高収入でも危険!投資や貯蓄型保険偏重で現金預金が少ない家計の問題点

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読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、44歳、会社員の女性。資産の大半が貯蓄型保険・投資信託・株・個人年金で、現金預金は少なめ。ここ数年はお子さんの教育費もかかり、ますます現金での貯金ができなくなっているといいます。適正なバランスはどのようなものでしょうか。FPの秋山芳生氏がお答えします。

貯蓄の大半が預金ではなく、投資信託や株、貯蓄型の保険、個人年金です。預金での貯蓄金額、貯蓄割合を増やすべきでしょうか。増やすとしたら、どの程度が良いでしょうか。

●毎月の貯蓄の内訳

夫の自社株を毎月4万円ずつ購入(給与天引)

夫の個人年金保険 月1万円

妻が毎月1万円ずつ投資信託に積立(つみたてNISA)

妻の貯蓄型保険 月1万円

妻の企業型確定拠出年金 月1万円

●ボーナスからの貯蓄の内訳

長男学資保険 年払い 約20万円 満期400万

長女学資保険 年払い 約26万円 満期500万円

次女学資保険 年払い 約20万円 満期400万円

ここ数年は中学受験費用、入学資金が嵩んだり、入居10年以上が経過して設備を取り替える費用などに充てており、ボーナスからの預金積立は増えていません。

(特別費は全てボーナスから補填)

【相談者プロフィール】

女性、44歳、既婚、会社員

同居家族について:

夫→42歳、会社員、月収41万

妻→会社員、月収29万

長男→15歳、中学3年生。私立中高一貫校

長女→13歳、中学1年生 私立中高一貫校

次女→9歳、小学3年生 公立小学校

住居の形態:持ち家(マンション・集合住宅)

毎月の世帯の手取り金額:69万

年間の世帯の手取りボーナス額:560万

毎月の世帯の支出の目安:61万

【支出の内訳】

住居費:11万円

食費:13万円

水道光熱費:3万円

教育費:5万円(私立中の学費は生活費の余り+ボーナスから支払)

保険料:5万円

通信費:2万円

お小遣い:12万円

その他:12万円

【資産状況】

毎月の貯蓄額:8万円

ボーナスからの年間貯蓄額:100万円

現在の貯蓄総額:預金は180万円。学資保険や株など全て含めると1400万円

現在の投資総額:420万円(株と投資信託。利益除く。元本割れはしていない)

現在の負債総額:1300万円


秋山:ご相談いただきありがとうございます。ファイナンシャルプランナーの秋山です。

お子さんの学費の捻出と保険の支払いに追われてしまい、現金預金が少ない状態ですね。
一番下のお子さんも、上の二人のお子さん同様、中高一貫校への進学を希望しているのでしょうか。そうなるとこれから中学受験があり、入学金なども考えると今の現金貯蓄ではかなり心もとない状況かと思います。

また、ご収入は高いですが、ボーナス560万円がありながら100万円ほどしか貯蓄に回せていないということは、460万円の臨時支出がある状況です。不況下でボーナスが止まってしまうこともあり得ます。そんないざというときに、現金貯蓄がある程度ないと対応できなくなることがありますし、場合によっては借り入れをしないといけなくなるかもしれません。これはかなり危険な状況の可能性もあるので細かくチェックしていきましょう。

まずは学資保険の見直しから

まず気になるのが、学資保険です。印象としてはかけすぎです。

お子さんが生まれると「学資保険に入らなきゃ」という方が多いのも事実です。ですが、学資保険は、死亡後の遺族の生活保障には全然足りないですし、生命保険の掛け捨てで「収入補償保険」などに入っていれば問題ありません。自分のお金が自由に使えなくなり、ロックされている上に、保険会社が潰れた場合には最低限の保障はあれど、大きく損をするリスクもあります。

また、最近では学資保険の利率が悪いという理由で外貨建の終身保険を代用するケースが多く見られます。こちらも為替リスクがあるので、必要なタイミングで円高になっていると損をするケースがあります。積立型保険も年末調整で控除の対象になります。なるのは良いですが、返ってくる税金は微々たるものになります。

可能であれば解約返戻金の金額をみて悪くないタイミングで解約か、または積立額の減額が可能であれば調整されるのが良いと思います。

大学費用は入学までに全て貯めなくてもOK

大学の学費については、ある程度準備をしていないと入学金や受験費用が厳しくなることがありますが、入学時に大学4年間すべての費用が揃っている必要はなく、通学期間中の収入からも賄うことができますので、保険で貯めきっておくという必要もないかもしれません。

個人年金保険を見直した方が良い理由

ご夫婦ともに個人年金保険にも加入されていますが、こちらも学資保険同様にあまりよくない状況だと思います。解約返戻金の額にもよりますが、解約か払済などを検討したほうが良いかと思います。

老後に向けた長期の積立型の保険や年金保険は、利回りが高くなく、インフレ負けする可能性が高いです。老後資金であれば、確定拠出年金をまず第一に考えたほうがよいと思います。奥様はお勤めの企業に企業型確定拠出年金の制度があるようなので、こちらを増額されたら良いと思います。またご主人も、企業型確定拠出値金があれば、そちらをご利用なされば良いと思いますし、なければ個人型確定拠出年金(iDeCo)でも良いでしょう。確定拠出年金は、拠出額がまるごと所得控除になりますので、年末調整で戻ってくる額が、掛金に対して一部しか控除されない保険料控除に比べて圧倒的に有利です。

仮に、ご主人の所得税率が23%で住民税率が10%とすると、確定拠出年金に年間12万円(月1万円)かけた場合の税金の控除対象は12万円で、年末調整などで戻ってくる金額は3.96万円です。対して年金保険の控除上限は所得税4万円・住民税2.8万円なので、戻ってくる金額は1.2万円となります。3倍以上の差が出ますね。ボーナスがすべてご主人の収入の場合は、所得税率が33%を超えると思いますのでさらに確定拠出年金が有利になります。

確定拠出年金は、運用指示を自分でできるので、投資信託について学び、株式型の投資信託を老後までの長期で持つほうが有利になると思います。確定拠出年金であれば運用益に対しても税金が発生しないのがさらに有利なポイントです。

死亡保険は2018年の見直しで安くなっている

学資保険に加入したタイミングで死亡保険にも加入しているようであれば、見直しを検討されると良いと思います。2018年の4月に生命表の改定があり、死亡率が下がったものをベースに保険が見直されました。つまり、死亡保険は格段に安くなっているのです。お子さんや家族の生活を担保するための死亡保険は必要と思いますので、収入補償タイプの保険を複数社比較して比べてみると良いでしょう。

社内持株会に集中投資しすぎるリスク

社内持株会も4万円入れていらっしゃいます。持株会から買うと5%や10%安く買えることもあり、お得なことが多いです。しかし株価は変動しますし、単元(売却可能な株数)でないと売れなかったり、決算発表の後でないと売れなかったりするなど流動性が低いと思われます。また、自分の給料と、持株会というものが会社の業績にも連動していくと思われますので、その場合かなりの集中投資になっているとも言えます。

分散投資でリスクを下げ、現金は月収の6カ月分を目安に

投資は値動きが違うものを組み合わせたポートフォリオを組んでいくことでリスクが小さくなっていきます。集中投資ではなく分散をしていくと資産の安定性にはつながりますね。
現金貯蓄が少ない状態だと、不況下において物入りになった時に、ボーナスが減った上に自社株の損切りをせざるを得なくなったり、借り入れをしなくてはならなくなることがあります。ですからある程度現金が溜まってから運用比率を増やされては良いかと思います。目安としては月収の6可月分ほどは現金があると安心でしょう。

持株会のインセンティブが大きい場合(10%や20%のインセンティブがつくなど)は、売却できる単元ごとに売却してインセンティブの恩恵を受けて、その売却額を他の投資信託などに分散していくことも有効かと思います。

住宅ローンは借り換えも検討を

負債が1300万円ほどありますが、これは住宅ローンと推察します。住宅費にかかっている11万円は住宅ローンの返済としてお話していきますね。住宅ローンの金利が高い場合は、最近は金利が非常に安く0.4%前後の変動金利もありますので、借り換えも検討されると良いかと思います。ネット系銀行で複数見積をとってみるとよいでしょう。支払いは、ボーナス払いを設定されているかもしれませんが、不景気に一番最初にカットされるのがボーナスだったりします。住宅ローンの借り直しができた場合は、ボーナス払いはできるだけなくしたほうがよいですし、もし借り換えができない場合も、ボーナスが無くなっても返済が滞らないよう現金を貯めておくことをおすすめします。

変動費よりも固定費削減で貯蓄体質に

変動費であるお小遣いや食費、光熱費なども節約はできると思いますが、頑張り続けるのは意識を高く保つたないといけないので難しい場合があります。逆に保険料や住宅ローン、学資保険などの固定費を減らすことができると貯蓄体質になりやすくなります。先々の備えにばかり目をとらわれて、今という時間を楽しむことができなくなるのも違うと思いますので、バランスが重要ですね。

変動費よりも固定費削減で貯蓄体質に

まとめると、まず、固定費(保険、住宅ローン、持ち株)の見直しを中心に改善し、現金貯蓄を優先することが良いでしょう(まずは生活防衛資金として、収入の6カ月分を目安)。また、下のお子さんが中学受験をされるようでしたら、その費用は生活防衛費とは別にして現金で貯めておくほうが良いと思います。持ち株も損をしない株価になっていれば、一部解約して現金化しておくのも良いかと思います。その上で余剰金は税制優遇制度を最大限活用しながら老後の資産形成を行うことが有利だと思います。また大学の学費も保険ではなく基本現金を中心に考えたほうが良いと思います。

保険は、死亡時のリスクにそなえた収入保障保険は必須と思いますが、医療保険は高額療養費などもあるため、あまりかけなくても良いと思います。学資保険は増える額が少ない上に保障は十分ではありませんので、かけすぎると「今の生活」自体がきつくなったり、もしもに備えられなくなったりして精神的な安定感がなくなります。見直しを頑張られると、生活や精神的な負担が本当に楽になると思います。

以上、参考になれば幸いです。