【自民党総裁選】「たたき上げ」菅義偉氏 下積み時代知る地元関係者は…

菅氏との思い出を語る藤木幸夫さん=14日、横浜市中区の藤木企業本社

 安倍首相の後継を決める自民党総裁選は、「たたき上げの苦労人」を前面に出した菅義偉官房長官(衆院神奈川2区)が、岸田文雄政調会長、石破茂元党幹事長を退け圧勝した。古くから知る地元の関係者らは感慨に浸りながら、「努力した者が報われる政治を実現してほしい」と期待を込めた。

 「この国を守るため、命を懸けて信念を貫いてきた政治活動が認められた」。1996年の衆院選初挑戦から選挙事務所長として四半世紀近く支えてきた齋藤精二さん(82)は感無量の様子で語った。

 8回連続で当選を重ねたとはいえ、浮動票が左右する大都市ゆえに厳しい選挙戦に何度もさらされた。その度、菅氏自ら陣頭に立って難局を切り開いてきた。

 地元を預かる一人の齋藤さんは「これからは本当に大変。地元のことは安心してもらい、ますます国政に専念してほしい」とエールを送った。

 元自民党県連会長・梅沢健治さん(91)は県議時代、故・小此木彦三郎元通産相の事務所に入ったばかりの菅氏を神奈川区担当者として預かった。

 当時26歳。梅沢さんによれば「いろんな経験を通して『政治が最後の仕事』と覚悟を決めていた」。だから、秘書修業は「真剣そのものだった」という。

 総裁選の開票中継を自宅で家族と見入り、まな弟子の当選が決まると「よくがんばった、がんばった」と拍手し、涙で声を詰まらせた。

 県選出の小泉純一郎首相誕生の折に総裁予備選を仕掛け、流れをつくった梅沢さんだが、「やはり小泉さんはサラブレッド」とし、「(菅氏は)ぼくと同じ庶民中の庶民。そんな彼がいろんな人たちに勇気を与えた。今回はますますうれしい」と目を細めた。

 横浜の港湾運送業「藤木企業」会長の藤木幸夫さん(90)は「おめでとうございます、と言わなきゃいけないよな」と語り、はにかんだような笑顔を見せた。

 近年は、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の横浜港誘致を巡り激しく対立。反対の立場を貫く藤木さんは「俺が知っている昔の菅さんはいない。今の菅さんに対して言う資格は俺にはない」と述べるにとどめた。

 藤木さんは菅氏が小此木氏の秘書時代から40年以上の付き合い。長く選挙応援するなど親密な関係が続き、互いによく知る間柄だ。

 貧しい農家に生まれながら明治国家の礎を築いた初代首相の伊藤博文になぞらえ、「菅さんは総理大臣も村長も務まるよ。(伊藤にはない)村長のような魅力がある」とも語った。

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