ステーションワゴン、日本でなぜ激減した? 孤軍奮闘するメーカーも

ホンダ アコードワゴン(2代目)

「SUVブーム」に取って代わられたワゴン車人気

初期SUVブームの火付け役「トヨタ ハリアー」(初代・1997)

SUVブーム。ワゴン車が消えた理由を考えた時、誰もが真っ先に浮かぶのはこのことだ。

2000年代に入り、それまで主流だったトヨタ ランドクルーザーや三菱 パジェロといった本格的なクロスカントリー型四輪駆動車(クロカン)に代わり、セダンなどの乗用車のプラットフォームをベースに車高をあげ室内空間も広げたSUVが急増した。

SUVは、これまでの重厚過ぎる四駆とは違い、乗用車感覚で乗れた。しかも見た目も新鮮で格好良く、ワゴン同様かそれ以上の荷室や室内空間で使い勝手にも優れるなど、良いこと尽くし。ほんの10数年の間で世界的に拡がり、すっかり定着するに至った。

遊びクルマをひとくくりにした「RVブーム」

「三菱 パジェロ」(2代目・1991)

そもそもワゴン車ブームの際に言われていたキーワードは“RVブーム”。

これには多人数乗車可能な1BOXワゴン(のちのミニバン)やクロカン四駆、そしてワゴン車など、従来のセダンやハッチバック以外の車型をひとくくりに総称したものだ。

背景には、1980年代から90年代にかけて巻き起こった空前のスキーブームや、キャンプやBBQといったアウトドアレジャーの一般化がある。

「三菱 デリカスターワゴン」(2代目・1986)

RVとはRecreational Vehicle(レクレーショナル ビークル)、つまりレクレーションのためのクルマという意味。ひとくくりにされたのはいずれも「週末の外遊びを楽しむのに適したクルマ」というワケだ。

クルマを所有すること自体が憧れや目標だった1960年代・70年代とは異なり、所有したクルマで何をするかがようやく考えられるようになった時代とも言えるかもしれない。

ブームのけん引役だったワゴン車も、RV車が目的別に分岐していく中で取り残されていった

日産 ステージア(2代目・2001年)

ひとくくりにされていたRV車の中で、当初最も華やかだったのはワゴン車だった。

既存のセダン車やハッチバック車をベースに手早くラインナップ展開しやすかったことも手伝い、1990年代には、国産のほとんどのメーカーから大小さまざまなモデルが用意され、まさにワゴンの絶頂期を迎えていた。

しかしその後2000年代に入り、ファミリー向けのミニバン、アウトドアレジャー向けのSUVと、各々の目的や使い方に応じたジャンルが確立され、それぞれが急激に市場を拡大していった。その動きに反比例するかのように、あれほど多かった各社のワゴンも潮が引くように消えていったのだった。

むしろ一周回って新鮮な印象も!? 2020年のワゴン車事情とは

2020年10月15日発売予定の「スバル レヴォーグ」(2代目)

孤軍奮闘する「ワゴンのスバル」

「スバル レガシィツーリングワゴン」(2代目・1993)

そんな中で、地道にワゴンの改良を重ねてきたのがスバルだった。

レガシィツーリングワゴンは1989年に登場。商用バンと兼用されることが主流だった他社モデルとは異なり、レガシィのボディは専用で、先代レオーネから続く独自の4WDシステムを特徴とした。さらにハイパワーなターボエンジンを搭載したGTを追加しスポーツワゴンという新たなジャンルを確立したことで、その人気は揺るぎないものとなった。

最終モデルとなった5代目の「レガシィツーリングワゴン」(2009~2014)

さらに派生モデルとして、SUV風の装飾を加え車高をアップしたクロスオーバースタイルの「アウトバック」(日本では「グランドワゴン」⇒「ランカスター」⇒「アウトバック」)も2代目レガシィから追加され、独自の人気を集めていく。

そんなレガシィツーリングワゴンも5代目が2014年に廃止。レヴォーグがその後を受け継いだ。そして2020年10月15日、2代目レヴォーグが誕生する予定。そして、当初は派生車種だったはずのアウトバックのみが継続している点もまた興味深い。しかも2021年にはフルモデルチェンジするというからこちらも楽しみだ。

カローラツーリングなどニューモデルも誕生

「マツダ6ワゴン」

すっかり姿を消した国産ステーションワゴンだが、このように決して絶滅した訳ではない。他社でもトヨタがカローラのワゴン「カローラツーリング」を2019年に登場させているし、マツダはカペラ・アテンザから脈々と続く「MAZDA6ワゴン」を今も販売している。

世の中ではあまりにもSUVが増え過ぎた。そんな時代のワゴン車は、むしろ一回りして新鮮な印象すらある。いまこそ改めて注目したいジャンルだ。

[筆者:トクダ トオル(MOTA編集部)]

© 株式会社MOTA