読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、夫婦合わせて手取り月50万円もあるのに貯金がまったくないという40代の主婦。住宅ローンを1ヵ月分滞納している状況だといいますが、家計改善の余地はあるのでしょうか。FPの渡邊裕介氏がお答えします。
夫婦で合わせて月50万円の収入がありますが、貯金がまったくありません。これといって贅沢をしているつもりもないのですが……。子どもの進学、夫婦の老後を考えると将来が不安です。今すぐ貯蓄したいのですが、何から手をつけていいかわかりません。本当に困っています。
住宅ローンの残債が3500万円あります。借入額は3800万円、頭金なしで購入しました。現在1ヵ月分滞納しながら返済している状況です。車は2台所有していて、250万円のローン(金利1.5%)があります。また、夫の勤務先には退職金制度がありません。どうしたらいいでしょうか。
<相談者プロフィール>
・女性、43歳、既婚(夫:50歳、会社員)
・子ども2人:16歳(高3)、14歳(中3)
・職業:パート(フルタイム)
・居住形態:持ち家(戸建て)
・毎月の世帯の手取り金額:50万円
・年間の手取りボーナス額:50万円
・毎月の世帯の支出目安:50万円
【支出の内訳】
・住居費:12万円
・食費:8万円
・水道光熱費:2.5万円
・教育費:4万円
・保険料:3.5万円
・通信費:5万円
・車両費:5.3万円(自動車ローンの返済含む)
・お小遣い:4万円
・その他:5~6万円(突発的な支出や年間でかかる出費など)
【資産状況】
・毎月の貯蓄額:なし
・ボーナスからの貯蓄額:なし
・現在の貯蓄総額:なし
・現在の投資総額:なし
・現在の負債総額:3500万円(住宅ローン)、250万円(自動車ローン)
渡邊:こんにちは。ファイナンシャルプランナーの渡邊です。住宅ローンや教育費がかかる中での今後の生活設計についてのご相談です。
ご相談者は、住宅ローンや自動車ローンを抱えており、現在貯蓄ができていない状況です。手元の貯蓄もないため、不安になるのも無理はありません。早急に家計の改善が必要だと思われます。幸いにも、毎月の手取り収入はたくさんありますので、改善の余地は十分にあります。上手な家計の見直しについてみていきたいと思います。
まずは固定費の見直しから
家計の見直しをする際に、まずは固定費の見直しから検討しましょう。食費などの生活費から見直しがちですが、一時的に減らすことができたとしても、継続が難しく、根本的な解決にならないケースも。一度見直すと、長期的に効果の出る固定費の見直しから考えます。
ご相談者の場合、代表的な固定費は、住居費、生命保険、通信料、自動車ローンです。
<自動車ローン>
まず気になるのが自動車ですが、現在2台保有しており、自動車ローンも抱えています。どうしても仕事で必要だったり、なくては生活できないとかではない限り、せめて1台保有にするべきです。
自動車を保有するだけでも維持費がかかりますし、加えて自動車ローンの支払いもあるのはダブルパンチです。1台売却することで、自動車ローンがすべてなくなるかは分かりませんが、今の家計状況を考えると、2台保有は難しいと思われます。住宅ローンを滞納してまで自動車を保有し続けるのは無理があるでしょう。
車両費に5.3万円はかけすぎです。自動車ローンの返済金額は分かりませんが、自動車ローンと維持費を考えると月々3万円程度は削減できるのではないでしょうか。
<通信費>
次に、通信費を見てみます。お子様も中3と高3と大きいので、全員スマホを持っているのでしょう。
一人当たりの月々のスマホ料金は、一般的には7000円~8000円程度です。端末代によってはそれ以上の方もいるでしょう。その中で、ご相談者家族4人のスマホ料金とインターネット料金の合計で5万円かかっているのは、通信費としては高いように思われます。
格安スマホや格安SIMに変えることで大幅にコスト削減が実現できます。自宅のインターネットと合わせて見直しをすれば、3万円以上は削減できます。格安スマホを活用しなくても、不要なオプションを外したり、実際の利用量に応じたプランへ見直しをするだけでも大幅に改善できる余地があります。
<生命保険>
生命保険の見直しですが、子どもが小さい時に加入してそのまま放置、なんていう家庭も多くあります。
現時点で家族にとって適正な保障内容になっているのかを点検し、合っていないようであれば、解約や減額も含め見直しをすることで、保険料を削減することができるかもしれません。
万が一の時の保障や将来の貯蓄ばかり準備をして、今の生活がままならないようですと、本末転倒になってしまいます。必要な保障かどうかはもちろん、貯蓄性のある保険を活用している場合は、教育費なのか老後なのかなど貯蓄の目的と受け取るタイミングについて確認しておきましょう。
注意点は、保険料を下げたいあまりに、保障を必要以上に削ってしまうことです。手元に貯蓄がないので、何かあった場合の保障も必要です。適正なバランスを考える必要があります。
<住居費>
最後に住居費です。購入時期と現在の借入金利によっては、住宅ローンを借換えることで月々の返済額を減らすことが可能な場合もあります。
本来であれば、家計の見直しの際にまず第一に検討したい項目ではありますが、借り換える金融機関では新たに借入れ審査があるため、ご相談者の場合、現状1ヵ月滞納しながら返済していること、自動車ローンがあることを考えると、そもそも借り換え自体が難しいかもしれません。まずは住居費以外の項目の家計改善を目指しましょう。
<その他の見直し>
これら固定費の見直しをすることで、ご相談者の場合月々6万~7万円ほどの削減は可能なのではないでしょうか。
その上で食費や光熱費、その他の支出なども削減可能か検討します。光熱費も、電気やガスの供給会社を変えたり、契約プランの変更によって基本料金を下げることが可能です。
またジムの利用や趣味にお金を使っている場合、なくても困らないものであればやめる決断も必要です。
家計の見直しはダイエットと同じ、「継続が大事」
家計の見直しは、ダイエットと同じように、「毎回やらなきゃと思って始めるけど、継続できなくて元に戻ってしまう」なんてケースが非常に多いです。大事なのは継続すること。
そのためにも、なぜ家計の見直しが必要なのか、教育費準備や住宅ローンの返済、老後の準備などの経済的な目標と、今の生活との中で優先順位を付け、目的意識を持った家計の見直しを実現していただきたいと思います。
固定費の見直しは、実行するのに手間や時間がかかったりと、取っつきにくい面はありますが、一度削減できればストレスなく継続することができます。ぜひトータル的なライフプランを作成した上で、家計の見直し及び貯蓄計画を進めていただきたいと思います。