<大ヒット盤>TUBE『日本の夏からこんにちは』日本に彼らがいてくれて良かった

 約5年ぶりとなる通算37作目のオリジナルアルバム(ミニアルバムを含む)。デビュー35周年を迎え、昭和風の懐かしい楽曲から令和の夏を直視した楽曲まで、実にバラエティーに富んだ12曲だ。

 例えば、『日本の夏からこんにちは』は、東京五輪を想定していたのか完全に音頭調だし、レゲエシンガーの寿君と組んだ『知らんけど』は、2人の熱い歌声が重なることで灼熱感がハンパない(大阪らしいことを散々並べておいて、「知らんけど…」と責任を放つ所も上手い)。

 『潮風の中で』が、TUBEというよりBEGIN風の癒される夏ソングだったり、続く『君がいるから』が、ピアノを基調としたシンプルなラブソングだったりと、前田の歌声が全体に低くなったことで、新たな味わい深い作品も生まれた気がする。

 本作では『夏が来る!』『夏のDeja Vu』『いただきSummer』といった、元気いっぱいの爽快な夏ソングもあり、TUBEらしさも存分に味わえる。ただ、2020年に限っては、どこか絵空事のように聞こえてしまうかもしれない。

 そんなことも察したのか、ラストに収録された『Route 567』が胸に迫る。カフェやライブハウスが閉ざされた今を「未来へと進むしかない」と覚悟し、「走れ もう一度 よみがえる夏」と力強く絶唱する様子に励まされ、日本にTUBEがいてくれて良かったと実感した。

 本作を聴けば、日々起こる様々な出来事を、長く生きてきた証だとより広い心で受け止められるようになるはず。

(ソニー・通常盤 3000円+税)=臼井孝

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