ラリークロス・ノルディック開幕戦にヌービル、クリストファーソン、オリバー・ソルベルグら豪華メンバーが集結

 ヨーロッパで今年最初の主要なラリークロス・イベントとして、7月2~5日にスウェーデンのホーリエスで開催されるRallyX Nordic(ラリークロス・ノルディック)の開幕戦、その名も“All-Star Magic Weekend”の暫定エントリーリストが公開され、先行アナウンスされていた2度のWRC世界ラリー選手権王者マーカス・グロンホルムに続き、ティエリー・ヌービルの参戦が決定。現WorldRX世界ラリークロス選手権王者ティミー・ハンセンとチームを組み、さらにWorldRX連覇を達成したヨハン・クリストファーソンやRallyX Nordic“元王者”のオリバー・ソルベルグ、彼の叔父であるヘニング・ソルベルグら豪華メンバーのエントリーも発表されている。

 ラリークロス界のウインターリーグ的存在として長い歴史を誇るRallyX Nordicだが、2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)蔓延の影響を受けて開幕延期の措置を採ってきた。しかしその再開にあたってはスウェーデンの国際放送からの後援を取り付け、大規模なライブストリーミングを柱とした“All-Star Magic Weekend”として、レジェンド、スーパーカー、スーパーカーライト、クロスカー/クロスカート、クロスカージュニアの5クラスで争われることが決まった。

 その目玉としてすでに発表されていたマーカス&ニクラスのグロンホルム親子は、それぞれレジェンド・クラス、スーパーカー・クラスでGRX Tanecoのヒュンダイi20 WRXスーパーカーをドライブすることが決まっているが、最新のエントリーリストにはさらなるビッグネームたちが名を連ねた。

 その筆頭格である32歳のヌービルは、2012年のWRC本格デビュー以降毎年のようにフロントランナーとしてタイトル争いを繰り広げ、WRC通算13勝、41の表彰台と234のステージ勝利を獲得し、ここまで5度のシリーズランキング2位を記録する。

 ペンディング中の2020年もランキング3位につけているヌービルだが、このAll-Star Magic Weekendの週末は乗り慣れたWRカーではなく、クロスカー/クロスカート専用バギーの『LifeLive Nordic TN5』をドライブする。

WRCフロントランナーのティエリー・ヌービルと現WorldRX王者のティミー・ハンセンが強力タッグを結成
ヤニック・ヌービルが代表を務めるLifeLive社が開発した『LifeLive Nordic TN5』

 出身地のベルギー国内ではすでにクロスカー/クロスカートのイベントを経験しているものの、ヌービル自身はスカンジナビア地域のトラックでは走行経験がなく、イベント会期中に「大きな成長曲線を描く状況に直面するだろう」と語っている。

「この有名なラリークロス・トラックでのレースウイークに参加させてもらえるのは本当に光栄だ。昨季のRallyX Nordicもフォローしていたし、面白そうだったからいつかは出てみたいと思っていたんだ」と参戦決定の喜びを語ったヌービル。

 その車両名称にもあるとおり、このFIAクロスカート専用モデルはヌービルの兄弟が操業し、本人も出資するLifeLive社が設計開発したマシンでもあり、この週末が北欧地域デビューの機会ともなる。

「そう、このTN5を競技に参加させる絶好の機会にもなった。LifeLive社にとっての新しい章であり、現在も開発が続けられているTN5にとって、このAll-Star Magic Weekendこそ大きな初演の舞台だ」と続けたヌービル。

「同時にそれは新たな課題への挑戦でもあり、スカンジナビア地域はワンメイク車両の多い非常に特殊な市場だ。僕らは将来的にその状況を打破したいと思っていて、それこそがこの世界で最高のラリークロス・トラックでマイレージを獲得するためにやって来た理由でもある」

「ほかのすべての競合他社は多くの経験を持っていて、僕らはスピードと改善の必要性について多くの学びを得ることになるだろう。でも、個人的レベルではステアリングを握って再びコンペティションに参加できるのは本当に最高の気分だ!」

 その同クラスでTN5を託されたチームメイトは、世界選手権でヌービルを越える実績を持つ現WorldRX王者のティミー・ハンセンで、地元スウェーデン出身の28歳も久々のクロスカートをドライブする。

「eスポーツを多数経験した後、今年最初の本格的イベントで実物のステアリングを握るのが待ちきれないね。今回はRXスーパーカーじゃないけれど、Gの感覚やジャンプ、そしてホーリエスのトラック自体を走れるのはまさに“Magic”な経験だ」と、意気込みを語ったティミー。

RallyX Nordicで武者修行を積み、現在は本格的にラリー競技へと転身したオリバー・ソルベルグ
そのオリバー・ソルベルグはかつてタイトル獲得も果たした父の愛機シトロエンDS3 RXスーパーカーでエントリーする

「WorldRX再開前に多くのラップを重ねてレースのフィーリングを取り戻したいし、それにティエリーと一緒に週末を戦うのは本当に楽しいだろうね。僕らは長い間、お互いをよく知る仲だし、常に彼のクロスカートについても話題にしてきた」

「彼のフィードバックを得てマシンの感触を探り、ふたりがトラックでどんな走りができるか興味深いね。パドックに戻り、レース直前の神経の昂りとともにガソリンの匂いを嗅ぐのは本当に楽しみだ!」

 そのRallyX Nordicのクロスカート部門で3連覇を達成しているオリバー・ソルベルグは、スーパーカー・クラスに昇格した2018年にも僅差でタイトルを獲得。2003年WRC王者のペターを父に持つサラブレッドも、そのとき以来のシトロエンDS3 RXスーパーカーで、同クラスへカムバックすることが発表された。

「今年のようにすべてが異なる状況で、こんな大規模なイベント開催をまとめてくれたすべての人々に感謝しないといけないね」と、成熟したコメントを発した18歳のオリバー。

「確かにこのAll-Star Magic Weekendは以前に見たものとは違うけれど、ドライブに集中している間は無観客であることは気にならないかもしれない。それに、こういう“お祭り”は僕の父を誘惑して引退宣言を撤回させるかもしれないね(笑)」

 そんなオリバーの叔父で、WRC通算133戦に出場し、2014年のヨーロピアン・ラリークロス選手権ではランキング2位となったペターの兄ヘニングは、マーカス・グロンホルムらと対戦するレジェンド・クラスへの参戦が決定。

 元WorldRXレギュラーのポンタス・ティデマンドはHedströms Motorsportのフォルクスワーゲン・ポロのステアリングを握り、そのポロでシリーズ連覇を達成したクリストファーソンはカーナンバー1を背負い、VW Dealer Team Bauhausのエントリー名となるファミリーチーム、KMSからの参戦が決まっている。

WRCではフォードなどをドライブした47歳のヘニング・ソルベルグ。「マーカスと戦うのが楽しみだ」
「戦える機材で走れるのは最高」と、意気込みを語った29歳のポンタス・ティデマンド

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