手取り年1000万超えでも貯金150万の41歳。自己投資とこだわりが家計を圧迫

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、IT系企業に務める41歳男性。仕事に生かすために、セミナーやトレーニング、交流会など、積極的に自己投資をしており、出費が膨らみなかなかお金が貯まらないといいます。FPの横山光昭氏がお答えします。

自己投資にお金をかけ、稼げるようになりましたが、貯金が一向に増えません。

今まで、業界の研究会や勉強会、有料セミナーに参加したり、書籍をかなり読み、自分に力をつけてきました。今では社内でもかなりの職責を担わせていただき、その勉強が役立っていると感じています。

また、勉強するにも仕事に熱中するにも体力と体調管理が大切だと思い、パーソナルトレーナーのもとで体づくりをしています。ストレス発散にもなり、メリットは大きいと感じています。

仕事の幅を広げるための交流会参加費などの交際費もかかりますし、色々な方にお会いするのに身なりに気を使わなければなりません。支出が結構多くなってしまい、毎月収入を使いきるどころか、貯金から補填することもあります。

また、スマホゲームの課金も良くないとは思っているのですが、気分転換、ストレス発散に欠かせません。一番リラックスできる時になるのです。

これだけ使っているからお金がたまらないのだと言われればそれまでですが、最近五つ下の弟がマンションを購入したということもあり、今のままでは兄としてのメンツがたちません。なんとか貯められるようになり、マンションを買う、車を買うなど、しっかりできているところを親兄弟に見せたいです。どのようにしていくと良いでしょうか。

【相談者プロフィール】

男性、41歳、IT系企業の会社員

毎月の手取り収入:約66万円

年間の手取りボーナス:約250万円

貯金:150万円

他、投資等の金融資産はなし

【支出状況(総支出額:66万円)】

住居費:16万4,000円

食費:9万6,000円

水道光熱費:1万8,000円

通信費:3万8,000円

生命保険料:2万5,000円

生活日用品:1万8,000円

医療費:2万2,000円

教育費:7万4,000円(勉強代)

交通費:2万6,000円

被服費:5万1,000円

交際費:4万2,000円

娯楽費:5,000円

嗜好品:2万2,000円

その他:2万8,000円

未精算経費:3万1,000円


横山: 収入が高いのに貯金ができないという悩みは、結構多いものです。その原因はというと、収入は多くても支出として出ていくものも多くなっているということなのですが、相談者さんも同じようですね。家計表をざっと拝見すると、かなり無駄な支出が多いのではないかと思わされるような、メタボ家計になっています。貯金をしたければ、支出を一つずつ見直すことが大切でしょう。

「意識高い系」は自己投資貧乏になる可能性あり

勉強にお金がかかる、人脈を広げるための交際費にお金がかかる、そして多くの人に会うために洋服代や小物、美容代がかかる。そういってお金を使っているように見えるのですが、全てがそんなに必要でしょうか。

確かにお金をかけたぶん、仕事に活かせ、成功しやすくなる部分もあるでしょう。仕事へのモチベーションも必要でしょう。ですが、収入が今のように高いままをずっと維持できるかというと、その保証はありません。お金をかけて成功することが大前提であれば、収入が少なくなった場合は成功することができないということになります。それはちょっと変ですね。

世の中で成功を収めている人の全てが、お金をかけてその成功を手に入れたわけではありません。お金をかけることよりも、野心や向上心、成功したい欲、物事を突き詰める精神などの方が優っていたのではないでしょうか。

たとえお金を使っていたとしても、それは「今必要な支出なのか」を見極めていたと思います。世の成功者、お金持ちの人は自分が無駄と判断したものには、消してお金を出しません。その分、自分が必要だ、自分にとって価値があると判断したものにはしっかりお金をかけます。自分にきちんとした価値観があるからこそ、メリハリのある支出をしているのです。

単に自分の成功のために「あれも必要、これも必要」と支出するのは、一見、意識高い系に見える隠れメタボ。相談者さんはまず、自分がそんな自己投資貧乏にはなっていないか、お金の使い方を振り返る必要があります。

セミナーは内容の吟味を

さて、支出の中で目立つ「教育費」は勉強代だそうですね。通信講座などを含んでいるわけではなさそうです。単に不定期に参加するセミナーなどへの参加代が中心だとしたら、それは価格上は「高い」と言わざるを得ない金額です。

セミナー参加が悪いわけではありませんが、複数のものに参加していると中には目的と異なる内容のものもあるでしょう。関心のあるテーマを含んでいるものに飛びつくような参加の仕方では、いつまでも自分の目標に達しません。それよりは、内容を吟味し、本当に自分が得たい情報のものに絞って参加する方が、得るものも大きく、効率が良いでしょう。

パーソナルトレーナーの必要性を再検討

パーソナルトレーナーとのトレーニングですが、長期間一対一でする必要があるでしょうか。それが心地良いから、費用を支払えるからと惰性で継続しているのではないでしょうか。ある程度トレーニングのコツがわかれば、自分でトレーニングすることもできるはずです。ただ、相手がいるから頑張れるという人もいます。トレーニングすることが自分に必要だと判断し、また、一緒に取り組んでくれる人がいないと継続が難しいと判断するなら継続もありだとは思いますが、その位置付けをはっきりさせておいた方が良いように思います。

勉強代は本当に「勉強代」?

人は楽しくて楽な方を選びがちですから、「本当に自分の生き方に必要か」を考えて判断されると良いと思います。これはセミナーについても同じです。勉強のためと言ってしまえばなんでも身につきそうな気がしますが、本当に必要なことは一握りのように思います。ご自身で必要なもの、必要ではないものを見極める目を持つことも、仕事を成功させるには必要なことです。一度お考えください。

「こだわり支出」が家計を圧迫

他の支出を見ると、食費をはじめ、被服費、交際費、娯楽費、嗜好品代などが高いように感じます。何かこだわっている支出はないでしょうか。所得に関係なく、食費が高いご家庭は、食材にこだわっている傾向があります。たくさん食べるというケースもありますが、「産地直送」「国内〇〇産」などにこだわる人が多いのです。食は健康にも密接していますし、考え方にもよるので一方的によくないと言えるものではありませんが、家計を圧迫してまでの支出額となるとやはり行き過ぎと言えます。

また、人に会うから購入するという洋服なども、見栄えを良くしたいからとブランド品ばかりにしたり、人との交流とを大切にしたいがために、高額な飲食店に行く機会を増やしたり。少し品が良さそう、ステイタスが高いなどと思われるものに支出しがちであれば要注意です。前述したように、今の自分に本当に「必要か?」を考えてお金を使っていかなければ、お金を残すことができないでしょう。

自分なりの基準を持って、貯金に取り組む

また、相談者さんは自分を向上させるためにお金を使っている一方で、会社の立て替え経費が未精算だったり、ゲーム課金が多かったりしています。もしかすると、多少ルーズでもいいでしょ……と怠慢さを許している自分もあるのではないでしょうか。もちろん完璧主義を目指す必要もありません。ただ、自分なりのルールがなく、緩くなってもいいやと惰性でやってしまい、区切りなくぼんやりと進んではいけないと思うのです。自分で無理なく続けられるような範囲を見据えるようにして取り組んでいただきたいところです。

周囲や溢れている情報に振り回されすぎず、自分がよいと思うことを選んでいければ、この先貯金ができていくことでしょう。また、価値観がしっかりしてくると、仕事にも良い影響も出ることでしょう。まずは今までの自分を振り返り、今後の進め方を見つけていきましょう。

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