【世界のスタートアップ事情】中東とアメリカの深い結びつき

UAEとイスラエルの国交正常化が大きな引き金に?

 2020年8月14日未明に、アメリカの介添えでイスラエルがバーレーン・UAEとの国交正常化を発表した。歴史的に複雑な利権が絡みあう中東情勢において、アメリカと深い関係性も持つイスラエルは、これまで他の多くの中東諸国と対立していた。その中でイスラエルがエジプト・ヨルダンに続く中東諸国との国交正常化を達成したことで、ビジネスの観点でも中東が地域としてより大きな広がりを持つことが想像できる。

 イスラエルはテクノロジーに根差した産業が早くから成長し、アメリカのシリコンバレーに対応する”Silicon Wadi”と呼ばれる地域を形成している。これは原油の産出が見込めない貧資源国イスラエルの戦略であり、今では”Startup Nation”と呼ばれるまでに成長しているのだが、UAEのオイルマネーはその成長をさらに促進することになるだろう。本件に関しては、イギリスのガーディアン紙が詳しく報じているのでこちらの記事を参照されたい。

中東で注目を集めるテックの祭典では、アメリカからの登壇者がずらり

 

(ドバイの一大テックハブとなっている、Dubai Internet Cityの紹介動画)

 そのような中、UAEの首都ドバイを拠点にテックカンファレンスを手がけるSTEPが、初のオンラインカンファレンス「STEP Anywhere」を8月24~26日の3日間で開催した。世界各国でスタートアップに対する関心は高まっているが、ドバイもその例にもれず、石油産業からの多角化を目指し、多くの資金がテック・スタートアップ界隈に流れているのだ。

 「STEP Anywhere」では、中東圏以外でアメリカからの登壇者が飛び抜けて多かった。中でもシリコンバレーの著名なベンチャーキャピタル(スタートアップを投資対象とする投資グループ)・500 StartupsのCEO Christine Tsaiが本イベントの目玉として登壇し、直近で中東を含むアメリカ国外の投資を増やしていくとイベント中に参加者に向けて語っている。

 中東のテック・カンファレンスにおいてアメリカの登壇者が多い主たる要因は、アメリカがシリコンバレーを中心としたスタートアップ・ブームの火付け役であるからだが、それだけではなく、政府だけではなく民間レベルにおいてもアメリカは中東圏へ経済的に高い注目をもっているということを感じさせた。アメリカを介したイスラエルと中東諸国の国交正常化は中東の新しい経済圏を予感させるものだが、アメリカとStartup Nationであるイスラエルを皮切りにした中東でのスタートアップ・ブーム到来にも期待がもてそうだ。

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