40代世帯年収1150万、子ども2人。6,000万のマンションは「背伸び」か?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、45歳、団体職員の女性。2人の子持ちで世帯年収1,150万ほどの相談者。6,000万円のマンションの購入を検討していますが、自分たちの財力と年齢で手が届くのかを心配されています。FPの渡邊裕介氏がお答えします。

実家を継ぐ予定だったため、結婚後ずっと賃貸に住んでいます。

当面同居はなしということで、中古戸建またはマンションを予算4,800万円で探しておりましたが、なかなか条件に合う物件に出会えておりません。2022年に完成予定の約6,000万円の駅前再開発の3LDKマンション購入を検討中。詳細物件金額・管理費・修繕費積立金は今年の10月に決定し、購入要望書を提出する予定です。同じ駅の駅前マンションは築年数が30年以上でも同じくらいの広さの部屋が3,500万円ほどで取引されております。

子どもが巣立つ15〜20年後に売却し、実家へ戻るつもりです。背伸びしすぎている物件だと思ってはいますが、売却前提で購入するのもひとつの方法かと思っています。これまで賃貸住まいで売却できる資産も住宅購入経験もなく、下記の点についてアドバイスいただければと思い、相談させていただきます。

1)固定資産税・管理費・修繕費積立金を含め、月収に対する住居費割合が高すぎるが、問題ないか。(ざっくりと計算したところ、手取り収入の35%以上で、夫婦共に正社員ではあるものの、どちらも民間企業勤務であり、今の収入がずっと続く確証はなく、一番不安です。)

2)問題ありの場合、購入の上限額。問題ありの場合、どれくらい頭金を入れれば安心して生活できるか

3)教育・老後資金準備を含めて、この購入額でライフプラン的に問題ないか(子ども二人とも高校・大学のみ私立の予定)

4)私の年齢が45歳のため、健康面から住宅ローンが組めるか

5)夫婦でのペアローンか、夫単独ローンか(別物件でした夫単独の事前審査では、5,000万円はOKでした)

貯蓄は3,000万円(うち子どもの教育費積立700万円)今後住宅購入時までに500万円程度追加貯蓄可能。現在時短勤務中の為、勤務時間を延ばすことで収入を増やそうかと考えています。購入充当予定の資金は約1500万円程度。以上、長文となりましたが、ご意見のほどよろしくお願いします。

【相談者プロフィール】

・女性、45歳、会社員、既婚

・同居家族について:夫(41)・会社員・月収33万。妻・団体職員(時短勤務)月収31万円。子ども2人(4歳、9歳)

・住居の形態:賃貸

・毎月の世帯の手取り金額:50万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:300万円

・毎月の世帯の支出の目安:40万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:10万5,000円

・食費:7万円

・水道光熱費:1万5,000円

・教育費:3万円

・保険料:1万9,000円

・通信費:1万7,000円

・車両費:1万円

・お小遣い:5万円

・その他:8万4,000円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:12万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:160万円

・現在の貯蓄総額:2,980万円

・現在の投資総額:0

・現在の負債総額:0

・住宅ローン(2022年完成予定物件):物件購入額約6,000万円、借入額未定、返済期間35年、金利未定


渡邊:こんにちは、ファイナンシャルプランナーの渡邊です。住宅購入についてのご相談です。将来売却について視野に入れた購入とのことです。もちろん、将来どうなるかは分からないですが、ある程度見通しを持った購入計画は重要となります。いくつか具体的なご質問があるので、それにお答えしながら購入について考えていきましょう。

前提条件として、手取り収入から逆算して、世帯年収が税込みで1,150万、内訳が夫750万、妻400万と仮定します。

ローンは月収の何パーセントが安全?

住宅を購入する際、世帯年収に対する住宅関連費用の支出割合は重要となります。金融機関が年収に対して貸してくれる返済比率と安心して返済出来る返済比率は異なります。

一般的に、金融機関が住宅ローンを組む際に基準とする返済比率は年収に対して35%程度といわれています。また、その際の審査金利は金融機関によって若干異なりますが、審査金利4%程度で計算する金融機関が多いようです。

では、安心して返済出来る住宅関連費用の割合はどれくらいでしょうか。

もちろん、世帯によって生活費もまちまちなので、生活の仕方によっても変わってきますが、大体年収に対して20~25%の範囲内に抑えるのをおススメしています。ご相談者の世帯年収が1,150万円とすると、年間で230万円~287.5万円となり、月々にすると約19~24万円となります。

修繕積立費を差し引いた適正な借入額は?

マンションの場合、管理費や修繕積立金が掛かります。大体の平均で2万~3万程度となり、タワーマンションなどはより高くなるケースもあります。仮に月に3万円とすると、純粋に住宅ローンに費やせる費用は16~21万/月となります。適正金額を計算する上での返済期間については、ご相談者は45歳ですので、働くであろう65歳までの20年間で考えると良いでしょう。仮に変動金利0.45%として、適正な借入額を算出すると、約4,000万~5,000万円程度となります。

実際に借りる際の借入期間については、30年や35年でも構いません。教育費の準備などライフプランと合わせて借入期間は設定しましょう。将来売却を視野に入れたとしても、売りたいときに売りたい金額で売れるとは限りません。結果として売却するとしても、長く住むことを想定して購入した方が良いでしょう。

どれくらい頭金を入れれば安心して生活できるか

この結果から、借入額は4,000万~5,000万円の範囲が安心して返済できる金額です。もし諸
費用込みで6000万円の物件だとすると、1,000万~2,000万円程の住宅用資金を準備出来ると良さそうです。頭金で入れるかどうかは、借入金額による住宅ローン控除の効果と照らし合わせながら考えましょう。購入時の年収によっては、あえて頭金を控えめにして、住宅ローン控除を最大限活用した上で、ゆくゆく繰上げ返済した方が、メリットが大きい場合もあります。トータル的に考える必要がありますが、少なくとも住宅用資金としては確保しておいた方が安心でしょう。住宅以外の教育費準備などの経済的な目標とのバランスも考える必要があります。

教育・老後資金準備を含めてライフプラン的に問題ないか

教育費として必要な金額について考えてみましょう。高校以降の教育費を私立で考えると、一人当たり大体700~1,000万円程度必要となります。家計の収支で年間教育費として100万~150万くらいは捻出できそうなので、準備しておく資金としては、約1,000万円くらいとなります。住宅用資金2,000万と教育費準備1,000万円と想定すると、ちょうど今の貯蓄額と同額くらいになるため、これから老後資金を貯めることが出来れば問題なく購入できる範囲といえそうです。

健康面から住宅ローンが組めるかどうか

住宅ローンを組むときには、原則、団体信用生命保険に加入します。もし健康に問題があり、団信に加入できない場合は、加入条件が緩和され審査が通りやすいワイド団信を取り扱っている金融機関を検討するか、団信加入が必須ではないフラット35を利用する方法となります。ただし、まったく保障がない状態で住宅ローンを組むのは万が一の時のリスクが高いためおすすめ出来ません。

ペアローンか単独ローンか

ペアローンにした方が良いかどうかは、夫婦お互いの年収や支払っている所得税・住民税の額によります。ペアローンのメリットとして、お互い住宅ローン控除が利用できることや、それぞれに団信(保障)が付帯されることがあげられます。

一方で、不動産の名義を持ち分で分ける必要があること、若干ですが手数料負担が増えることなどの注意点もあります。借り入れる時の年収や、今後の働き方の想定によって、ペアローンにするか、借入れ金額の配分についても考えていく必要があります。借入れ金額が決まれば、それに合わせていくつかのパターンでシミュレーションを作成し、よりメリットがある方法を選びます。

今回のまとめ

ご相談者は貯蓄力もあり、住宅ローンを組んだあとも貯蓄できる余力がありそうです。6,000万円の物件を購入しても、しっかりと返済計画を立てれば十分返済していく力はあるでしょう。ただし、あくまで共働きの前提となりますので、健康で働ける状態を維持すること、万が一の時の保障を整備することも並行して考えていく必要があります。ぜひ、トータル的な視点で理想の生活の実現を目指していただきたいと思います。

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