五島市長選で3選・野口市太郎さん インタビュー 将来世代の市民も重視

野口市太郎さん

 〈30日に投開票された五島市長選で、3選を果たした。選挙戦の振り返りや今後の抱負などを聞いた〉

 -当選後、笑顔と引き締まった表情を浮かべた。
 期待を寄せていただいたのは一政治家としてうれしいが、今後4年間の責任を考えると喜んでばかりいられない。コロナがなければある程度道筋が見えていたが、予想だにしない市政運営。責任の重さを感じる。

 -新型コロナ禍で、選挙のやりにくさは。
 握手ができず、握り返してくれる力加減で手応えを感じることができなかった。ただ街頭演説の回数が増え、力いっぱい、感情を込めて訴えられたことはプラスになった。

 -投票率は過去最低の59.34%となった。
 60%を超えたいと思っていたので残念。地域を回る中で、選挙への関心が失われているとも感じた。

 -公約の「コロナからの復活」にどう取り組むか。
 人の往来を復活させないと、生活に困窮する人も出る。医療、検査体制はしっかり整備するので、市民には感染対策をしながら経済活動を復活させる「ウィズコロナ」の考え方を理解してほしい。観光面では、宿泊施設の廃業やガイド能力の低下などが起き、宿泊能力が制限されたり五島の魅力を伝えられなかったりするのが一番怖い。観光客の誘致を進めていく。

 -1次産業の振興は。
 五島の1次産業の特徴だが、「材料」として出荷している部分が多い。それを(島内で)商品として加工し、業務用ではなく家庭で消費してもらう商品作りを市物産振興協会などと進めないといけない。コロナの巣ごもり消費にも対応できるし、人の動きが活発化したら、より所得の大きい方にシフトしていく。

 -長期的な自然減対策にはどう取り組むか。
 基本的には若い人を増やすことが大切。ただ結婚や出産はプライベートの話であり、行政が一番苦手としてきた分野。今まで一歩引いていた部分を、市民の理解を得てどれだけ取り組めるか。子育て世代に寄り添うことも重要。移住施策で五島より良い条件の自治体はあるが、なぜ五島に来てくれるかというと、職員が親身になって対応しているから。子育ての不安感は、いくらお金を掛けても解消されない。親身になってくれる市職員や保健師などの体制をつくり上げる。

 -コロナで厳しい財政状況。限られた予算の中で、各施策への影響も。何を大切にするか。
 行政を進める上で一番に考えるのは、子や孫の世代にどういう五島を残すのかということ。現役世代には受益者負担を払っていただき、新図書館建設も含め、子どもたちに明るい未来を託すための地域づくりや制度づくりを進める。現役世代だけでなく、将来世代を含めた「市民重視」だ。

 -3期目の抱負を。
 子どもたちに活性化した五島を引き継ぐ。そのために人口減対策、コロナ、教育などにしっかり対応していく。今を生きている人の安心安全も守る。市民の理解をいただくのが大切なので、しっかりと考えを発信していく。

 

 【略歴】のぐち・いちたろう 1955年、五島市出身。長崎大経済学部卒。78年から2012年まで県庁に勤め、五島地方局長(現五島振興局長)や水産部長などを歴任。趣味のランニングは体調面を考慮しウオーキングに切り替えている。座右の銘は人よりも先に心配し、人が楽しんだ後で自らも楽しむ意味の「先憂後楽」。東浜町3丁目に妻裕子さんと暮らす。

 


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