江戸時代の指南書に学ぶ ナンピンはすべきか、避けるべきか

新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない中でも、株式市場は堅調な展開が続き、日経平均は29年半ぶりの高値水準となっています。29年間のうちで高値という水準ですから、29年の間に日経平均を買った人は皆利益が出ているという状況です。

実際には全員が利益出ているということでもないですし、これまでの損失が大きいという人も多いと思います。一方、ずっと保有していたからこそ利益が出たという人も多いと思います。


「見切り千両」ともいうけれど

買った株が上昇して利益が出た場合、利益をどこで確保するかということも問題になります。逆に下落してしまった場合、損失が大きくなる前に売った方がいいのか、それとも我慢して持っていた方がいいのか、悩むことも多いでしょう。

もちろん、買うタイミングのも問題もあるのですが、当初の思惑と違った場合の行動で、まさに天国と地獄となります。

相場格言の中にも「利食い千人力」という場合もあれば、「利を伸ばせ」ともいうし、また「見切り千両」ということなども言われます。そして、株式投資をしていて一番失敗するパターンが「難平」(「ナンピン」と読みます)というものです。

具体的に説明すると、1,000円で買った株が800円まで下がったとき、さらに800円で買って買値の平均を900円にすることです。800円で買った後、900円まで戻ったところで売れば、損失が出ずに済むという仕組みです。このように800円で買うことを「難平」とか「難平買い」と言います。

なぜナンピンは危険なのか

どうして、このパターンで失敗することが多いのでしょうか?

実際に株式投資をしてみるとわかるのですが、買った途端に上昇するということはほとんどありません。逆に買った途端に下がり、売った途端に上がることの方が多いのではないかと思います。もちろん、一番安いところで買って、一番高いところで売るなどということは出来ないのですから、当たり前といえば当たり前なのです。

ただ、株価が下がると、「どこまでも下がる」と思って買うことができません。逆に上昇すると、どこまでも上昇するように見え、十分に上がっているにも関わらず高い水準で買ってしまうことが多いのです。

そして、高値で買ってしまった場合、どこまで下がるかと考えず、自分の買値まで戻すだろう、あるいは下がったところから高くなるだろうと錯覚してしまいます。

陥りがちな失敗パターン

よくあるのが、実際に自分が買わず、見ていただけの株がどんどん上昇してしまうと、高値でもまだまだ上がると思って買ってしまうケースです。いざ買った途端、これでもかとばかりに上昇していた株が下落に転じてしまうものです。

その後、どんどん下落し、売るに売れなくなってしまうことはよくあります。その際、買値が高いものだから、さらに安く買えば平均買い単価が下がると考え、追加で買ってしまうことがあります。

つまり、自分が高値で買ったことが失敗であるのに、さらに追加で買う。実際に「買い場」であるのかどうかにかかわらず、自分が買った値段より安い、というだけで買ってしまっています。

さらに深手を負うケースも

以前の記事で、「高値覚え」ということを説明しましたが、それ以上に追加で買ってしまうと、損失が倍になってしまうこともあります。だから、注意が必要なのです。

難平が全ていけないのかというと、そうではありません。高値で買ってしまったせいで、十分に値が下がるまで待てず、下落の途中に追加で買ってしまうからダメなのです。十分に下落し、これ以上下がることはないだろうというタイミングなら、難平もまた有効です。

現状のように株価が大きく上昇しているとき、そして急騰しているときにありがちな失敗なので、十分に気を付ける必要があります。

JT株での失敗

江戸時代の米相場の指南書などを見ると、「難平はするべし」というものと「すべきでない」というものがあります。ただ、難平すべきという意見も、難平として追加で買うというよりは、買い場が来て買うべきものがたまたま以前に高値で買い、放置していた銘柄だったという理由です。

実際に私も長い投資経験で、大失敗だったものもありますが、長期保有の場合は案外成功しているケースが多いです。

例えば、日本たばこ産業の株です。この銘柄は配当が非常に多いことで有名なのですが、配当利回りが7%ということで、まず2,200円水準で買ったのですが、どんどん下がってしまい。2,000円を割り込んでしまいました。

そこで一旦反発しそうだったので追加で買ったものの、ついに1,800円まで下落。結局、現在は2,100円台まで戻したことで事なきを得ましたが、一時はヒヤリとしたものです。

ナンピンするならこのやり方で

実際に2,000円で難平をするとしても、1,800円から戻す過程で買うというやり方がベストだったと思います。そうすればおそらく1,900円あたりで買うこともできました。大きな失敗ではないですし、「結果オーライ」ですが、ちょっとした失敗でした。

繰り返しになりますが、難平するならば、安くなったから買うのではなく、追加で買うタイミングだから買う、ということを心掛けた方がいいと思います。そうしないと大失敗につながり、大きな金額を塩漬けにしてしまうか、損失となってしまいます。

まさに、「素寒貧(すかんぴん)」になってしまうのです。

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