読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、会社員の30歳の女性。毎月カツカツで過ごしているけれど、ローンの繰り上げ返済をしたほうがいいのかというお悩みに、FPの秋山芳生氏がお答えします。
毎月カツカツで生活していますが、何にいくら使っているのかわかりません。ですが、ローンで車を買ってしまい、5月から月2万6000円のローンの支払いが始まりました。奨学金の返済も毎月2万3000円があと10年ほど残っています(利率等忘れてしまいました…)。臨時収入があった場合、奨学金や車のローン等、繰り上げ返済したほうががよいのでしょうか。
<相談者プロフィール>
女性、30歳、既婚
職業:会社員
同居家族:夫(32歳、会社員)
子ども:1人(1歳)
住居の形態:持ち家(戸建て)
毎月の世帯の手取り金額:40万円(相談者20万円、夫20万円)
年間の世帯の手取りボーナス額:140万円
毎月の世帯の支出の目安:不明
現在の負債総額:不明
秋山: ご質問いただきありがとうございます。ファイナンシャルプランナーの秋山です。
ご質問いただいている「臨時収入があった場合、奨学金や車のローン等を繰り上げ返済したほうが良いか」については、ご質問者様の現在の資産がいくらなのか? いったいいくらの車を買ったのか? 何年のローンなのか? 金利がいくらなのか? 現在の収支がいくらなのか? 今後何にお金を使う予定があるか? がわからないので、正確にお答えすることができません。
ですが、一般論として、金利が安いなら返済は急ぐ必要はなく、手元に現金を持っているということも大事だと思います。金利が高いのなら、いち早く返済したほうが良いでしょう。
相談者にこれから必要になってくる費用は?
毎月カツカツの生活をしている状況で、自動車を購入されたということは、これから自動車ローンが2万6000円発生することに加えて、ガソリン代、自動車保険、車検、自動車税、重量税、外出時のパーキング代や高速代、メンテナンス費用が発生します。さらに、2万3000円の奨学金と、お子さんが1歳ですので、これから教育費がかかるようになってきます。お子さんの進路をどのようにしていきたいと考えているかにもよりますが、大学まで入れると1000万円ほど教育費はかかってきます。
住宅は戸建ての持ち家とのことですが、住宅ローンは残っていないでしょうか? 相続された家かローンを完済している場合も、固定資産税はいくらでしょうか? また築年数によっても変わりますが、今後、修繕費がどのくらいかかってくるか考える必要があります。そして、その先の老後資金の問題になります。
ボーナスは140万円とのことですが、不況下では出なくなる可能性もあるのではないでしょうか? そうすると、今まで以上にものすごくカツカツの家計になると思います。
繰り上げ返済よりも前に相談者がやるべきこと
相談者さまがまず真剣に考えるべきことは、「繰り上げ返済をすべきかどうか」ではなく、上記のことなのです。まずは家計の把握をしてください。次に、将来の費用をシミュレーションしましょう。その上で、高額な買い物をする際の算段を立てるべきなのです。
家計の把握をすることで「現状」の収入と支出がわかります。そして、今後のライフプランをしっかりと立てることで「未来」の見通しがわかるで、そうすると、「いくら現金で持つべきか」、「現金よりも借り入れの返済を早めるべきか」などの選択が正しくとれるようになります。闇雲に返済を優先させて、現金が底をつき、より高い金利でないと借りられないとなると大変なので注意いただければと思います。
ローンの基礎知識と繰り上げ返済の注意点
上記が、相談者さまからの相談をみて、ファイナンシャルプランナーとして思うことですが、以下はローンの基礎知識としてご確認ください。
・奨学金
奨学金は、住宅ローンと並んで金利が最安のローンの一つです。相談者さまが22歳で返済開始したとすると、現在8年目。残り10年間返済ということは、2万3000円×18年=496万円を金利込みで借りていることになるでしょうか。奨学金は、利息の発生しない第一種と、利子が発生する第二種にわかれます。第二種の場合、利率固定方式か、利率見直し方式かによって金利が異なります。現在の金利がいくらなのかは、借りられている奨学金もとに確認されるとよいと思いますが、利率見直し方式であれば、利率0.2〜0.003%など非常に低金利だと想定されます。
・マイカーローン
一般的に、カーディーラーで勧められる提携ローンは、信販会社と組んでいることが多く、金利が3%前後と高いことが多いです。銀行系のマイカーローンは1〜2%程度のものがあり、比較的に安いことが多いと思います。1%前後で借りられているのであれば、それほど利子が高くならないので、無理な繰り上げ返済はする必要が無いと思います。逆に3%前後の金利が付くようであれば、現金に余裕があれば繰り上げも視野に入れて良いでしょう。
ただし、残りの返済期間がそれほどない場合、繰り上げ返済しても旨味はそれほどないので、早期に返済する場合に有効といえます。また、繰り上げ返済をした場合に、3000円〜3万円ほどの手数料が請求される場合があります。するとかえって支払総額が増えかねないので、契約内容にしっかり目を通しておくことが重要です。
繰り上げ返済は金利の高いほうを優先して
以上、繰り上げ返済を検討する上では、金利が何%なのかや、契約内容をしっかりと把握することが重要になります。仮にマイカーローンは3%、奨学金は0.003%で借りられているのであれば、圧倒的にマイカーローンを先に返済すべきとなりますし、マイカーローンを1%で借りていて、奨学金の利率が固定で1.2%であれば奨学金の返済に繰り上げたほうが良くなります。
ただし、繰り上げ返済をした結果、現金がなくなり、借り入れが必要になった結果キャッシングすることになれば、3%以上の金利でないと借りられないことのほうが多くなると思うので、「これからいくら現金が必要か?」をしっかりと考えていただければと思います。
以上、参考になれば幸いです。