被爆の継承問い直すー 映画「祈り」完成 松村監督インタビュー

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「自分にとっての代表作を作ることができた」と話す松村監督=長崎新聞社

 昭和30年代の長崎を舞台に、長崎原爆による被爆とカトリックの信仰などを題材にした映画「祈り」が完成した。原作は長崎市出身の劇作家、故田中千禾夫(ちかお)(1905~95年)の戯曲「マリアの首」。原爆で壊滅的被害を受けた旧浦上天主堂の取り壊しに伴い、撤去の動きがある被爆マリア像を守ろうとする女性信者らの生きざまなどを描いている。松村克弥監督(57)に作品のテーマ、思いなどを聞いた。

 -完成した今の感想は。
 無名の男性兵士らを主人公にした映画「サクラ花-桜花最期の特攻-」を以前撮ったので、今回は戦争による女性の悲劇を描いた。10本近く映画を作ってきて一番手応えを感じており自分にとって代表作となった。

 -見どころは。
 戦後12年の高度経済成長期、戦争の傷をひきずっている人、忘れ去ろうとする人、さまざまな人間ドラマが交錯するところ。テーマは「長崎を最後の被爆地に」。被爆の事実をどう継承していくか、被爆マリアの扱いを描くことで現代人に改めて問い直す映画にもなった。

 -長崎県では長崎市内や東彼川棚町でロケを行った。
 館内市場(同市館内町)は昭和の雰囲気がそのまま残っている市場で、作品にマッチした演劇的空間だった。川棚町では片島魚雷発射試験場跡を原爆で破壊された浦上天主堂のセットとして活用。被爆直後の光景やクライマックスシーンなど本格的な撮影ができた。

 -キャストの演技は。
 型にはめず、自然に演じる姿を撮っていった。高島礼子さん、黒谷友香さんのW主演で、鹿役の高島さんは昼は看護師、夜は娼婦(しょうふ)という二面性がある役柄を見事に演じてくれた。忍役の黒谷さんは、清楚(せいそ)さと繊細さを併せ持つキャラクターをイメージぴったりに表現した。2人とも撮影の合間、長崎原爆資料館に足を運び役作りに熱心だった。

 -「マリアの首」の映画化は初。苦労した点は。
 原作はオペラの舞台を想定して書かれており、登場人物が歌うシーンなどもあった。映画化に当たり、そうした部分は脚本でうまく整理した。しかし、あえて舞台的な空間を作ってワンシーンワンカットで撮影し、原作のオマージュとした場面もある。

 -現代に通じる部分は。
 原作で、容姿にケロイドがあることなどを理由に戦後、被爆者らが差別を受けていたことを知った。現代でもコロナ感染を巡って偏見や差別の問題が生じている。作品は時代を問わず人間の抱える闇の部分を浮き彫りにしていると思う。

 -新型コロナの影響で公開は来春以降となった。
 感染拡大前に撮影は終わっていたが、アフレコなどの作業に影響が出るなどした。今年5月、米ニューヨークの国連本部で予定していた上映会は中止となったが、来年以降も国連で上映する機会を狙いたい。