長崎県庁跡地「交流支援」機能も 県警本部跡地含め3案

 具体的な活用策が固まっていない長崎市江戸町の長崎県庁跡地について、県は新たに、県民や企業、学生らの交流を促し、新ビジネス・産業の創出や人材育成に役立てる「交流支援」機能の整備を検討している。三菱総合研究所が県の委託で作成した同跡地の基本構想検討報告書で提案。近くの県警本部跡地(万才町)を含めて、従来挙げてきた「広場」「情報発信・飲食(交流・おもてなし)」を合わせた三つの機能を整備する案となっている。
 県庁跡地は16世紀の長崎開港後、江戸時代初期の禁教令前まで存在したキリスト教の国内拠点「岬の教会」など、歴史的に重要な施設が代々立地。同市の「文化芸術ホール」建設が計画されていたが、県教委が昨年度行った埋蔵文化財調査で江戸期の長崎奉行所遺構などが見つかり、市は1月に建設を断念した。
 今回の報告書などを基に、県は来春以降、周辺の整備基本構想をまとめる考え。懸案の活用論議が今後、再び動きだしそうだ。
 県県庁舎跡地活用室によると昨年9月、「ホール」「広場」「交流・おもてなし」の3機能を前提に、基本構想の検討を三菱総研に委託。途中から「ホール」を除いて進めたが、新型コロナウイルスの影響で作業が遅れ、予定より2カ月遅れの9月末に報告書が提出された。概要は10月に県ホームページで公開した。
 これによると、にぎわい創出のための広場や観光客向けの歴史情報発信、飲食といった機能の整備を従来案として維持。その上で、ホールに代わる新機能として交流支援を掲げた。
 交流支援機能の具体例として、県庁跡地ではイベントスペースや研修施設、オープンカフェなどを提示。県警本部跡地に企業オフィスや大学のサテライトキャンパス、企業と大学の共同研究施設などを整備する案も示している。
 歴史関連では、現存する江戸期以来の石垣や、県庁旧第3別館(旧長崎警察署)の保存・活用を提言。一方、県庁跡地での歴史建物復元については、重層的な歴史性を理由に「特定の時代の建物を復元することは難しい」としている。
 同跡地では長崎奉行所遺構の発掘が来春まで続く予定で、基本構想の策定はその後となる。同活用室は「報告書について関係先への説明に着手しており、議会などの意見も聞いた上で、県としての考えをまとめたい」としている。

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