「育成とトレーニングの舞台として提供する」とプロモーター代表【フォーミュラ・リージョナルの現在と未来】

 富士スピードウェイで8月1~2日、フォーミュラ・リージョナル・ジャパニーズ・チャンピオンシップ(FRJ)の開幕大会(第1~3戦)が、9チーム13台の参加により実施された。予選、決勝とも阪口晴南(SUTEKINA RACING TEAM)の圧勝で、21歳の青年は3ポールポジション&3勝とライバルを寄せ付けなかった。

 今季から新たなフォーミュラのフィールドとして始まったFRJは今後どのような未来を歩んでいくのだろうか。今回はFRJのプロモーター代表を務めるケイツープラネット株式会社の桑山晴美代表取締役に、FRJの現在と未来を語ってもらった。

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 まず、初年度となる2020シーズンは何台(何人)の通年参戦を見込んでいるのかという問いに対し、「1大会あたり16台の参加を目指しております」と桑山FRJプロモーター代表は言う。しかし、開幕大会の富士スピードウェイに姿を現したのは冒頭で記したとおり、9チーム13台に留まった。

 もっとも、昨年から始まったフォーミュラリージョナル・ヨーロピアンチャンピオンシップ(FRE)にしても、2020シーズンの開幕大会(7月31日~8月2日:イタリア・ミサノ)は6チーム11台の参加に留まり、新型コロナ・ウイルス(COVID-19)の世界的な蔓延の影響を受けている。

 FRJもそれは同様で、海外から複数のドライバーが参加を予定していたが、新型コロナ・ウイルスの蔓延による各国の出入国制限措置や入国後の行動制限を受けて実現せず、結果的にFRJプロモーターが目指していた16台は実現しなかった。

 さて、FRJの国内レース界でのポジショニングをどう考えているのか、FRJプロモーター代表の立場から念のため説明してもらった。FIA-F4の上位にあるのは間違いないところだが、気になるのは全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権(SFL)と部分的には重なるようにも見えるからだ。

「現状、FRJとSFLとの明確な棲み分けは考えておりません。国際自動車連盟(FIA)主導による近年のシングルシーター・シリーズ再編でF1、FIA F2、FIA F3、FIA F4というピラミッドが構築されるなか、FIA F3とFIA F4の間にフォーミュラリージョナル(FR)のカテゴリーがさらに創設され、世界各国各地域の選手権のひとつとして私たちも日本でFRJを始めました」

「また、現状のSFL車両は旧F3規定です。旧F3規定のFIA F3ヨーロピアン選手権が2018シーズン末で終了し、世界的に残っているのは日本のSFLと欧州のユーロフォーミュラ・オープン(EFO)だけになりました。とはいえ、日本国内は世界とはまた違う事情や背景もありますし、方向性は異なるとはいえ、FRJはSFLとともに国内のシングルシーター・シリーズを盛り上げて行きたいと考えています」

富士で行われた開幕3戦は阪口晴南が3ポールポジション&3勝と他を圧倒した。

比較的安価なコストとスーパーライセンスポイント獲得がFRJの魅力

 そのSFLの年間活動費はトップチームともなると1億円を下らないと囁かれている。一方のFRJは年間活動費はどの程度になると算盤を弾いているのだろう?

「シャシーとエンジンの車両1台が1400万円弱。このほかに運営費用が必要で2、3000万円。つまり4、5000万円を想定しています」

 これは富士スピードウェイのパドックでチームに聞いた内容とあまり変わらず、つまりSFLの半額でFRJに参戦可能というわけである。ほかにFRJの魅力としてスーパーライセンスポイントも挙げられる。SFLはシリーズチャンピオンの12点を筆頭にシリーズ上位8位までに配点、一方のFRJはシリーズチャンピオンの18点を筆頭にシリーズ上位9位までに配点される。

 もちろん、これには最低大会数や最低参加台数の縛りがある。ただし、2020シーズンに関しては新型コロナ・ウイルスの蔓延で世界中どのシリーズも苦境に陥っており、FIAも縛りの軽減を考えているそうだ。そして国内の各プロモーターはスーパーライセンスポイント獲得条件の緩和を求め、日本自動車連盟(JAF)が取りまとめる形でFIAへ上申しているという。

 今後、SFLあるいはFIA-F4と掛け持ち参戦するドライバーの参加についても「可能性はあると思います。もちろん、スーパーライセンスポイント取得のために、日本のドライバーはもちろん海外のドライバーの参加もあるでしょう」と桑山FRJプロモーター代表は言う。そして、最後にFRJの短期的、中長期的な展望をどのように描いているのかもうかがった。

参戦しているチームのなかにはトムス(運営はRSS)やB-MAX以外にZAPやCMSも参加している。

「FIAの統一規定に則り、比較的費用の掛からないなかで楽しめるシングルシーター・レースに育てたいと考えています。上位カテゴリーを目指す若手ドライバーが育つ舞台として提供するとともに、スーパー耐久を含む“ハコ車”カテゴリーを戦うためのトレーニングの場にも活用していただけるよう、マスターズ・クラスも作りました」

「並行して、安全で公平そして質の高いシリーズ運営を実現するため、競技の運営面では株式会社日本レースプロモーション(JRP)とのコラボレーションにより、国内トップレベルの人材をこのシリーズのために集めました」

「世界的な新型コロナ・ウイルス蔓延の影響が落ち着けば国内外ドライバーの興味も引き、いっそうの参加者増加を見込めます。いずれにせよ、国内のシングルカー・シリーズをほかのプロモーターさまとともに盛り上げていきたいと考えています」

 ちなみに富士スピードウェイのパドックで集めた情報によれば「関係各所の要請や支援を受けて開幕大会に参戦した。第2大会以降は決まっていない」と答えたチームはひとつだけではない。また、「開幕大会だけで今後の予定は決まっていない」というドライバーもひとりやふたりだけではなかった点が今後気がかりである。

 8月22~23日にスポーツランドSUGOで開催されるFRJ第2大会は、同週末に鈴鹿サーキットで開催されるスーパーGT第3戦と日程が重複しており、スーパーGTを優先するドライバー/チームが出てくるのは容易に想像できる。このため、FRJ第2大会の参加台数は10台を割ると予想する声もある。

 もっとも、久しぶりに国内で新設されたシングルシーター・シリーズではあるし、長い目でFRJを見守り最終的は国内自動車レース全体の発展に寄与してくれるよう筆者は願っている。

満を辞して開幕したシーズンだが、コロナ禍で海外からのドライバー参戦が無くなったのは残念。

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