コロナ禍でもカローラが売れている! 半世紀の歴史を持つ老舗ブランドが今なお強い理由とは

1966年に初代がデビューして実に54年、現行型で12代目となる「トヨタ カローラ」。しかもただ歴史が長いだけではなく、世界累計4700万台以上というとてつもない台数を販売してきた大衆ブランドでもある。コロナ禍の中でも販売台数を維持し続けるビッグネーム、カローラが売れ続ける理由とは。国内の需要を調べてみた。

(左)トヨタ 新型カローラツーリング(ワゴン) HYBRID W×B[FF]/(右)トヨタ 新型カローラ(セダン) S[FF]

トヨタの強さが目立つ2020年度の販売状況

9月はトヨタ車でベスト5を独占状態に

2020年度上期で3位の販売台数を記録した「トヨタ カローラ」

コロナ禍の影響をモロに受けた2020年度の国内自動車業界の中でも、トヨタ車は好調な売れ行きを示している。2020年4月から9月までの車名別販売ランキング※は1位がヤリス(ヤリス・ヤリスクロス・GRヤリス合わせ79400台)、2位がライズ(61035台)、3位がカローラ(55854台)と上位を独占。9月単月で見ると、1位からヤリス、カローラ、ライズ、アルファード、ハリアーと5位までを独占している状態だ。

2019年末から2020年にかけて新たに誕生したヤリスやライズの躍進ぶりも凄いが、老舗ブランド「カローラ」の安定感にも驚かされる。

※自販連(一般社団法人 日本自動車販売協会連合会)調べ[軽自動車を除く]

2020年から全店舗扱いとなった12代目カローラ

2019年9月発売の「カローラ」と「カローラツーリング」

現行型の12代目カローラは、ハッチバックの「カローラスポーツ」が2018年6月に先行し登場し、その後セダンの「カローラ」とステーションワゴンの「カローラツーリング」が2019年9月に発売された。

保守的なイメージも強かったカローラだが、デザインを若々しく一新。プラットフォームやエンジンなども世界共通で新規開発されたこともあって、今回のモデルチェンジで全車が車幅1700mmを超え3ナンバー化している。ただし5ナンバーサイズの従来型「カローラアクシオ」(セダン)と「カローラフィールダー」(ワゴン)も、ビジネス用途向けに特化した廉価なグレードのみが残され併売されている。

なお2019年の発売当初は東京地区を除きトヨタカローラ店専売だったが、2020年からはトヨタの全販売チャンネルでの取り扱いとなっている。

ライバルが次々と消え、結果的にほぼ独占状態となったセダン&ワゴン

すっかり絶滅したワゴン車市場で需要を一手に引き受けるカローラツーリング

ワゴンボディの「カローラツーリング」が一番人気

ハッチバック、セダン、ワゴンと3つのボディタイプを持つカローラシリーズは、2020年9月に合計13579台を販売し、販売ランキング2位とデビュー1年後でも好調な売れ行きを示す。シリーズの販売比率はどうなっているのだろう。

トヨタによると一番売れているのはワゴンタイプ。カローラツーリングとカローラフィールダーを合わせるとおよそ6割を占めているという。

1990年代から2000年初頭にかけて一大ブームを巻き起こしたワゴン車だが、現在国内ではほぼ絶滅危惧種の状態。そんな中で結果的に生き残ったカローラツーリングは、行き場をなくした多くのワゴン車ユーザーからの代替需要を集めているのだ。

さらに、子育てを終えたミニバンユーザーたちも受け入れているという点が興味深い。ミニバンの広大なスペースは不要だが、荷室の実用性は欲しい、という需要にマッチしたようだ。

若い世代も興味津々? 販売チャンネル拡大の効果も

首都圏のあるトヨタカローラ店にカローラツーリングの販売状況を聞いてみた。若手人気俳優の菅田 将暉やOKAMOTO'Sらが登場するTVCMでの訴求も効果があったようで、若いユーザーからの問い合わせも以前より増えてきてはいるとのこと。ただメインは従来型同様に40代以上の世代が占めているという。

一方で、カローラ店以外の販売店でも扱うようになったことで、これまで逃していた代替需要を確保することが出来る有難い存在になっているとは、首都圏のあるネッツ店の営業スタッフの声だ。

なおカローラフィールダーについては、貨客兼用に使える営業車需要として今も重宝されており、今もカローラシリーズ全体の1割近くを占めているというのも興味深い。

大衆セダンの需要を一手に引き受けるカローラ

カローラアクシオの後継となったセダンタイプの「カローラ」,ハッチバックタイプの「カローラスポーツ」はオーリスの後継車
カローラアクシオの後継となったセダンタイプの「カローラ」,ハッチバックタイプの「カローラスポーツ」はオーリスの後継車

ワゴンに続くのはセダンで、カローラとカローラアクシオを合わせておよそ25%。

3BOXとも呼ばれる古典的なボディタイプの4ドアセダンは、これまで各社共に大小様々なラインナップがあったが、近年はワゴン車同様にすっかり数を減らしてしまった。長年造り続けてきたカローラセダンの膨大な既納客からの代替とあわせ、大小セダン車からの乗換え需要が占めているとトヨタでは説明する。

残る15%弱が、ハッチバックのカローラスポーツ。実質的な先代モデルの「オーリス」やその前の「カローラランクス」といった既納客や、他社ハッチバック車からの代替需要がメイン。20代・30代の若いユーザーは流行りのSUVに関心が高く、カローラスポーツにはなかなか興味を持ってくれないとは、前出のネッツ店スタッフの声だった。

SUV版も!? 次なる一手も控え、カローラ人気はますますテッパンに

タイで発表されたSUV版「カローラクロス」

50余年に及ぶ歴史があり、既納客の代替需要だけでも圧倒的なボリュームを持つカローラ。そこへ他社の同クラスワゴンやセダンが次々撤退しており、カローラシリーズの需要もしばらく安定して維持出来るだろう。

とはいえ、他社を含めセダンやワゴン人気をさらっているのは、昨今のSUVブームの影響も大きい。新規の若いユーザーも最初からそこへ目が向いているようだ。既存の需要も今後徐々に減っていくのは目に見えている。

しかしそこはトヨタ。ちゃんと次の一手も用意しているのだから凄い。

2020年7月、トヨタはタイでコンパクトSUV「カローラクロス」を発表。タイでの生産により国内を皮切りに世界市場へ展開していくという。日本での発売は未定とのことだが、これは間違いなく日本へもやってくると見ていい。

現在のラインナップで従来のワゴンやセダンの代替ユーザー需要をごっそり確保しつつ、新型カローラクロスで新規需要も開拓するとは、他社からすれば脅威以外の何物でもない。カローラシリーズの人気も、当面テッパンのようだ。

[筆者:トクダ トオル(MOTA編集部)]

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