不正受給「ばれないと…」 コロナ給付金詐欺 長崎県警に自首相談9件 全国でも摘発相次ぐ

詐欺グループから男性に送られた給付金の申請書類。収入額は「108万5240円」と虚偽の数字が記載されていた

 新型コロナウイルスの影響で収入が減り、打撃を受けた事業者などを支援する国の持続化給付金を不正受給する事件が全国で摘発されている。長崎県でも当事者やその親族が不正受給をしたと明らかにし、自首する旨の相談が9件寄せられていることが6日、県警のまとめで分かった。先月末、不正受給の勧誘を受けた男性は「税務署に調べられてもばれないと言われた」と証言する。

 9月24日、午後3時すぎ。長崎市内に住む30代男性の携帯電話に、「給付金で30万円が受け取れる」と書かれたメールが届いた。記載された電話番号にかけると、「独立行政法人補助金サポートセンター」のマツダと名乗る人物が出た。若い男の声だった。
 「一度、税務署に行ってください。5時で閉まるので、急ぎましょう」
 「こちらの行政書士が作成した書類を送りますので、必要事項を記入の上、郵送してください」
 マツダは手慣れた様子で指示を重ねた。勧誘の内容は、男性が税務署で確定申告の手続きを済ませ、個人事業主だと偽って100万円の給付金の申請書類を作成し、指示された場所に郵送。2週間以内に男性の口座に30万円が振り込まれるというものだった。
 まずはコンビニに設置されたコピー機のネットプリント機能を使い、行政書士が準備した申請書類6枚を受け取る必要があるという。男性は指示に従った。事前に伝えられた予約番号を入力して印刷された申請書類を見ると、昨年の収入額の欄に「108万5240円」とうその数字が記載されていた。「これは犯罪ではないか」。そう男性が聞いても、マツダは明るい調子で言い切った。「違法ではない。仮に税務署に調べられてもばれない」
 さらに男性は、申請書類と一緒に通帳のコピーとキャッシュカードを同封するよう要求された。理由を尋ねても、「信頼関係のためにも必要」と繰り返すばかり。差額の70万円は行政書士に払う手数料などと言われ、男性は詐欺だと確信した。いぶかしげに男性が質問を続けると、最後はマツダの方から「もう信用できなくなった」と言って乱暴に電話を切った。男性は税務署には行っておらず、それ以降の連絡はない。
 後に調べてみると、会社は実在しない架空のものだった。男性は振り返る。「ちぐはぐな点が多くて不信感だらけだった」

 県警によると5日現在、不正受給に関連する相談は9件を数え、「これは犯罪になるのか」や「息子が知人から勧誘を受けて不正受給をしている」などの内容が寄せられている。年齢は10~40代(不詳の2人含む)で、最多は20代の3人。職業は会社員3人、大学生2人など。一連の相談は6月ごろから届いており、詐欺容疑で事件捜査を進めているものもあるという。
 県警は「虚偽の内容を申請した時点で詐欺容疑になる。心当たりがある人は速やかに警察に連絡してほしい」と呼び掛けている。


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