店が開けると言うなら… 吉原・現役コンパニオンたちがそれでも出勤する理由――

写真はイメージです。

「『やるの? やらないの?』って、今回ばかりはほんとに腹立たしい!」

同業の友達からの腹立たしげな電話だった。彼女の店もコロナ対策という国からの自粛要請でGW明けまで真面目に休業していたが、GW明けを待つこともなく店側から「政府の自粛延長の発令を受けて、コンパニオン皆様、お客様、社会的責任を重く見て、5月末までの休業……」と知らせが来たそうで、彼女もさもありなんと腹をくくったそうだが……。

そのわずか数日後には「やはり営業再開」と連絡が入り彼女はなんともやりきれない気持ちとなって、私に電話してきたようだ。

「4月末までに提出した5月の出勤予定もお店のホームページから消されたのに、また再提出しなきゃいけないし……」

しかし、彼女の怒りは出勤予定云々では勿論ない。店も政府に最大限協力する姿勢でいたし、コンパニオンたちも自衛策をとりつつ必死に頑張ってきたが、

「何の金銭的保証もなく守るものも守りきれない」

それが店側の「自粛短縮、再開決定」と変更を促したようだ。コンパニオンも限界、店も限界だったのだろう。日頃から表舞台に立てないことを心して、努めて静かに仕事をし、今回も一般からの批判も受けまいと努力してきた結果だけに、コンパニオンとしても切なかったのかもしれない。

「もう安全とは到底思えないけれど、お店が空いたら出勤してしまうのは人情だと思う、確かに生活を考えると……。だからいっそ休みでいてくれたら良かった!」

彼女は考えた末に、月末から出勤することにしたそうだ。まだまだ先の見えない味知の戦いの中、どうするべきなのか? 人生は個人個人の日々の小さな選択の蓄積で出来上がる、故にすべては自己責任とも言えるが、今回のコロナショックは果たして、自己責任だけで片付けられるものなのだろうか?

日陰の身ながら、小さな心を痛めている。(文◎久世素子 吉原某店勤務)

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