日本で成功する助っ人の共通点は意外なところにも? OP戦と年間成績を比較する【後編】

楽天のジャバリ・ブラッシュ(左)とソフトバンクのジュリスベル・グラシアル【写真:荒川祐史、藤浦一都】

後編では、オープン戦で好調だった選手たちのその後を振り返る

NPB初挑戦の外国人選手たちにとって、シーズンが始まるまでの期間は、日本球界に慣れるという意味でも重要なものとなってくる。その中の一要素であるオープン戦での成績と、シーズンでの成績がリンクする場合とそうでない場合はどちらも数多く存在するが、その内訳はどのようなものとなっているのだろうか。

前編では直近5年間のオープン戦で結果を残せなかった新助っ人の中から、シーズンで巻き返して活躍した選手と、残念ながら最後まで日本球界に適応できなかった選手を紹介したが、今回は、同様の期間においてオープン戦で活躍を見せた選手たちのその後と、来日1年目のシーズンにオープン戦に出場しなかった選手たちについて紹介していきたい。

なお、今回の記事では「投手:防御率3点台以下、野手:打率.270以上、あるいは4本塁打以上」という条件を満たした選手をオープン戦で活躍したと定義し、同様に「投手:防御率4点台以上、野手:打率.240未満」の選手をオープン戦で活躍できなかったと定義している。

同様に、レギュラーシーズンでの活躍の基準は、基本的には「投手:シーズン9勝以上、あるいは30試合以上に登板して防御率3点台以下、野手:打率.270以上、あるいは30本塁打以上」を満たした選手を活躍できたとし、「投手:防御率4点台以上、野手:打率.230以下」の選手を活躍しなかったとして定義する。

オープン戦の好調を開幕ダッシュにつなげられなかった選手もいたが…

まず、オープン戦の時点で一定以上の成績を残したうえで、シーズンにおいてもそのまま活躍した選手たちを紹介していきたい。

2015年
エスメルリング・バスケス投手(西武)
オープン戦:7試合 0勝0敗 6.1回 3奪三振 防御率1.42
年間成績:34試合 3勝1敗 34.2回 21奪三振 防御率3.63

イ・デウン投手(ロッテ)
オープン戦:4試合 0勝0敗1セーブ 13回 10奪三振 防御率0.00
年間成績:37試合 9勝9敗 119.2回 106奪三振 防御率3.84

2016年
クリス・マーティン投手(日本ハム)
オープン戦:6試合 0勝0敗 6回 6奪三振 防御率3.00
年間成績:52試合 2勝0敗19ホールド21セーブ 50.2回 57奪三振 防御率1.07

2017年
ブライアン・シュリッター投手(西武)
オープン戦:6試合 1勝1敗 5.2回 2奪三振 防御率1.59
年間成績:64試合 1勝5敗32ホールド 63.2回 23奪三振 防御率2.83

ステフェン・ロメロ外野手(オリックス)
オープン戦:13試合 38打数12安打 1本塁打5打点 打率.316 出塁率.381
年間成績:103試合 390打数107安打 26本塁打66打点 打率.274 出塁率.330

2018年
マイケル・トンキン投手(日本ハム)
オープン戦:6試合 0勝0敗 6回 4奪三振 防御率0.00
年間成績:53試合 4勝4敗20ホールド12セーブ 51回 33奪三振 防御率3.71

アンドリュー・アルバース投手(オリックス)
オープン戦:2試合 0勝0敗 9.2回 10奪三振 防御率2.79
年間成績:19試合 9勝2敗 114回 83奪三振 防御率3.08

ジュリスベル・グラシアル内野手(ソフトバンク)
オープン戦:3試合 11打数3安打 0本塁打0打点 打率.273 出塁率.333
年間成績:54試合 185打数54安打 9本塁打30打点 打率.292 出塁率.347

2019年
ジャバリ・ブラッシュ外野手(楽天)
オープン戦:12試合 40打数14安打 3本塁打15打点 打率.350 出塁率.381
年間成績:128試合 426打数111安打 33本塁打95打点 打率.261 出塁率.397

ブラッシュはOP戦好調もシーズン途中から頭角を現す

ブラッシュはオープン戦では好調な打撃を見せていたが、シーズンでは開幕からしばらく不振に陥っていた。また、グラシアルは外国人枠の影響もあり、なかなか1軍での出場機会が得られなかった。しかし、それぞれシーズン途中から1軍の舞台で活躍を見せ始め、最終的にはチームに欠かせない戦力となっている。

その一方で、イ・デウン、シュリッター、ロメロ、アルバースといった面々は、開幕から好調を維持してチームにとって貴重な戦力となっている。比率としては投手6名、打者3名と全く同じとなっており、前編で紹介した、オープン戦では不振だったがシーズンでは活躍した選手(投手7名、野手1名)とは好対照となっているのも面白い。

なお、2015年に来日したゼラス・ウィーラー内野手は、打率.255、14本塁打と今回の「活躍した選手」の定義から外れたため図表には含まれていないが、オープン戦で打率.286と活躍を見せながら、シーズンでは中盤戦まで不振にあえいだ。だが、9月と10月だけで8本塁打をマークし、この期間の打率も.330を超えるなど終盤戦に目覚ましい打棒を披露。翌年以降は楽天の主砲として活躍を続けており、この項の選手たちに近い経歴と言えそうだ。

オープン戦で活躍するも、シーズンで苦戦した選手は数多い

次に、オープン戦では好成績を残したものの、残念ながらレギュラーシーズンでは同様の活躍はできなかった選手たちについても紹介したい。

2015年
ジェレミー・ハーミッダ外野手(日本ハム)
オープン戦:12試合 33打数10安打 2本塁打6打点 打率.303 出塁率.439
年間成績:50試合 166打数35安打 1本塁打18打点 打率.211 出塁率.318

2016年
ジョニー・ゴームズ外野手(楽天)
オープン戦:13試合 35打数8安打 4本塁打8打点 打率.229 出塁率.372
年間成績:18試合 65打数11安打 1本塁打7打点 打率.169 出塁率.280

アンディ・バンヘッケン投手(西武)
オープン戦:2試合 0勝0敗 10回 6奪三振 防御率2.70
年間成績:10試合 0勝4敗 45.2回 35奪三振 防御率6.31

C.C.リー投手(西武)
オープン戦:4試合 1勝0敗 5回 3奪三振 防御率1.80
年間成績:18試合 0勝0敗1ホールド 16.2回 13奪三振 防御率6.48

ヤマイコ・ナバーロ内野手(ロッテ)
オープン戦:2試合 5打数4安打 2本塁打3打点 打率.800 出塁率.833
年間成績:82試合 286打数62安打 10本塁打44打点 打率.217 出塁率.329

エリック・コーディエ投手(オリックス)
オープン戦:5試合 0勝0敗 5回 2奪三振 防御率0.00
年間成績:13試合 0勝2敗2セーブ 12.1回 14奪三振 防御率7.30

ブライアン・ボグセビック外野手(オリックス)
オープン戦:15試合 40打数12安打 2本塁打4打点 打率.300 出塁率.404
年間成績:60試合 171打数32安打 3本塁打18打点 打率.187 出塁率.280

2017年
フランク・ガルセス投手(西武)
オープン戦:3試合 0勝0敗 9回 1奪三振 防御率2.00
年間成績:18試合 2勝2敗 31回 21奪三振 防御率6.39

マット・ダフィー内野手(ロッテ)
オープン戦:16試合 47打数14安打 4本塁打15打点 打率.298 出塁率.377
年間成績:54試合 164打数33安打 6本塁打18打点 打率.201 出塁率.279

ジミー・パラデス外野手(ロッテ)
オープン戦:17試合 56打数17安打 1本塁打5打点 打率.304 出塁率.344
年間成績:89試合 269打数59安打 10本塁打26打点 打率.219 出塁率.270

フィル・コーク投手(オリックス)
オープン戦:3試合 1勝1敗 18.2回 14奪三振 防御率0.96
年間成績:6試合 2勝3敗 23.2回 16奪三振 防御率4.56

マット・ウエスト投手(オリックス)
オープン戦:1試合 0勝0敗1セーブ 2回 0奪三振 防御率0.00
年間成績:2試合 0勝0敗 2回 0奪三振 防御率4.50

2018年
ファビオ・カスティーヨ投手(西武)
オープン戦:2試合 1勝0敗 9回 7奪三振 防御率2.00
年間成績:20試合 7勝4敗1ホールド3セーブ 74.1回 51奪三振 防御率4.48

タナー・シェッパーズ投手(ロッテ)
オープン戦:6試合 0勝0敗 6回 7奪三振 防御率1.50
年間成績:25試合 1勝3敗9ホールド1セーブ 37.2回 34奪三振 防御率4.54

2019年
ジョニー・バーベイト投手(日本ハム)
オープン戦:2試合 0勝0敗 6回 4奪三振 防御率3.00
年間成績:15試合 2勝2敗1ホールド 32回 22奪三振 防御率5.63

ジャスティン・ハンコック投手(日本ハム)
オープン戦:4試合 0勝0敗 4回 6奪三振 防御率0.00
年間成績:8試合 0勝1敗2ホールド2セーブ 7回 8奪三振 防御率9.00

ジョーイ・メネセス内野手(オリックス)
オープン戦:13試合 38打数11安打 1本塁打4打点 打率.289 出塁率.357
年間成績:29試合 102打数21安打 4本塁打14打点 打率.206 出塁率.288

レッドソックスとロイヤルズで世界一に貢献した大物助っ人のゴームズはOP戦で長打を発揮したが…

ハーミッダ、ボグセビック、ダフィー、パラデスのように、オープン戦では打率.300前後の成績を残した選手も少なくなかったが、それぞれレギュラーシーズンでは同様の打撃は見せられず。また、打数は少ないながら2試合で2本塁打3打点、打率.800という驚異的な成績を残したナバーロも、開幕後は期待通りの成績は残せなかった。

また、レッドソックスとロイヤルズで世界一に貢献した大物助っ人のゴームズは、オープン戦では打率.229ながら13試合で4本塁打8打点と持ち前のパワーを発揮したが、シーズンでは本来の実力を発揮できないまま5月上旬に退団と、短い在籍期間に終わってしまった。

投手では、2017年のオープン戦でパ・リーグの投手の中では最も優れた防御率を記録したコークや、少なくない数の登板で無失点リリーフを見せていたコーディエとハンコックも、シーズンに入ると一転して打ち込まれてしまった。

数としては合計17名とかなりの多さだったが、内訳としては2016年が6名、2017年が5名と、この2年間の人数がとりわけ多くなっていた。一方、2015年は1名、2018年は2名、2019年は3名と数が少ないシーズンもあり、年によってその数にはばらつきがあった。直近2年間における数が少ないのは明るい兆候とも言え、今季もオープン戦で活躍した選手たちには、シーズンでも同様の活躍を期待したいところだ。

オープン戦未出場の選手たちには不思議なジンクスが

最後に、支配下選手として獲得された外国人選手の中で、1年目のオープン戦での出場がなかった選手たちを紹介したい。

2015年
アンソニー・セラテリ内野手(西武)
年間成績:33試合 60打数11安打 0本塁打6打点 打率.183 出塁率.329

リック・バンデンハーク投手(ソフトバンク)
年間成績:15試合 9勝0敗 93回 120奪三振 防御率2.52

2016年
ジェイク・ブリガム投手(楽天)
年間成績:11試合 0勝3敗1ホールド 34.1回 27奪三振 防御率5.24

パット・ミッシュ投手(オリックス)
年間成績:3試合 0勝1敗 5.1回 2奪三振 防御率8.44

2018年
オコエ・ディクソン外野手(楽天)
年間成績:22試合 57打数10安打 1本塁打3打点 打率.175 出塁率.217

2019年
ジョシュ・レイビン投手(ロッテ)
年間成績:2試合 0勝0敗 1.2回 1奪三振 防御率27.00

オープン戦に出場していなかった選手がシーズンで苦戦している傾向は一種のジンクスか。今回取り上げたオープン戦未出場の選手たちには、故障や病気によってオープン戦に出場できなかったという事情があった。そのため、調整が思うように進まず、オープン戦で日本の投手に対する経験が積めないことが、この「ジンクス」が生まれる要因の一つになったとも考えられる。

そんな中で、バンデンハークは外国人登録枠の関係で初登板が6月までずれ込みはしたが、その後は無傷の9連勝と圧巻の投球を見せ、チームの日本一に大きく貢献。そのまま主力投手の座をつかんだ活躍は特筆ものだ。残念ながら来日5年目となった2019年は故障に苦しめられてわずか3試合の登板に終わったが、ジンクスを打ち破ったオランダ出身の好投手が再び怪我を乗り越え、パ・リーグのマウンドで活躍する姿が見たいところだ。

総合人数が飛びぬけて多かったケースは?

総合的な人数に目を向けてみると、以下のような数字となった。

オープン戦で活躍→公式戦も活躍:9名
オープン戦で活躍→公式戦は不振:17名
オープン戦で不振→公式戦は活躍:8名
オープン戦で不振→公式戦も不振:9名

以上のように、オープン戦で一定の活躍を見せながらシーズンでは不振に陥ってしまった例が飛びぬけて多くなっている。オープン戦とレギュラーシーズンではバッテリーの配球が変化することはよくあるものだが、オープン戦で活躍した新助っ人がシーズンでも活躍する可能性は割合にすると20.9%と、期待値としては約5分の1となっている。

また、それ以外の3つのケースはいずれもほぼ同数で、全体に占める割合の面でも極めて近いと言える。オープン戦で不振だった選手がシーズンで活躍するか否かは、今回採り上げた期間をサンプルとする限りではほぼ五分五分であり、期待の新戦力が不振だったからといって、過度に悲観する必要性は低いのかもしれない。

今回取り上げたマーティンとバースは帰国後、MLBの舞台においてもリリーフとして存在感を示した。また、日本では本領を発揮できなかったルブランも、2018年にマリナーズで9勝を挙げる活躍を見せており、米球界復帰後に大活躍を見せる助っ人は少なくない。

そんなジャパニーズ・ドリームを体現する選手たちの増加もあり、近年のNPBを取り巻く助っ人事情は徐々に変化しつつある。今季はMLB通算282本塁打の実績を持つ現役メジャーリーガーのアダム・ジョーンズ外野手(オリックス)という超大物をはじめ、マット・ムーア投手(ソフトバンク)、ジャスティン・ボーア内野手(阪神)、アルシデス・エスコバー内野手(ヤクルト)、ヘラルド・パーラ外野手(巨人)といった、近年のMLBにおいてチームの主力を張っていた実績十分な新助っ人が多く来日している。

そういう意味でも、今季新たに日本球界に挑戦を決めた助っ人たちがどのような成績を残すのかは、2020年のシーズンにおける非常に楽しみな要素の一つとなってきそうだ。その活躍ぶりを予想するにあたって、これまで紹介したオープン戦の成績とシーズン成績の例は一つの参考となるかもしれない。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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