巨人・丸、塁上で見せた“いやらしさ” 専門家が「No1の貢献度」と言う訳

巨人・丸佳浩【写真提供:読売巨人軍】

元ヤクルトバッテリーコーチ野口寿浩氏が注目した塁上での働き

■巨人 7-4 阪神(3日・甲子園)

巨人は3日、敵地・甲子園球場で阪神を7-4で下し、優勝マジックを19とした。4回に決勝の先制適時二塁打を放った丸佳浩外野手は、広島で2018年までリーグ3連覇を達成した後、FA移籍した巨人でも2連覇に近づいている。ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜(現DeNA)で捕手として計21年間活躍し、2018年まで2年間ヤクルトのバッテリーコーチを務めた野口寿浩氏は「丸の“野球偏差値”とチームへの貢献度は、非常に高い。おそらく巨人でナンバーワン」とうなる。

丸は4回1死三塁の先制機で、阪神の先発ガンケルの直球を左翼線へ。試合の均衡を破る一打となったが、それ以上に野口氏が「百戦錬磨の丸ならでは」と感嘆したのは2点リードで迎えた6回だった。

無死一塁で打席に立った丸は一ゴロに倒れ、併殺崩れで一塁に残った。「そんな時でも、自分にできることは何なのかを、よくわかっているのが丸なのです」と野口氏。続く中島の打席では、ガンケルに4球も牽制球を投げさせ、阪神側がリクエストしたほどギリギリのリードで圧をかけた。その上で、中島への4球目に盗塁成功。ガンケルはその後、中島に四球を与え、続く大城に試合を決定づける3ランを浴びた。

「走力だけではない。丸が走るぞ、走るぞと散々プレッシャーをかけたことによって、相手投手にはボディブローのように効いてくる。増田大、吉川尚ら、盗塁できる選手は他にもいるが、ああいうことは丸のように経験を積んだ選手にしか身につかない」と野口氏は指摘。丸という選手が相手にとっていかに嫌らしい存在であるかは、投手の女房役として長年戦い続けた野口氏には痛いほどよくわかる。

たとえ絶不調でも着実に進塁打を放てる丸の“野球偏差値”

開幕から打撃不振に苦しんできた丸。夏場になっても打率2割台半ばだったが、3日時点では打率.282まで回復。野口氏は「丸は絶不調の時でも、たとえば1死三塁で打席に入ると、自分の数字を上げることに必死になるのではなく、自分の調子や相手の守備位置を冷静に判断し、二塁ゴロを打って三塁走者を生還させたりしていた。これは誰にでも出来そうに見えて、実際には難しい」と言う。

「いわゆる“野球偏差値”が高い選手です。巨人では、菅野の連勝記録、坂本の通算2000安打達成や岡本の本塁打王獲得がなるかどうかなど、派手なところが注目されがちだが、僕は丸の存在が1番効いていると思う」と断言した。

丸が抜けた広島は凋落し、覇権が巨人に移ったことも偶然ではないのかもしれない。「広島でもチームの中心にいてバランスを取っていたのが、丸だったのでしょう」と野口氏。数字に表れる成績も一流だが、それだけでは測れない価値もある。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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