BTCC第3戦:インフィニティQ50が早くも2勝目。新型フォーカスSTは異例の初勝利

 8月初旬の開幕からタイトなスケジュールでの連戦が続くBTCCイギリス・ツーリングカー選手権の2020年シーズン第3戦が8月22~23日にオールトンパークで開催され、緒戦は再車検での失格など波乱含みの結果ながらMotorbase Performanceのフォード・フォーカスST、ロリー・ブッチャーが新型モデルでの初勝利を達成。続くレース2では2017年チャンピオンのアシュリー・サットン(インフィニティQ50BTCC/Laser Tools Racing)が、雨絡みの勝負を制して開幕戦に続き早くも2勝目を飾っている。

 シーズン開幕前に2020年のフル参戦休止を発表していたPower Maxed Racingが、この第3戦から毎戦スポットドライバーを起用してインディペンデント登録でボクスホール・アストラBTCCの1台を走らせると発表。そのファクトリーマシンのステアリングを託されたマイク・ブッシェルが、いきなり最初のフリー走行でトップタイムを記録してレースウイークの幕が上がった。

 しかし予選で速さを見せたのは、開幕前公式テストからスピードを見せつけてきた2020年投入の新型フォード・フォーカスSTで、第2戦のブランズハッチGPに続いてブッチャーが2戦連続のポールポジションを獲得。

 2番手には久々のフロントロウとなるジョシュ・クック(FK8型ホンダ・シビック・タイプR/BTC Racing)、そしてセカンドロウにはディフェンディングチャンピオンのコリン・ターキントン(BMW330i Mスポーツ/Team BMW)に、Team Dynamicsのマット・ニール(FK8型ホンダ・シビック・タイプR/Halfords Yuasa Racing)と、ベテラン勢が並ぶ展開となった。

 明けた日曜、レース1を前にスタート進行中のトラック上には雨粒が落ち始め、グリッド上の全車がレインタイヤに履き替えてのスタートに。さらに後続でのマシントラブルによるクラッシュもあり、レースは20分以上遅れての仕切り直しとなる。

 ここで大きくポジションを落としたのが最前列にいたクックで、ウエットのトラクションに勝るFR勢、ターキントンとその僚友トム・オリファント(BMW330i Mスポーツ/Team BMW)に先行され4番手にドロップしてしまう。

 しかし2周目にはグッドイヤーのレインタイヤが発動し、フロントグリップを得たFK8シビックが逆襲に転じ、最終コーナーのロッジでオリファントを仕留めると、続くラップでターキントンもかわし2番手のポジションを取り戻す。

 この時点で首位のブッチャーは前戦でチャンスを逸する原因となったバーストを恐れ、タイヤマネジメントに徹しながらリードを維持していたものの、直後に1コーナーでクラッシュが発生しセーフティカー(SC)が導入されることに。

 これで2番手クックとのわずかなマージンも消滅したブッチャーは、SC明けリスタートで厳しいプレッシャーに晒されてしまう。そして7周目の1コーナー、オールドホールで並ばれると、サイド・バイ・サイドの状態でダウンヒルを駆け下りた2台は、続く左コーナーのカスケードでクックのシビックがインサイドを抑え勝負あり。そのままピンクとグレーのシビックが15周のトップチェッカーをくぐった。

 しかしレース後の再車検で、クックのFK8型ホンダ・シビック・タイプRはレインタイヤ装着時の車高設定を誤ったか、右フロントの最低地上高が足りないことが発覚し、規定違反によりレース失格処分が言い渡されることに。

 結果、2位フィニッシュだったブッチャーが勝利を手にし、2位にはファイナルラップの攻防で順位を上げたTeam Dynamicsのダン・カミッシュ(FK8型ホンダ・シビック・タイプR/Halfords Yuasa Racing)が続き、惜しくも表彰台を逃したと思われていたジェイク・ヒル(ホンダ・シビック・タイプR/MB Motorsport accelerated by Blue Square)が最後の3位ポディウムを確保。序盤戦で上位を争ったターキントンは、バラスト満載のBMWでレースペースに苦しみ4位にまで後退している。

第2戦のブランズハッチGPに続き、新型フォード・フォーカスSTの速さを証明したロリー・ブッチャー。2戦連続のポール獲得となった
この週末に参戦700戦を迎え、特別ゼッケンを披露した予選4番手のマット・ニールだったが、レース1は電気系トラブルで無念の結末に
グリッドへの試走で急遽の降雨に見舞われたレース1は、伏兵が見事なレースペースを披露するも……
レース1は明らかに最速だったジョシュ・クックだが、チーム側のミスで今季初優勝が水の泡に

■レース2も路面はウエット。主役はインフィニティのサットン

 続くレース2も路面はウエットコンディションのままスタートが切られ、レース1勝者のブッチャーがポールポジションからの発進となるも、このヒートで主役を演じたのは8番手から躍進したインフィニティのサットン。

 レース1は予選11番手と沈んでいた復帰組のFRサルーンは、ウエットに転じた日曜に息を吹き返しレース1を9位で終えると、続くレース2はオープニングラップで早くも5番手に進出。2周目にはヒルのシビックもかわして、ターキントンのBMWを追走する。

 2番手カミッシュとのバトルを演じていたターキントンは、5周目のヘアピン出口でわずかに失速すると、その隙を突いたサットンがBMWの前へ。そのまま最終コーナーでカミッシュのシビックも仕留め、2番手でホームストレートを立ち上がり6周目へと入っていく。

 このラップでも早々に首位ブッチャーのテールを捉えたサットンは、テール・トゥ・ノーズの状態でフォード・フォーカスSTの動きを見極めると、8周目突入の1コーナーでわずかにラインが膨らんだのを見逃さず、ついにトップランを奪取。そのまま4.716秒ものマージンを築いて15周を走破し、インフィニティQ50BTCCとのシーズン2勝目を飾っている。

「最初の数周は“気配を消す”ことに意識を払った。ここは狭く、まわりとの距離も近いから簡単に接触する危険性があるからね。4番手に上がってクリーンエアの状態になってからは、自分のマシンに勝てるペースがあることがわかった。ロリー(ブッチャー)がターン1でわずかなミスを犯したので、そこからはイージーな展開になったよ」と、レースを振り返ったサットン。

 2位ブッチャーに続き、最後の表彰台には13周目のヘアピンでカミッシュのインを刺したターキントンが入り、BMWの王者は選手権でのダメージを最小限に留める力走を披露している。

 そして日曜最終のレース3はリバースグリッドのフロントロウ2番手に並んだアダム・モーガン(メルセデス・ベンツAクラス/Carlube TripleR Racing with Mac Tools)が、スタートでポールシッターのボビー・トンプソン(アウディS3セダンBTCC/GKR TradePriceCars.com)を仕留め、地元サーキットで首位を快走。

 しかし終盤はオリファント、ターキントン、そして10番手から上がってきたインフィニティのサットンと、3台のFRサルーンに追い立てられる苦しい展開に。Team BMWはチーム内の序列で2番手にスイッチしたターキントンの追撃により、メルセデスは首位陥落か……という状況まで追い込まれたところ、後続でマルチクラッシュが発生。

 これにより赤旗終了となり、モーガンはからくも逃げ切りそのまま2年ぶりの勝利を獲得。2位ターキントンはサットンに対する選手権リードを19ポイントに拡大し、3位オリファントと合わせてWest Surry Racingがチームとマニュファクチャラーの両選手権で快適なリードを維持している。

 続くBTCCイギリス・ツーリングカー選手権の第4戦は再び2週連続開催のバック・トゥ・バックとなり、8月29~30日にスコットランドの高速トラック、ノックヒルを舞台に争われる。

レース2も雨がらみの勝負となるなか、2017年王者アシュリー・サットンとインフィニティQ50BTCCが猛烈な追い上げを披露する
FFとFRでは立ち上がりのライン選択が異なり、ウエットではその傾向がより顕著に。当然、求められるスキルも違ってくる
早くも今季2勝目を飾ったアシュリー・サットン。ランキングでも首位と19ポイント差の2番手につけ、2度目の戴冠を狙う
レース3はアダム・モーガンのメルセデス・ベンツAクラスが制し、実に2年ぶりの勝利に。モーガンは地元オールトンパークで2013年以来の表彰台となった

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