2020年9月14~18日にサンフランシスコにて、シリコンバレー最大のスタートアップ・カンファレンス TechCrunch Disrupt SF 2020が開催された。次なるGAFA(Google, Apple, Facebook, Amazonの頭文字をとった省略語)となるポテンシャルをもつ、創業間もないスタートアップに焦点をあて、それぞれのスタートアップによるプレセンテーションピッチが繰り広げられるのが、Startup Battlefieldだ。先の記事では、DropboxやFitbitなど日本でもよく知られるテック企業を輩出し、Battlefieldが成功への登竜門となっていること、そして2020年のBattlefieldで見事に優勝した大麻栽培のプラットフォームCanixの事業を紹介した。詳しくはこちらを参照されたい。
本記事では、参加全20チームから、最終日に実施された決勝に進出した5チームのうち、Canixを除く4チームを紹介するとともに、その分野からシリコンバレーの最新トレンドを紐解いていきたい。
ファイナルに進出した4チーム
Runner-up(第二位): Matidor
エネルギー・環境サービス分野の顧客に対して、地理的な情報を一括で管理し追跡するとともに、プロジェクト管理を容易にするプラットフォーム。カナダ・バンクーバーを拠点としており、創業者はGoogle Earthチームに携わった経歴をもつ。
Finalist: Firehawk Aerospace
安定したコスト効率の高いハイブリッド燃料を用いた新しいロケットエンジンの開発を行うスタートアップ。SpaceXをはじめとした宇宙開発が盛んな中、30年間大きな進歩がなかったロケットエンジンに一石を投じる。
Finalist: HacWare
企業のメールサーバー上に設置され、機械学習を利用して各メッセージを分類し、フィッシングやソーシャルエンジニアリング攻撃に対するリスクを分析・対処するサービスを提供。
Finalist: Jefa
ラテンアメリカの女性が銀行口座の開設を容易にする製品を構築するスタートアップ。世界14億人の銀行口座を持たない人のうち、13億人は女性と言われており、中米のコスタリカとグアテマラからローンチを目指している。
新たな分野の開拓と地域に根付いた問題の解決
上記4チームに優勝したCanixを含めた5チームの分野から、以下2つの観点でシリコンバレーのトレンドを感じとることができる。
①新たな分野におけるスタートアップの創出
この5チームのうち、CanixとFirehawk Aerospaceに顕著にみられるように、法制の改正や技術の急激な進歩に伴うムーブメントによって、スタートアップにおいても新たな分野に注目が集まっているといえる。
この場合のムーブメントとは、アメリカにおける大麻の合法化と、SpaceXによる初の商業用宇宙ロケットの打ち上げ成功であろう。いずれも2020年の大きなトピックだが、新しいビジネスチャンスに新たなソリューションを提供するスタートアップは今後も増えてくるであろう。
②地域に根付いた問題解決
地域特有の問題を解決するテクノロジーをもつスタートアップという観点では、資源大国であるカナダに本社をもつMatidorや、女性進出が遅々として進まないラテンアメリカにフォーカスするJefaは典型的であろう。
世界に対して爆発的な影響力を与えるイノベーションは次々と出てくるわけではない中で、地域が抱える既存の問題を解決することはとてもわかりやすく注目も集まる。これまで世界全体をカバーするテック企業を数多く輩出してきたアメリカにおいても、周辺諸国の課題解決には関心が高いようだ。