女性の退職や再就職で一生涯の手取り収入はいくら変わる?

結婚や出産、子どもの成長、介護などをきっかけに、働き方を見直す女性は多いでしょう。しかし、退職や再就職で「一生涯の収入」がいくら変わるかまで意識したことはありますか? 例えば年100万円の違いは30年間だと3,000万円にもなりますし、厚生年金に加入して働けば老後の年金受給額も増えます。

収入が増えれば、その分子どもの教育費や家族でのレジャー費などにお金を使うことができます。働くモチベーションを上げるためにも、働き方を変えるとどのくらい収入が変わるのかを理解しておきましょう。


30年間で家1~2軒分の金額に

退職や再就職を考えるとき、「退職しても生活できそう」「働いたら家計が楽になりそう」など、直近の家計のことだけ考えて決断する女性が多いのではないでしょうか。しかし、働き方を変えることで変わる「合計金額」にもぜひ注目してみてください。1年だとそれほど大きくない金額でも、10年や20年といった長い期間で考えると大金になります。

具体的な例として、年収100万円、200万円、300万円のパターンについて、働く年数ごとで「合計の手取り収入」がいくら変わるのかをみてみましょう(表1参照)。

このように、年収100万円でも30年間働けば3,000万円もの大きな金額になります。年収300万円なら7,200万です。パートやフルタイム勤務などで働くということは、長期間続けられれば家が1軒や2軒建てられるほど大きな金額になるのです。

厚生年金に加入して働くと老後の年金も増える

さらに、もしも厚生年金保険に加入して働く場合には、老後にもらえる老齢厚生年金の金額を増やすことができます。厚生年金は、公務員や会社員のほか、パートでも一定時間以上働くなどの条件を満たすと加入することになります。

それでは、年収や働く年数によって老齢厚生年金がいくら増えるのかをみてみましょう(表2参照)。厚生年金受給額の合計増加額は、「働くことで増える老齢厚生年金の受給見込み額×受給年数」です。

ここでは老齢厚生年金の受給見込み額は、簡易化した式である「平均月収×5.481/1000×加入月数」から計算します。受給期間は90歳まで生きると仮定して、65歳から90歳の25年間と仮定します。なお、年収100万円のケースは通常厚生年金に加入しないので、増加額は0円としています。

例えば年収300万円で30年働くと、厚生年金の受給見込み額は年額約49万3,000円増えます。25年間受給すると合計で1,200万円以上の大きな金額になります。

また、もしも正社員などで長期間働くことでまとまった退職金を受け取ることができる場合には、さらに一生涯の手取り収入は増えることになります。

女性の働き方で実現できるライフプランも変わる

このように、働き方によって一生涯の収入金額は大きく変わります。女性がいくら稼ぐのかによって、日々の生活費にかけるお金だけでなく、「マイホームを買うか買わないか」「子どもを何人産むか」などのライフプランにも影響してきます。

そのため、女性が今後の働き方を考えるときには、1人で悩むのではなく、将来叶えたいライフプランのことも考えながら夫婦でよく話し合って決めたほうがいいと思います。女性の働き方に決まった正解はありませんが、収入に与える影響を理解したうえで、夫婦で納得いくまで話し合った結論であれば、それがその家族にとっての「ベストアンサー」と言えるでしょう。

フルタイム共働き家庭で計画しているとリスクにもなる?

なかでも、現在夫婦ともにフルタイムで働いている共働き家庭は注意が必要です。もしも育児や介護による休職や退職、ボーナスカットや失業などで収入が減ると、とたんに家計が苦しくなることがあるからです。パートナーがすでにめいっぱい働いている状況では、働いて収入を増やすという手段が取れないため、支出を削って家計を立て直すほかありません。

フルタイム共働き家庭ではいつ収入が減っても対応できるように、「働けるうちにたくさん貯金しておく」「住宅ローンなどは片働きになっても返せる金額に抑える」などを意識しておくことが大切です。

働くメリットはお金だけではない

本記事では収入に着目しましたが、働くことは収入だけでなく、スキルや人間関係なども獲得できる絶好の機会です。働くスキルや実績があれば、万一の離婚や夫の失業などの緊急事態が起こっても対処しやすいですし、仕事で関わるさまざまな人との交流の中で視野が広がる機会も得られるでしょう。

以前に比べると待機児童の解消やテレワークなどの普及は進んできていて、少しずつ働く環境も変化しています。家庭と仕事の両立は決して簡単ではありませんが、「子どもの大学資金のため」「家族のレジャー費のため」などの明確な目標があれば、夫婦で協力して乗り越えることができるのではないでしょうか。ぜひ前向きに今後の働き方について考えてみてください。

© 株式会社マネーフォワード