震災や基地、「ガマ人間」に託して 川崎の市民劇団がオリジナル作上演へ

9月上旬に行われた公開リハーサル=川崎市中原区

 東日本大震災や沖縄の基地問題などをモチーフにしたミュージカルコメディー「ガマ人間あらわる」が、10月25日に中原平和公園野外音楽堂(川崎市中原区木月住吉町)で上演される。

 市民劇団・「月桃の花」歌舞団のオリジナル作品で、2015年2月の初演以来、内容をバージョンアップしながら全国で約30回の公演を重ねてきた。今回は新型コロナウイルス感染拡大により社会に広がる不安感なども劇中に盛り込み、感染対策を考慮して野外劇場で上演する。

 ガマ人間の「ガマ」とは沖縄の洞窟で、戦時中に避難場所などとして使われ、今も戦争の悲惨さを伝える場所だ。劇中に登場するガマ人間は、ガマガエルのお面をかぶり、人間の悲劇を金もうけにつなげることで進化してきた「最強人類」。南の島を舞台に、福島の原発事故から逃げてきた女性や、過酷なノルマを課すブラック企業から逃げ出してきた男性らが繰り広げるやりとりを、3人のガマ人間が冷ややかに見つめる…。

 9月上旬に同音楽堂でリハーサルが無料公開され、約30人が鑑賞。上演後には出演者と観客の意見交換も行われた。「ガマ人間」をどう捉えるかは人それぞれで、東京から観劇に来たという男性は「現代社会の中にも、繰り返してガマが生まれているんだと感じた。そのガマの中で苦しむ人があげる声を、誰かが聞いていかなければと感じた」と話した。

 今年は新型コロナの影響で、川崎での公演が京都に次いで2回目。出演者は「コロナ禍で文化の力が失われていったのがとても悲しく、なんとか屋外での公演を行っている。この劇を通して文化が持つ力を考えてもらえれば」と話している。

 10月25日午後4時半開演。入場料は一般2千円、25歳以下千円、高校生以下500円。チケットなど問い合わせはメールでinfo@gkabudan.jpまで。

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