「相当ショックはデカい」後輩救った右手1本での逆転3ラン 鷹・柳田にあった苦い過去

11日のオリックス戦で2本塁打と活躍したソフトバンク・柳田悠岐【写真:藤浦一都】

2015年に自らのエラーから逆転負けをくらった経験のある柳田

■ソフトバンク 8-7 オリックス(11日・PayPayドーム)

ソフトバンクの柳田悠岐外野手が11日、本拠地PayPayドームでのオリックス戦で3安打2本塁打5打点と大暴れし、チームを逆転勝ちに導いた。2回にリードを5点に広げる13号2ランを放つと、逆転を許した6回には右手1本で右翼ホームランテラス席へ運ぶ逆転の14号3ラン。今季2度目の1試合2本塁打で勝利に貢献した。

驚愕の一発だった。6回2死一、二塁で打席に入ると、オリックスの左腕・齊藤綱が投じたスライダーに泳ぎながら、右手1本でテラス席へ運んだ。ヘルメットは脱げ、“脱ヘル”のままでダイヤモンドを一周。ホームで待ち受けていた川瀬晃内野手の頭をポンポンと叩くと、優しさいっぱいの笑顔を向けた。

試合後のお立ち台で柳田は「『お前は悪くない、悪いのは千賀』だって言いました。明日からも気持ちよく野球をやって欲しいんで」と語った。5回に川瀬は2つの失策を犯し、その失策から先発の千賀が崩れた。T-岡田に逆転満塁弾を食らって一気に6失点。試合をひっくり返された。

このまま敗れれば、川瀬のショックは計り知れない……。そんな思いを頭に持ち、柳田は6回の打席に入った。「何とかしてやりたい、なと」。後輩のミスを帳消しにする起死回生の一発だった。

実は柳田にも苦い記憶があった。2015年5月13日の敵地でのロッテ戦。柳田は5回に平凡なフライを落球する失策を犯した。先発の大隣(現ロッテコーチ)がそこから突如として崩れて、一気に5失点。チームは逆転を許して敗れ、柳田自身もショックを受けた。

「レギュラーで出ていましたけど、それでもショックでした。川瀬の立場になると相当ショックはデカいと思う。また気持ちよく試合に出てもらいたいんで、そういう気持ちでいきました」

あの時の自分のようなショックを受けてもらいたくない――。後輩・川瀬のミスを帳消しにする一発。柳田の先輩としての“優しさ”が詰まった、右手一本での曲芸アーチだった。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

© 株式会社Creative2