性被害後「二次被害」と提訴 女性信徒 長崎大司教区に損害賠償請求

 カトリック長崎大司教区に所属する男性神父から性被害を受け、その後の大司教区の対応により精神的な苦痛を受けたとして、長崎県内の女性信徒が15日、大司教区に550万円の損害賠償を求めて長崎地裁に提訴した。代理人弁護士2人が同日、長崎市内で会見し、宗教者による性被害と二次被害を受けた当事者の深刻な状況を明かした。
 訴えによると、女性は2018年5月、県内の教会で男性神父からわいせつ行為を受けた。女性は心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症。19年8月、大司教区は賠償金を支払うことで女性と合意した。
 長崎県警は今年2月、男性神父を書類送検。長崎地検は4月、不起訴とした。
 その後、大司教区内の会議で、高見三明大司教が「(女性は)『被害者』と言えば加害が成立したとの誤解を招くので『被害を受けたと思っている人』など別の表現が望ましい」と発言したとする議事録が神父らに配布された。議事録の存在を知った女性は、被害を前提に示談したにもかかわらず被害がなかったかのような表現にショックを受け、PTSDの症状が悪化したとしている。
 代理人は会見で「宗教は信者の魂や精神のよりどころ」と指摘。「世俗的な関係以上の信頼がある」神父による性被害について「ショックは非常に大きかった」と強調した。また、発言について「大司教区の代表者としての発言と捉えている」と述べた。
 女性は同日、代理人を通じ「怒り、憎しみ、悲しみが日に日に増している。大司教区の世間から外れた考えを改めてほしい」とのコメントを発表した。
 女性は長崎新聞の取材に、自身が症状に苦しむだけでなく、家族もショックを受けたことが苦痛をさらに増したと明かした。女性の母は別の神父に「昔の娘を返せ」と言い放つほど精神的に追い詰められ、体調を崩したという。女性は「自慢の娘でいられなかった。私は親不孝しました」と声を詰まらせた。
 大司教区は「訴状がまだ届いていないので回答は控える。届いたら適切に対応する」としている。


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