初の五輪、武道精神や礼儀作法もアピール 日本発祥を大事に、空手・形の清水

 東京五輪の空手・形女子で金メダルを期待される清水希容(ミキハウス)が五輪への思いを語った。(聞き手、共同通信=村形勘樹)

IOC総会で空手が東京五輪の追加競技に決まり、ポーズをとる(左から)喜友名諒、清水希容、植草歩、荒賀龍太郎=2016年8月、東京都江東区

 東京五輪は、空手界にとって初めての五輪。世界中から注目を浴びて選手が輝く舞台で、空手の魅力を世界中に伝えられる最高の場でもある。スポーツとしての面白さだけでなく、武道精神や礼儀作法といった本質をアピールしたいと思っている。

 ―これまでの五輪で記憶に残っているシーンはありますか。

 体操の内村航平選手(リンガーハット)や陸上のウサイン・ボルト選手(ジャマイカ)の活躍は絶対に見ていた。2016年リオデジャネイロ五輪の時は同じ所属のミキハウスの選手が出場しており、「次は自分も」という気持ちだった。

 ―14年の仁川アジア大会で選手村など五輪と似た雰囲気を味わいましたね。

仁川アジア大会で金メダルを獲得した清水希容の演武=2014年10月、韓国・仁川

 すごく貴重な経験だった。他競技の選手と一緒に泊まり、顔を合わせる。すごく大きな刺激になったのを覚えている。

 ―16年に空手の五輪種目入りが決まり、いろんなことがあったのではないですか。

 環境ががらりと変わった。海外遠征に複数のトレーナーが同行し、選手同士で撮影していた試合の映像も、担当の人がしてくれるようになった。今は支援のおかげで選手の負担がかなり減り、ストレスがなくなった。

―空手というスポーツの注目度も上がりました。

 メディア露出も圧倒的に増え、認知度も高まった。以前は「形って何?」と言われることが多かったが、知らない方が試合の応援に来てくれて「ファンです」「私も空手を始めました」などと声をかけられることも。空手界にとってすごく大きなことだった。

 ―五輪で是非アピールしたい、空手の魅力を教えてください。

 日本発祥の武道という部分を大事にしたいと思っている。外国人の中には、日本とか日本の歴史が好きで空手をしているという人も結構いる。また、以前は空手というとちょっと怖いというイメージもあったかもしれないが、そこを変えるチャンスでもある。

東京五輪のマスコットとともに関連イベントに参加する清水希容=2018年7月、東京都江東区

 ―コロナ禍が続く中、どういう気持ちですか。

 今回の五輪は延期を経たことで、今までよりも注目を浴びる大会になる。だからこそ、スポーツの価値やスポーツが与える力を示せるように開幕までの日々を送りたいとも思っている。

平昌五輪スピードスケート女子500㍍で優勝し、2位の李相花(左)と健闘をたたえ合う小平奈緒

 そういう意味で、五輪で一番印象に残る選手でありたい。2018年の平昌冬季五輪のスピードスケートで、2位となって涙する李相花選手(韓国)に、寄り添った金メダルの小平奈緒選手(相沢病院)のような人に憧れている。

 ―東京五輪の開催方式変更も議論されています。

 初めての五輪なので、完全な形が一番。開会式などいろいろな経験をしてみたい。ただ感染リスクで参加できないというのであれば仕方がない。まずは開催する、ということに重きを置いてほしい。

 ―国際オリンピック委員会の理事会で、24年パリ五輪の種目から空手が落選しました。

 東京五輪での盛り上がりを見てもらう前に決定されたのは残念だが、現実を受け止めている。でも空手界が終わるわけではない。良かった面、悪かった面を考えながら、前に進まなければならない。「空手って素晴らしい」と思ってくれる人が増えれば、今後の道は開ける。未来は自分たちの努力次第だ。

 ―東京五輪後の空手界はどうなると見通していますか。

 パリ五輪から外れると、環境は全然変わってしまうだろう。立て直すのには時間がかかるかもしれない。だけど、東京五輪までの過程で一丸となって取り組んできたことは財産。その中で生まれたものを、空手界の発展につなげられるようにしたい。

 ―御自身の役割をどう考えていますか。

清水希容

 五輪種目に入る前と、入った後の両方の時期を(現役として)経験している選手は少ない。金メダルを取れば、次世代に語り継げることが増え、指導者になった時に教えられることの幅が広がると思っている。

  ×  ×  ×

 清水 希容(しみず・きよう)空手・形女子の東京五輪代表。小学3年で空手を始め、世界選手権は14、16年に優勝、18年は2位。全日本選手権は13年から7連覇中。アジア大会は14、18年に制した。東大阪大敬愛高、関大出。ミキハウス。160センチ、56キロ。1993年12月生まれ。大阪府出身。

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