれば泣く泣く子どもを諦めることも考えるべきなのかなとも考えています。

近い将来のお金の問題がありすぎて、どこからどのように考えていけばいいのかわかりません。少しでもプロの方のご意見をいただければ幸いです。

<相談者プロフィール>

・女性、32歳、未婚

・職業:派遣社員

・居住形態:実家で親と同居

・毎月の世帯の手取り金額:70万円

父親:給与30万円・年金10万円

母親:給与8万円・年金4万円

相談者:給与18万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:なし

・毎月の世帯の支出目安:42万円

【支出の内訳】

・住居費:16万円(管理費、固定資産税含む)

・食費:4万円

・水道光熱費:2.5万円

・教育費:なし

・保険料:4.6万円

・通信費:3万円

・車両費:なし

・お小遣い:8万円

・ペット代:2.5万円

・その他:1.4万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:10万円(両親は18万円)

・ボーナスからの貯蓄額:なし

・現在の貯蓄総額:50万円(両親は80万円)

・現在の投資総額:なし

・現在の負債総額:1650万円(実家の住宅ローン)


秋山:ご相談ありがとうございます。ファイナンシャルプランナーの秋山芳生です。

お金というのは色分けしづらいものなので、様々なライフイベントを通して考える必要がありますよね。家族のケアや住宅の不安、子育ての不安や自分の老後不安も、お金という面で直結していきます。

とはいえ、まず過度に将来に対して不安にならないことが大事です。

わからないことは不安になりますが、わからないではなくて「知らない」だけなので、意外と一つ一つのことを知ると解決できるものです。わからないとなると思考が停止して、不安な気持ちで焦ってしまったり、具体的な対策が打ちづらくなるので注意してください。

また、「振り続ける雨も、解決できない問題も、無い」と思って向き合うと視界が開けてくることは多いです。未来に対して不安におびえるのではなく、深呼吸しながら「今」できることに向き合っていくと解決していけると思います。それでは一つ一つ整理していきましょう。

無計画な住宅ローン、住み替えを視野に入れて

ご相談者様は現在、32歳でご両親と同居なされているのですね。

現在は、ご両親にも仕事があり、家族の手取り収入は70万円あるので、そこから16万円の住宅費が支払えているが、ご両親が仕事に就けなくなった場合と、ご相談者様が嫁いだ場合に現在の住宅費が払えるかということが1つ目の課題ですね。

住宅費は、教育費や老後費用と合わせて人生の中の“3大支出”にも挙げられる大きな費用です。住宅ローンを組んだときの状況がわからないですが、これは明らかに無計画な住宅ローンだと思います。金融機関は最終返済が80歳になるまで貸してくれます。「貸りられる」ということと、「返済できる」ということは違うので注意しないといけません。

この状況から対策を考えていくと、住み替えることも視野にいれて検討してただければと思います。

売却し住み替えをするなら、判断基準は「損が出ない」

3人のご兄弟も一緒に住んでいたときに、間取りの広い家が必要になり住宅ローンを組まれたのだと思います。現在、上の2人のご兄弟は既に別の家で暮らしており、現在は3人住まいですね。そして、ご相談者様が家を出ると、ご両親2人での暮らしになります。5人と2人では必要な間取りはまったく変わってきますので、売却により住み替えるということ第一に考えられたらと思います。ただし、新型コロナウイルスの影響で市況が悪くなってきていますので買い手が見つかりづらい可能性があることはご留意ください。

売却を検討される際は、複数の不動産仲介業者の相見積りを取られるとよいと思います。1社だけの情報だと、情報をコントロールされて売却価格を相場より下げて叩き売るようなことがあり得るので、初めての売却の場合は情報を集める上でも「専任媒介契約」ではなく、「一般媒介契約」で情報を集められたらいかがかと思います。その上で、動きの良い不動産仲介会社がいれば専任媒介契約を結ぶなどの方法もあります。

最終的に売却をするかどうかは、販売価格と住宅ローン残債を比較して、「損が出ない」ということを確認ください。その際、手数料なども含めて損が出ないかを確認いただけるとよいと思います。

希望価格で売れた場合は、売却価格とローン残債との差分が利益になります。そして、もし希望価格で売ることができなければ、今の家に住み続ける覚悟を持っていただければと思います。

これからも住み続けるなら「住宅ローンの見直し」を

そもそも、馴染みのある家から出るのは精神的にも負荷がかかることがあります。どうしても現在の家に住みたい場合は住宅ローンの見直しを検討ください。

民間銀行の場合、ご年齢を考えてもローンの組み直しはなかなか難しいのではないかと思います。一方、ローンの組み方を拝見すると、おそらく固定金利で借りられていて、フラット35である可能性が高いと考えられます。フラット35であれば、借り換えが70歳まで可能になるので相談されてみてはいかがでしょうか。

返済の残年数が12年で、残債が1650万円。現在の住宅費16万円の内訳を「住宅ローン返済13万円」「管理費と修繕費2万円」「固定資産税1万円(年間12万円)」と分解して見てみると、おそらく金利は2%前後ということになります。

同じくフラット35で借り換えれば、金利を1.23%前後に下げられる可能性があります。これだけで、総返済額は80万円ほど安くなりますので確認をしてみてください。通常、金融機関での金利交渉では、他社との比較を提示しないと応じてくれることは少ないのですが、フラット35の借り換えなら対応してもらえることがあるようです。

ただし、借り換えには手数料が発生します。この際「フラット35の手数料はどこも同じ」と思わないで、複数の金融機関の手数料を比べていただければと幸いです。筆者が4月時点で調べた範囲では、0.99%~2.2%%まで差がありました。

1650万円の借り換えにおいては、手数料が16.3万~36.3万円ということになるので、20万円も差が出ますね。安い手数料で借り換えられれば、80万円から16.3万円を差し引いた、63.7万円が浮くことになります。その他の手数料や印紙代などが発生する場合もあるので、金融機関に相談してみてください。

それでも足りない分は、ご兄弟が育ててもらった家ということを胸に、力を合わせて住宅ローンの返済に取り組んでいただければと思います。ただし、将来的に親御様が亡くなられ、売却して資産分割する場合に、住宅ローンの負担が異なっていると分配で揉めることになりかねないので慎重に相談して決めてください。

結婚出産にかかる費用は、助成金などを活用すれば問題なし

続いて、ご自身の結婚とご出産についてですが、「パートナーと力を合わせる」ということを意識すれば問題ないと思います。

結婚自体は、婚姻届を出せば成立します。どこまでお金をかけて結婚式や結婚指輪、新婚旅行、新居などを考えるかによりますが、ここは現実的に考えて、二人の家計でできる範囲におさえていけばよいと思います。

最低限に絞れば、それほど負担なくできるでしょう。最近では身内だけの食事会だけなどのシンプルな式にしているカップルも多くいますし、披露宴の代わりに会費制のパーティにしているところも多くあります。

また、出産費用関連についてですが、現在派遣社員で働いていると「産休や育休を取れるのかな」と不安に思われると思います。まず、法律により出産予定日の6週間前(多胎出産の場合は14週間前)から取得できるので、派遣元の会社の定めに従って事前に手続きをしてください。これは派遣先ではなく、所属している派遣会社に確認をしてみてください。

また育休についてですが、以下の条件をクリアしていると取れることが多いようです。

(1)同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること
(2)子が1歳6ヵ月に達する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでないこと

こちらも、派遣会社に確認していただければと思います。

産休中は会社からではなく、健康保険組合から「出産手当金」として、出産日以前6週間から出産日後8週間までの間、欠勤1日について賃金の3分の2相当額が支給されます。また、健康保険、厚生年金保険といった社会保険料が免除されます。これは会社または健康保険組合への届け出が必要となります。

育休中は雇用保険から「育児休業給付金」として、休業開始時の賃金の2分の1相当額が支給されます。産休と同様に社会保険料が免除されるので合わせて事前に確認をするようにしましょう。

出産にかかる費用ですが、子ども一人の出産につき健康保険組合から42万円の出産育児一時金が出ます。また、パートナーの方のお勤め先の会社の健康保険組合からもお祝い金がでることがあるので、調べてみるとよいでしょう。帝王切開や、入院の際に個室を選択したり、無痛分娩や和痛分娩などにすると金額が上がりますが、通常の普通分娩の出産であれば42万円前後で収まることが多いです。

また、妊婦検診についても、お住いの市区町村から検診にかかる費用負担がないようにチケットという形でサポートがありますので、お住まいの市区町村に問い合わせてみるとよいでしょう。

出産は過度に赤ちゃんグッズを買いそろえたり、お祝い事にお金を使い過ぎなければ意外と助成金の中でうまく収まることがあります。

家計はオープンに、夫婦で共有を

結婚後は、お二人の家庭と、それぞれの親御さんのケアもしていくことを想定されていますね。どちらかの親と同居することができると家賃負担が減らせる可能性がありますよね。

また、ここで大事になってくるのが「家計のオープン化」です。それぞれに収入があるので「私のお金は私のもの」と線を引いていくと、力を合わせて家計を作っていくことが難しくなります。

これは、今まであまり貯蓄ができなかったパートナーのお金の管理を野放しにするのは危険だから監視した方がよいということではありません。あくまでパートナーシップとして力を合わせていくことが大事ということです。

最近は共働きの夫婦が増えています。家計を会社の経営に置き換えて考えたときに、「社長(ご主人)と副社長(奥様)がそれぞれに事業を持っていて、売上や支出がいくらだったかを共有していない。そしてトータルの資産も把握できていない」という状態に近いことがよくあります。

すでに、将来について資産や家計の概要を共有できていることは素晴らしいと思いますので、ぜひ内訳もオープンにして強い家計を作っていただければと思います。お力を合わせていけば、金銭的な課題には立ち向かえるのではないかと思います。

支出は保険料と通信費の見直しを

支出を見ると、現在の家計の改善ポイントは保険料と通信費です。保険は終身タイプの積立型保険に入っているのでしょうか。この解約返戻金はいつ払い出す予定でしょうか。保険の内容にもよりますが、満期を迎えて現金化できるようであれば、それを資産としてカウントしておいてください。

また、もしご相談者様が積立型保険に入っているのであれば解約して現金に換え、流動性の高い状態をキープされるか、確定拠出年金などの税制優遇のある制度で貯められるとよいと思います。積立型保険は投資信託などに比べて利回りがよくないので、老後の資金を考える上では確定拠出年金を考えていただけるとよいでしょう。

また通信費は、携帯電話とネット回線の費用だと思いますが、格安スマホや格安SIMを選択することで金額を抑えることができると思います。仮に8000円の携帯電話料金を3000円に減らすことができれば、5000円のプラスになります。年間で6万円、10年で60万円、30年で180万円の差が生まれますし、ご家族分となるとさらに大きな差になります。


結論ですが、支出改善は固定費から改善すると効果が長く続くので、住宅費、保険、通信費などの削減から検討してみてください。知っているだけでは効果も変化も生まれません。実践してみてください。変化の積み重ねでしか、未来は変えられません。

未来を「わからない」と悩むのではなく、まず「知ること」が大事です。「知ったことを実行すること。今できることを積み上げること」で変化が生まれ、未来が明るく開けてくると思いますので、頑張っていきましょう!

以上、ご参考になれば幸いです。

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