日本家屋をリノベーション。メリット&注意点、費用を安く抑えるポイントを解説

時代に合わせた最新設備を導入しつつ、古き良き日本家屋の風合いを生かしたインテリアに仕上げる古民家リノベーション。古民家に現代のインテリアを合わせる独特の風合いが人気です。柱や梁といった古民家の骨組みを残しながら、内装や外観を解体し、機能や使い勝手を高めるリノベーションには多くの魅力があります。建て替えるのではなく、あえてリノベーションをするメリットや、後悔しないリノベーションにするためのポイントを紹介します。

「日本家屋リノベーション」メリットとデメリット

古い日本家屋を建て直さずに、リノベーションするメリットとは? 最適なリノベーションにするために、注意点やデメリットも解説します。

メリット① 趣のある日本家屋を活かして和モダンを演出

懐かしく不思議な魅力のある日本家屋。リノベーションでは、そんな日本家屋の独特の味わいや趣を、最大限に活かしましょう。味わい深い質感の太い柱や梁は、日本家屋の特徴的な部分で、むき出しのまま利用するのがおすすめです。吹き抜けの高い天井、縁側や土間といった空間も、うまく残してリノベーションしましょう。

日本家屋は現代インテリアとも相性が良く、和モダンテイストにもぴったり。色合いや質感を意識すると洋風家具ともマッチし、洗練された空間が完成します。日本家屋の特徴を残しながら、現代的な設備や機能は最新の物を取り入れ、快適な暮らしを実現しましょう。

和室は完全に無くさずに、一室でも残す検討を

現代は多くの部屋にフローリングが採用されています。だからこそ、日本家屋らしい趣を活かすために、和室を一室だけでも残すことをおすすめします。畳の傷み次第では、張り替えも検討しましょう。畳は現代的な洋風インテリアとも相性がよく、モダンなイメージの琉球畳や、床暖房に対応した畳などもあります。

畳には調湿性や防音性など、一般的なフローリングにはないメリットもあります。最近では畳の良さに改めて気づく人が多く、洋風の新築住宅に畳スペースをあえて設ける家も増えています。

玄関からつながる開放的な「土間」は広い収納空間に

土間は玄関から土足で入れる便利なスペース。収納空間や子どもの遊び場所としても使えるため、リノベーションではそのまま残すのがおすすめ

「土間」は、土足で歩く玄関と履物を脱いであがる居室との間につくられた空間で、屋内と屋外の中間的な場所です。古い日本家屋では、主に台所として使われていました。この土間も、最近の新築の家で取り入れられることが多い人気の空間です。土間のある家には多くのメリットがあるので、リノベーションする際は残すのがおすすめです。

玄関から土足で活動できる土間があることで、玄関から室内につながる空間が開放的に感じられます。最近では、子どもが家の中で遊ぶスペースとして使っているケースも。遊び道具やアウトドア用品などの収納場所としても使うことができ、その利便性が注目されています。

メリット② 基礎の土台がしっかりとした強度のある建築物

古い日本家屋の柱や梁には、ヒノキやケヤキなどの木材が多く使われています。ヒノキやケヤキの強度は1000年落ちないといわれ、近年の新築住宅が採用している建材と比べると非常に頑丈な素材。素材の強度の高さからも、しっかりとした基礎の土台がある建築物と言えます。

しかもヒノキやケヤキの太い柱や梁は希少性が高く、新たに入手するのは困難です。もし手に入るとしても費用がかかります。資源を有効活用するという点においても、建物の基礎を活かしたリノベーションをおすすめします。

メリット③ 固定資産税の減額

固定資産税は、土地や家を所有している人が必ず納めなければならない税金。税率は、多くの自治体が標準税額(1.4%)を採用しています。固定資産税は、固定資産税評価額に対してかかるものですが、固定資産税評価額は築年数に応じて減額される仕組みになっています。

このため、新築物件に比べて中古物件の固定資産税は安く済むのがメリット。古民家を新築住宅に建て直すよりも、リノベーションする方が、固定資産税に関してはお得といわれるのはこのためです。

ただし「増築」をする際は要注意。増築によって床面積が増えた場合は固定資産税も上がる可能性があります。固定資産税のことを考えると、増築よりも間取り変更のリノベーションを検討しましょう。

「断熱性」対策をしても、一般住宅には満たない?

日本家屋は、湿度の高い日本の気候に対応するため、風通しの良さを重視して作られています。家の中を風が通るよう、風が通る方向に窓があったり、天井を高くしたり、障子やふすまを取り入れてきました。柱や壁のカビを防ぐため、土台や床下にも風が通る構造になっています。

伝統的な日本家屋の冬は構造上寒くなりがちなので、床や壁などに断熱リフォームを行うことが多くなります。その際、断熱材を施工するだけでは現代の一般的な住宅と同レベルの断熱性は確保できません。住宅の状態に適した断熱工事をする必要があります。

床暖房や薪ストーブを設置

冬場に冷え込むのが日本家屋の難点。趣のある薪ストーブで暖をとるのもひとつのアイデア。光熱費の節約にもなる

日本家屋の弱点は、冬場に暖房費のコストがかさんでしまうこと。エアコンで部屋全体をあたためるのが困難です。古民家が建設された当時の人々が使っていたのは囲炉裏や火鉢など。部屋全体ではなく、狭い範囲を温める方法で冬を過ごしていました。

こうした生活スタイルのような薪ストーブや掘りごたつ、あるいは床暖房を導入するのもおすすめです。古き日本の生活習慣を楽しんでみるのもひとつの方法。逆に夏は涼しく快適に過ごせます。

デメリット② 耐震性に注意が必要

1981年の耐震基準改正前に建てられた家は耐震性が低く、耐震リフォームが必要です。日本は昔から地震が多い国なため、日本家屋は揺れを吸収できるよう、免震性がある造りになっています。しかし長い年月の間に地盤が弱くなり、柱や梁などが劣化しています。

目に見えない部分が破損している場合もあるので、リノベーション前には必ず専門業者に調査を依頼し、物件に合った耐震リフォーム工事を依頼しましょう。物件によって耐震リフォームの内容や価格はさまざまですが、補強金具を取り付ける程度の工事であれば、費用相場は25~50万円程度です。

デメリット③ 予想以上に費用がかかってしまう?

施工費用が想定していたよりも高額になる場合があるというのは、古い日本家屋のリノベーションで注意しておくべきポイントです。中には新築住宅を建てる場合と同様、あるいはそれ以上の費用がかかってしまったという事例も。見た目ではわからない部分が劣化していることもあり、外壁や屋根、場合によっては構造のリフォームが必要なこともあります。中には、工事開始後に下地の劣化を発見し、追加工事が発生する事例も。

リノベーションをする範囲が広いと廃材も多くなるので、廃材処分費用がかかります。高齢になっても住み続けるために、バリアフリーを考慮したリフォームも必須です。当時はバリアフリーという概念がなかったため、日本家屋には土間をはじめ各所に段差が多いのが特徴。段差をフラットにしたり、手すりの設置工事が必要です。日本家屋をリノベーションする際には、予算に余裕を持って計画することをおすすめします。

日本家屋の「水回り」はリフォーム必須エリア

日本家屋といえば「かまど」でのお米炊き。とはいえ日々の料理には不便なので、最新式のシステムキッチンへリフォームが必要

日本家屋のリノベーションで必須なのが、キッチン、浴室、トイレといった水回りのリフォーム。昔の浴室はメンテナンスが大変で機能も劣るので、ユニットバスへ変更しましょう。昔ながらの和式トイレはウォシュレットに、キッチンも最新式のシステムキッチンに交換することをおすすめします。

水回りは特に老朽化が進むポイント。リフォームが必須です。日本家屋ならではのレトロな空間は魅力的ですが、設備まで古いと日々の暮らしにストレスを抱える原因になります。日常生活に欠かせない水回りを快適なものに改修するのは、古民家リフォームのポイントです。

日本家屋のリノベーション費用を安く抑えるポイントとは

意外に費用のかかる日本家屋リノベーション。同じ工事内容ならできるだけ安く済ませたいものです。どの業者に依頼すればいいのか、費用面を含め安心してリノベーションを任せられる工務店の選び方について紹介します。

地元工務店に依頼すれば費用を1000万円以下に?

日本家屋のリノベーションは、物件の状態などによって費用が異なります。物件の劣化具合によって工事範囲が変わってくることや、新しく導入するキッチンやお風呂などの設備をどのグレードにするかなどによっても費用に差が出ます。

高額になりがちな古民家リノベーションですが、業者の選び方次第では費用を安く抑えることができます。一般的に地元工務店は安く、大手リノベーション業者は高いといわれ、費用面で考えると地元工務店に依頼するのがおすすめです。

地方工務店が「安い」理由とは

リノベーション業者を選ぶとき、三つの選択肢があります。ひとつは全国展開をしている大手のリノベーション業者。次に、限られた地域内で展開している中堅のリノベーション業者。そしてもうひとつが地元密着で営業している地元工務店です。

地元工務店が割安である理由として、広告費をあまりかけていないことが挙げられます。営業担当者やデザイナーといった専任のスタッフも持たないことが多いので、人件費も抑えられています。

一方で、大手や中堅のリノベーション業者は広告宣伝費をかけ、さらに下請け業者を使うこともあるため、施工費用は割高になります。一概にはいえませんが、場合によっては1000万円近くも費用に差が出るケースもあるため、業者選びは慎重に行いましょう。

地方工務店に依頼するメリット

地方工務店は、現場管理を社長がすべて取り仕切ってくれるという安心感が魅力。依頼者との信頼関係を築くことによって、理想のリノベーションが実現

地元工務店は、品質やサービスにおいても魅力があります。大手や中堅のリノベーション業者の場合は、営業担当者をはじめ、デザイナーや現場管理の担当者など、複数の人とやりとりが発生することがあります。一方で地元工務店の場合は、社長自ら対応してくれることが多いのが特徴です。

リノベーション内容の相談から、工事が始まってからの現場管理など、すべて社長が把握することにより、伝達ミスや行き違いなども起こりにくくなります。トラブルが発生したときや疑問が出てきたときにも、まず社長に相談できるという安心感が魅力です。

地元で長く続いている工務店は特に、依頼者との信頼関係を大切にする会社が多いので、密にコミュニケーションをとって信頼関係を築けば、さまざまな要望に応えてくれます。工事後のトラブルも相談しやすく、アフターサービスも安心だといえます。

地方工務店に依頼するデメリット

メリットが多い一方で、地元工務店のデメリットもあります。多くの施工例を持ち、一定のクオリティを保っている大手や中堅のリノベーション業者との違いは、施工品質にばらつきがあることです。サービス精神旺盛で真摯に対応してくれる業者がある一方、クオリティの低い施工をされてしまうリスクもあります。

要望には応えてくれるもののプロとして提案をしてくれない、クレームを伝えても対応が遅い、あるいは対応してくれないなど不誠実な業者も存在します。地元工務店には当たり外れがあると考え、慎重に見極めてから依頼しましょう。

安心して任せられる、工務店選びのポイント

リノベーションを成功させられるかどうかは工務店選びにかかっています。理想的なのは、漠然としたリノベーションのイメージを形にしてくれる業者です。地元工務店の中には、工事が得意でもデザインセンスや提案力の部分で物足りなさを感じるケースもあるかもあります。

見極め方として、リノベーション実績の有無はひとつのポイントになります。工務店の公式サイトに載っている施工事例の中に好みのテイストがあって、日本家屋のリノベーション実績があればなお理想的です。各社の実績を見比べながら、口コミも確認し、実績の数だけでなくサービス面においても評価が高い工務店をチェックしましょう。

古民家のリノベーションには、経験の豊富さが求められます。古民家の構造に詳しく、古い木材の扱い方などについてきちんとした知識がないと、残せるはずだった部分を活かせないといった事態にもなりかねません。その土地ならではの気候などに合ったリノベーションを提案してくれる地元工務店がベストです。

予想以上に費用がかかることもある日本家屋のリノベーションですが、国や自治体の補助金制度が利用できることがあります。特に耐震リフォームやバリアフリーリフォームなどは対象になりやすいので、工事内容が該当するかを事前にリフォーム会社に確認しましょう。

日本家屋のおしゃれなリノベーション事例

ここからは、実際に日本家屋をおしゃれにリノベーションした事例を紹介します。

ナチュラルカラーの外観は、新築当時を思わせる

古民家リノベーションでは外壁を一新するのが一般的なので、外観はナチュラルカラーの木材で統一することも可能です。木目を生かしたナチュラル系の木材で、まるで新築当時に蘇ったような印象になります。

板張りの日本家屋はモダンな印象に

板張りの外壁は日本家屋のリノベーションと好相性。凛とした雰囲気のモダンスタイルに仕上がります。立体的な見た目もアクセントとなっています。独特の美しい存在感があり、経年劣化とともに変化していく風合いも楽しめます。

玄関アプローチが美しい日本家屋リノベーション

barako00さんのインスタグラムより

帰宅した家族をやさしく迎え、訪れた人をあたたかく歓迎するような美しいアプローチが印象的な日本家屋リノベーション。家の顔となる玄関は、家そのものの印象を左右する重要な場所です。傍らにそっとたたずむ日本庭園も味わい深い雰囲気です。

温かみのある石畳が印象的な土間空間

minotake0530さんのインスタグラムより

「広々とした玄関土間」を活用できることは、日本家屋リノベーションの醍醐味。収納スペースにも、キッズスペースにも、用途はさまざまです。

日本家屋のリノベーションにはお金も手間もかかりますが、古いものを大切に使う暮らしは、不思議な懐かしさや落ち着きをもたらします。古い素材が使われている日本家屋は、リノベーション後も手入れが必要です。その分、古き良き日本のライフスタイルに想いを馳せ、丁寧に暮らす日々には魅力が詰まっています。

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