”給付金もらえない” 事業者支給要件に差 所在地か居住地か

事業者向け緊急経営支援給付金の申請を受け付けている諫早市の臨時窓口=諫早市役所

 事業所(店舗)の所在地か、事業者の居住地(住民登録)か-。新型コロナウイルス感染拡大に伴う県内各自治体の事業者向け給付金の支給要件を巡り、制度設計の「抜け穴」を指摘する声が上がっている。店舗と居住地の自治体が異なる個人事業者の中には救済されないケースがあり、「居住地で線引きがされるのは不平等」と不満を募らせている。

 県内21市町のうち、事業所(店舗)の所在を要件とするのが長崎、佐世保両市と西彼長与町など13市町。個人事業者(一部は法人代表も含む)の住民登録が必要なのが諫早、島原半島3市など7市。北松小値賀町は検討中。新上五島町は家賃補助。
 「諫早でも長崎でも申請できないなんて、八方ふさがり」。諫早市中心部でスナックを経営する男性(41)は長崎市に居住するため、諫早市の緊急経営支援給付金の対象外とされた。諫早市は業種を問わないが、市民税を納める住民登録者の支援が目的だからだ。
 男性が長崎市に出向くと「市外の店舗への支援は難しい」と断られ、改善を求める署名をやむなく始めた。長崎市は「地域経済が落ち込む中、市内で営業している事業者(店舗)を応援したい趣旨」と説明する。県外拠点の事業者も多い長崎市の場合、住民登録者を要件にすると、救済の幅が狭くなるという。
 諫早市緊急経済対策室によると、給付金の申請は2日に始まり、14日現在で約700件。約9千事業所・事業者のうち、4500件の申請を想定しているが、出足は鈍い。宮本明雄市長は「このような弊害がある人には救済策を急いで検討する」と述べた。
 島原半島3市は各市にまたがる事業者が多いため、事前に内容を調整して事業者の居住地の自治体が支給することで統一した。南島原市の担当者は「住民登録者ならいずれかで該当するし、重複支給も受給漏れも避けられる」と説明する。東彼波佐見町は「広域的な救済」の観点から「町居住または事業所のある事業者」と規定。町外に事業所のある町民も含むが、他の自治体との重複申請は認めない。
 大村市は4月中旬に始めた飲食業向け補助金で住民登録を要件にしたが、改善を求める声が相次ぎ、第2弾の全業種向け給付金では撤廃。諫早市の別の男性経営者は「制度に“穴”があると気付いたら、(大村市のように)すぐ解決に動かなければ、平等性に欠ける」と指摘する。
 各自治体とも急な制度設計を強いられ、他の自治体の状況を把握しないまま走りだしたのが実情だ。ある自治体の担当者は「急いで制度を作ったが、あらかじめ県内で統一した考え方があったら、混乱も少なかったのではないか。いまさら言っても後の祭りだが」と漏らした。


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