家賃を半分出してもらったばかりに…お金の格差で男女の関係がギクシャク、34歳女性の出した結論

コロナ禍において、女性の貧困が話題になっています。ただでさえ2019年度、1年を通して働いた給与所得者の平均収入は、男性が540万円、女性は296万円となっています。勤務形態の違いはあるかもしれませんが、厳しい男女差は続いています。派遣や契約が多い女性の場合、コロナ禍での雇い止めも耳にするようになりました。


契約切れのまま退職へ

6月末の契約満了で、次の契約をしてもらえなかったというミフユさん(34歳)。

「4月からテレワークでしたが、仕事じたいがあまり回ってきませんでした。結局、このご時世で会社も危機状態、延長はできないと言われてしまったんです。もちろん退職金もありません。ある種の専門職ではあったのですが、他社でも空きはなく、なかなか次の仕事が決まらない。本気で焦りました」

失業給付は翌月から出たものの、ミフユさんは不安が募ってアルバイトを始めました。失業給付をもらっている場合、週に20時間以上は働けないため1日4時間、週に4日ほど働いていたといいます。

「あとはとにかく節約するしかなかった。7月になってようやく近所の図書館を利用できるようになったので、バイト以外はほとんどそこにいました。冷房代が浮きますから。ただただ、つらかったですね」

ミフユさんには昨年秋からつきあい始めた彼がいます。3歳年下の彼は、4月以降、ほとんど在宅勤務でしたが7月には、週4日ほど出社することになりました。

「4月以降はあまり会わず、テレビ電話でのデートが続きました。在宅勤務とは名ばかりであまりやることのない私と、在宅でけっこう忙しかった彼。私としては羨ましいような寂しいような。やはり正社員は強いなと思いましたね」

ハローワークにも足を運びましたが、とにかく人が多くて完全に「密状態」だったそう。もともと堅実な生活をしていたミフユさんには、いくらか貯金がありましたが、それも失業給付が終わったら取り崩すしかありません。一度崩したらもう貯められない。それが怖くてたまらなかったそうです。

家賃を補助すると彼に言われて

そんなとき、彼から連絡がありました。

「大丈夫かって。そんなこと聞くのは失礼だと思っていたから言えなかったけど、精神的にも経済的にも自分が役に立てるなら何とかするからと言ってくれたんです。本当にうれしかった。彼とつきあって1年もたってないし、あんまり愚痴ると嫌われると思って、会社を辞めさせられてから2週間ほど何も言えなかったから」

ミフユさんは孤独感も手伝って、彼の勧めるままに家へ行き、思い切り彼に愚痴り甘えました。彼もいろいろ思うところがあったのでしょう、その日は朝まで語り合ったそうです。

「帰りがけに彼がぽつりと言ったんです。『こんなこと言ったら気を悪くするかもしれないけど、ほんの少ししか助けられないけど、よかったら家賃を半額もつよ』って。彼は会社の借り上げマンションで生活しているので、ほとんど家賃がかかっていないんです。だから半分くらいならなんとかなると。私も真剣に仕事を探さないといけないし、それにはアルバイトをしている時間が惜しかったので、彼の申し出を受けることにしたんです」

8月に入り、彼女は仕事探しに全力を傾けるようになりました。ところが彼からたびたび連絡が入ります。返事をしないと、「どこにいるの?」とメッセージが立て続けにやってきます。彼女は監視されているような詮索されているような気分になっていきました。

「彼は心配しているだけというのですが、家賃を半分出しているから、私の行動を把握する権利があると思っているのではないかと疑わざるを得なかった。私の思い過ごしかもしれないし、負い目がそう思わせたのかもしれませんが」

彼の言葉に笑えなかった

9月末になっても彼女の仕事は決まりませんでした。今までとは違う仕事でもかまわないと応募し続けましたが、なかなか面接にさえ進めません。それでも数十件、面接にこぎつけました。

「全滅です。落ち込んでいると彼が、『今まで10年以上も社会人やってきて、自分のウリになることもないの?』と言い始めて。一応、専門職だったのだし、コロナ禍でその枠が減っているのも事実なわけで……。そんな責めるような言い方をするなんてとショックを受けていると『家賃がいつまでも援助されると思わないでね』と笑いながら言ったんです。さらにショックでした。私の顔を見て彼はあわてて、冗談だよ、笑ってもらおうと思っただけと言い訳しましたが、笑えるわけがありません」

彼女は10月始めに彼から手渡された家賃半額分を受け取りませんでした。そしてその前の3ヵ月分も叩き返しました。貯金を崩して……。

「定期預金を取り崩したときはチェッと思いましたが、『金輪際、会わないから』と彼の前にお金を入れた封筒をバンッと叩きつけたときはスッキリしました」

どんなに困っても、つきあっている段階で相手の経済力に頼ると関係があっという間に平等ではなくなる。ミフユさんはそのことを心に刻み込みました。今年中に仕事が決まらなければ、彼女は故郷に帰るつもりだそうです。

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