ジープが電動化、「レネゲードPHEV」刷新された走行性を体感した

世界中でこれほど知られているブランドも珍しいのではないでしょうか。悪路を含めた優れた走破性を持つ「ジープ」ブランドにおいて、日本で一番売れているのが「レネゲード」です。世界中のモビリティが電動化に合わせるようにジープもこのレネゲードに「PHEV(プラグインハイブリッド車)」を設定し発表しました。11月28日の発売前に早速試乗してみました。


ブランドでもっともコンパクトなSUV

レネゲードはフィアットの500XというクロスオーバーSUVとプラットフォームを共有化するコンパクトSUVです。

コンパクトとは言っても全長こそ4255mmですが、全幅は昨今のデザインの流れからも日本での道路事情を考慮すると少しだけ大きめの1805mmになります。

とはいえ、レネゲード北米や欧州でも大ヒットしており、日本の一般道でも扱いやすく、それでいてジープならではの悪路走破性も有しており、まさにオールラウンダーな1台として、日本のジープブランドでも最も多く売れているモデルです。

4×4ではなく4×e

ジープブランドで良く見かけるのが「4×4(フォー・バイ・フォー)」のエンブレムです。見た通り、4WD(四輪駆動)を表しているのですが、今回登場したPHEVには「4×e(フォー・バイ・イー)」という新世代のシステムを搭載しました。

4×4ではなく「4×e」。ブルーのアクセントでエコ性能もアピールします

簡単に言えば1.3Lの直4ターボに前後2つの電気モーターを搭載します。ユニークなのは普通4WD車は駆動力を配分するためにクルマの中央にドライブシャフトが配置されているのですが、レネゲードの場合、モーターが独立しているのでドライブシャフト自体が存在しません。

実際乗ってみると後席足元の中央は「膨らんでいる」のが普通なのですが、それ自体がありません。このようなちょっとした変更にも新しい時代の4WD車であることを感じます。

2モーターの役割

前後に2つのモーターを搭載するレネゲードですが、フロントモーターはエンジンに直結しており、主に駆動用バッテリーへの電源供給を行いますが、リアモーターは後輪の駆動を専門に行います。特に後述するEVモードでは後輪のみで駆動します。搭載するバッテリーは11.4kWhのリチウムイオンバッテリーでEVモード、つまり電気だけで最大48kmも走ることができます。

3つのドライブモードが魅力

レネゲードのPHEVには3種類のドライブモードが搭載されています。走行状況を車両側が見て最適にエンジンとモーターを制御する「ハイブリッド」、EV走行をメインとする「エレクトリック」、そしてバッテリーの消費を抑える「Eセーブ」です。

3種類のドライブモードはインパネ下部に設置されたスイッチを押すだけで切り替わります

他社のPHEVを見るとバッテリーを走行中にもアクティブに充電させるために「チャージモード」という機能(クルマによって名称は異なります)を搭載しています。もちろんこれを使えばエンジンを積極的に回すのでガソリンの消費は増えることになります。

一方でレネゲードにはこのシステムが搭載されていません。実際の試乗については後述しますが、基本はEVで走り、電気を使い切ったらエンジンを始動させる、という考えです。

では使い切ったらどうするのか?という疑問も当然湧いてくるわけですが、前述したハイブリッドモードを基本とすれば、常に効率の良い制御をしてくれるのでそれほど悩むことはないでしょう。

筆者も実は他社のPHEVに乗っていますが、早朝や深夜など周辺の住民に迷惑をかけたくないのでその際はEVモードで入出庫を行っています。実際、家に帰ってきた時に電池が少なくなりエンジンが始動するのがイヤ、という人もいるはずです。

そのために「Eセーブ」モードを使えばあらかじめ電池の容量を維持し走ることができるのです。

モーターだけでも余裕の走り

今回横浜周辺を試乗しましたが、前述したようにまず基本がEVで走行することからも、何よりも静かであることは言うまでもありません。

レネゲードには「リミテッド」と「トレイルホーク」という2つのグレードが設定されていますが、同じエンジンながらチューニングが異なることでトレイルホークの方が最高出力が48馬力もパワフルです。確かにこの差は高速道路の追い越し(エンジンがかかっている状態)では俊敏に感じることも多いのですが、高速道路でも意外なほどEVで走ってくれたので、普段の生活ではそれほど気にする必要はありません。

リミテッドでも十分ですが、トレイルホークの加速はさすが、と呼べる瞬発力です

何よりもEVメインで走っている時はアクセルの操作に対し、レスポンスが良く、スーッと加速する感覚は従来までのレネゲードに新しい走りの世界をプラスしてくれます。

4WDシステムも新世代へ

冒頭に述べたようにドライブシャフトをも持たない4WDシステムを搭載することで実は悪路走破性も向上しているとのことです。実際、悪路は走れませんでしたが、モーターはエンジンに比べ制御自体を圧倒的に細かく行うことができます。

「Jeepセレクテイン」と呼ばれるシステムは通常は「AUTO」で十分ですが、路面状況に応じて「SPORT」「SNOW(雪)」「SUND(砂)/MUD(泥)」そしてトレイルホークのみに「ROCK(岩場)」が搭載されています。さらにこのモードを生かす2つの「eAWD」システムが搭載されており、さらに高いパフォーマンスを実現することができます。

ちなみにEV用バッテリーやモーター、さらに最新の4WDシステムを搭載しながら、リミテッドで最大40cm、トレイルホークで最大50cmの渡河性能を持っています。この点はさすが世界で鍛えられ、高い評価を持つジープならではと言えます。

どちらを買えばいいのか?

前述したようにリミテッドの価格は498万円、トレイルホークは503万円と、その差はわずか5万円しか違いません。しかしトレイルホークは最高出力や4WDシステムでもリミテッドと差別化が図られており、これならばトレイルホークの方がお得、と普通なら考えてしまいます。

リミテッドには専用の17インチアルミホイールと3シーズンタイヤを標準装備します

しかし、リミテッドにはトレイルホークに無い快適装備が数多く標準装備されています。これらが搭載されることでこの価格差に収まっていると言ってよいでしょう。

具体的には「レザーシート」「運転席電動パワーシート」「シート&ステアリングヒーター」、そしてADAS(先進運転支援システム)であるACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)はリミテッドのみ、トレイルホークには普通のクルーズコントロールのみが装着されます。

一方でトレイルホークはパワートレーン系のみならず、悪路走破時に燃料タンクやサスペンション、トランスミッションなどを保護するスキッドプレートが搭載されています。

最終的には好みとなりますが、従来までのジープユーザーやブランドを理解している人などにはトレイルホークがオススメですが、販売好調のジープブランドをさらに牽引するためには新しいユーザーの獲得が必至です。

今回のPHEVはタフでありながら都市にもマッチするデザイン、さらにPHEVが持つ快適な走りや環境性能を考えた場合、他社からの乗り換えにも十分魅力的と言えます。

その点ではリミテッドは多くの人にオススメできます。もちろんベースのレネゲードに比べれば100万円以上車両価格は上昇しますが、それを補って余りある程の魅力がこのクルマにはあると感じます。

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