バリュー株とグロース株って何?株式投資における自分の投資スタイル

昨年までは日本各地で個人投資家向けの講演があり、参加者と懇親会で投資談義していましたが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大で、基本的には対面での講演はなくなってしまいました。しかし、秋ごろからはオンラインセミナーが増え、例年と同じように投資談義に花を咲かせられるようになりました。最近話題に上がったのは、バリュー株投資とグロース株投資について。投資の世界に長くいる人からすれば、度々耳にするテーマでしょう。今回は定番の投資スタイルの話を共有します。


アクティブな投資手法も身に付けよう

個人投資家の資産形成といえば、手数料の安いインデックスファンドとNISAやiDeCoなどの非課税制度を利用したつみたて投資が一般的になってきました。知識量や経験量に影響を受けず、投資に対してリソースを割かなくてもいいことから、この投資スタイルは王道とも呼ばれます。しかし、一部でこの投資スタイル以外を認めない極端な価値観を持つ投資家の発言も目にします。それはおかしな話で、自分のお金を運用する以上、他人にとやかく口出しをされる筋合いはないのです。

投資スタイルには積極的に投資先を探して、将来大きく伸びていくと期待できる企業に投資をする手法もあります。この場合は世界各国の経済情勢、各産業の動向、各企業の業績など幅広く調査・分析をしなくてはいけないため、投資に対してそれなりのリソースを割かなければいけませんが、自分の描いたシナリオ通りの展開になったときの喜びは金銭的なリターン以上のものがあります。

積極的に投資先を探す際にも、実は流派が分かれることが多くあります。代表的な区分けが、バリュー株に投資をするか、グロース株に投資をするかです。あらかじめ書いておきますが、これもまたどちらが正しいなどと対立軸で理解するものではなく、大きく2つの志向に分かれるということです。

バリュー株投資とは?

ではバリュー株とは何を指すのでしょうか。日本語で説明すれば、企業の実態価値に比べて現在の株価が割安である株を指します。ここでいう企業の実態価値を測る指標としては、PER(Price Earning Ratio、株価収益率)やPBR(Price Book-Value Ratio 株価純資産倍率=株価÷一株当たり純資産)と呼ばれるものがあります。PERは株価を1株当たりの利益で割り、PBRは株価を1株当たりの純資産で割って算出します。

PERは他の企業、特に競合企業の数字と比較して使うことが多くあります。たとえば、A社のPERは12倍だが、競合のB社とC社のPERはそれぞれ22倍と24倍なので、A社は割安である、といった具合です。

また、企業の資産額から負債額を差し引いたものが純資産額になりますが、PBRは前述の通り株価を1株当たりの純資産で割って算出します。よって、理論上はPBRが1倍を下回っている場合は、その時点の株価で企業を買収し、清算してしまえば儲かるわけですから、一般的にはPBRが1倍を下回っているときは割安といえます。

注意してほしいのは、「理論上は」という点です。実際にはそう簡単に全ての株式を買い占めることも難しいですし、買収も清算も費用が掛かるわけですから、話はそれほど単純ではありません。だからこそ、実際にはPBRが1倍を下回っている株式が市場には多く存在し続けているのです。

グロース株投資とは?

一方でグロース株とは何を指すのでしょうか。こちらも日本語で説明すれば、現時点から更なる成長が期待できる株を指します。多くの投資家が成長が期待できると思えば人気が集中するので、当然株価は上昇していきます。結果、株価が上昇すればするほど、先程のPERやPBRといった株価指標からみると、割高に見えるようになります。こうなると、バリュー株投資を好む投資家からすれば、とても投資できる株ではなくなります。

しかし、期待通り企業が高成長を遂げれば、割高な株価も解消されていきます。極端な例を挙げれば、株価が同じままで1年後利益だけが倍増すれば、前述の式に当てはめるとPERは半分になるのです。そうなればバリュー株投資をする投資家も割安と買いに来るかもしれないわけですから、さらに株価が押し上げられます。先回りして買っていたグロース株投資家からすれば、シナリオ通りで満足な投資結果になるでしょう。

とはいえ、グロース株投資はバリュー株投資よりも銘柄選定が難しくなります。バリュー株投資の場合はPERやPBRといった株価指標を見ながら銘柄選定が出来る一方で、グロース株投資の場合はその企業の競争力や独自性、ポテンシャルなどを見抜かないといけません。自分のシナリオを信じ続けられる根拠を見つけ出す作業が楽しいという投資家もいますが、投資後に自分のシナリオに固執しすぎない柔軟さも求められるでしょう。

重要なのはテーマやセクター

さて、バリュー株投資とグロース株投資について書きましたが、前述通り、どちらが正しいということではありません。実際にデータを見てみても、バリュー株のパフォーマンスがいい時期もあれば、グロース株のパフォーマンスがいい時期もあるなど、どちらかが一方的にいい成績を上げるわけではありません。また、バリュー株とグロース株それぞれを自身のポートフォリオに組み込む投資家は個人・機関問わず多くいます。

個人的にはバリューやグロースの観点だけではなく、テーマやセクターの観点も持ちながら、複合的な視点で銘柄選定をすべきだと考えています。

たとえば、コロナ禍においては外出を控える人が増え、対面のサービスで収益をあげてきた企業の業績が落ちる代わりに、非接触型のサービスを提供できる企業は成長機会が広がったわけです。このような環境下であれば後者に該当する企業群から投資先を選んだ方がよく、そのなかでバリューかグロースの観点から銘柄を選ぶという話になるのです。このように複数の視点でアクティブに投資先を選ぶことにも挑戦してみましょう。

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