8件の物件を購入、“資産5億円不動産”投資家がコロナ禍でも買い続ける理由

投資のひとつである「不動産投資」。コロナ禍では、新しい物件を買うのもためらってしまいそうですが、不動産投資家はどうしているのでしょうか。そう思って話を聞くと「今年、物件を新たに8件購入しました」という人が……。それが束田光陽さんです。総資産5億円を達成し、ファイナンシャルアカデミー「不動産投資スクール」講師も務める束田さんは、なぜ今、新たな物件を買うのでしょうか。話を聞きました。


割安物件も増えている

――前回の取材では、束田さんが不動産投資を始めたきっかけや初期のエピソードを伺いました。今回はそこからどう資産を拡大していったか聞きたいのです。ただその前に、コロナ禍での投資状況も知りたいです。素朴な疑問として……

そうですか、最近の話も面白いかもしれません。実は、今年に入って8件の物件を購入しているんですよ。

――8件ですか!? この状況下で……

コロナ禍で買うのはリスクがあると感じますよね。でも、私なりの戦略に基づいているんです。というのも、あくまで個人的な考えですが、不動産の価格には波があります。大きく振り返ると1990年代のバブル期に上昇して、その後下落。2005年辺りで底になりました。そこから2007年の不動産ミニバブルにかけて上がり、リーマンショックで一気に下落トレンドへ。2009年あたりに底となりました。

ここからまた上昇していくのですが、2011年の東日本大震災でふたたび下落へ。2013年頃まで下がりました。その後、アベノミクスで再度上昇。しかし、2018年にスルガ銀行の不正融資問題が起きてまた下落へ。コロナも相まって今年の上半期は、弱気の売り物件が増えた印象でした。

――となると、不動産は今、安値ということですか。

総悲観ではないですが、個別に見れば割安物件が増えていると思います。たとえば今年4月に購入した川越のマンション、仮に「マネプラマンション川越」としましょう。今年、この一室が340万円で売られていたんですが、ひと目みてお買い得物件だと思いました。

――どうしてお買い得だと確信できるんですか?

実はこのマンション、これまでに2件買っていて、今回3件目の購入となります(笑)。そして、過去10年以上に渡ってずっとこのマンションの価格をチェックしてきました。その中で、マネプラマンションにおける相場も熟知できたんです。

不動産は物件ごとに価格の相場があります。マネプラマンション川越なら「マネプラマンション川越相場」が存在するんです。具体的には、300万円〜500万円の間を行ったり来たりする状態。300万円に接近するのは不況のとき、あるいは内装がボロボロでリフォームしていない部屋。一方、景気が良くなったり、リフォーム済みの部屋であれば500万円に近づいていく。ずっと見てきて、この価格の動きが分かっています。

安いときに買い、家賃収入を得ながら価格上昇を待つ

――そう考えると、340万円は“安い”ということですね。

はい。今まで購入済みの2件も、300万円に近づいたときに購入して、そのあと景気回復の後に売却しました。しかも、価格が上がるまでの間は家賃収入を得られるので利回りで稼げます。株でいえば、高配当銘柄の株を安値で買って、景気回復までじっくり手元で持っているイメージですね。その間は配当を得られますから。

――なるほど、それで340万円で購入したんですね。

いえいえ、もちろん値切りましたよ(笑)。不動産は提示価格で買ってはダメです。特に今は世の中全体としては悲観的なので、価格交渉しやすい地合と言えます。私の中では300万円が底値ですから、その金額で交渉しました。ただ仲介会社さんもさすがにそこまでは難しい。ということで、最終的には310万円で購入したのです。

そしてこの話にはまだ、続きがあります。

実はその数ヶ月後、面白いことにちょうど隣の部屋が、400万円で売り出されたのです!そのとき、私には神の声が聞こえましたね。「この物件を買いなさい」と(笑)。

――そんなことがあるんですね……。本当に買ったんですか?

はい、買いました。ただし、今の相場、そして私自身が隣室を310万円で買っているという状況を考えると、400万円はちょっと高い印象でした。そして空室ということだったので室内も見せていただいたのですが、ピカピカでとても綺麗な状態でした。これなら400万円の値付けも納得できます。とは言っても、もちろん交渉はしました。

ちなみに、このケースではどうやって値切り交渉したと思います?

「追われる側」になる

――どうしたんでしょうか……。何か値下げさせる材料を探すとか……?

違います。そのやり方では、たとえ材料を探しても、不動産会社さんがうまく言い訳を考えてしまうかもしれません。僕はこう言ったんです。「実は隣の部屋を310万円で買っています」と。そして「この物件には何の落ち度もありませんが、隣室を310万円で買っている立場として、400万円は払えません。なんとか310万円に近づけることはできませんか?」と言ったのです。

こう言われると、否定のしようがないと思いませんか?本人の心情や気持ちって否定できないのです。たとえば「朝が苦手」という人がいたとして、その気持ちは否定のしようがないですよね。

――確かに……。ただ「それなら売りません」と言われたらどうするんですか?

そのときは、あっさりあきらめます。価格交渉のポイントは、深追いしないこと。相手が難色を示したときに「そうですよね、失礼しました」と立ち去れるかどうか。決して相手を追ってはいけません。相手から追われる状態を作るのです。

――言っていることは分かりますが、せっかくいい物件に巡り会えたなら「もったいない」と思ってしまいそうです。

私がそこであきらめられるのは、「世の中に不動産はいくらでもある」と考えるからです。それなら、1つにこだわらず別を探せばいい。下手に高い金額で買うよりマシです。よっぽどの運命の出会いでない限り、割り切りでいいんですよ。その方がうまくいきます。

コロナ禍での購入エピソードは、次回も続きます。

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